'12/1/19
広島県「細見谷林道」を断念
広島県は19日、廿日市市吉和の細見谷渓畔林を貫く幹線林道戸河内(安芸太田町)―吉和区間について、建設断念を決めた。厳しい財政状況に加え、県の林業施策との関連性は低いと判断した。林道整備には、西日本有数の生物多様性を誇る細見谷渓畔林の破壊につながるとして反対運動が起きていた。
戸河内―吉和区間は24・3キロ。農林水産省所管の独立行政法人緑資源機構が1990年に整備を始めた。機構は官製談合事件を受けて2008年3月に廃止され、12・7キロの未完成区間を残して工事はストップ。県が事業を引き継ぐかを検討していた。総事業費106億円。うち残事業費は26億円。
未完成区間には渓谷沿いにイヌブナやミズナラが茂り、希少な生態系が残る細見谷渓畔林がある。渓畔林を横断する大規模林道の整備計画には当初から自然保護団体などが反対していた。一方で林業関係者や廿日市市は早期整備を求めていた。
県は林業振興に向け、民有林に重点的に作業路網を整備して木材の生産、搬出コストを減らす「低コスト林業団地」整備に力を入れる。戸河内―吉和間の沿線は大半が国有林で、施策に沿わないと判断。厳しい財政状況も踏まえて事業の継承を断念した。
廿日市市の真野勝弘市長は「林業振興や森林の公益的機能の維持、増進のために林道の必要性は変わらない。県が事業継承しないと決めたのは非常に残念」と述べた。
一方、幹線林道の建設に反対してきた広島フィールドミュージアムの金井塚務代表は「幹線林道建設は渓畔林を破壊する。林業振興につながるとも考えられず、費用対効果は低い。当然の判断だ」と話した。
機構が県内で計画した林道整備は計約143キロで、未完成区間は戸河内―吉和間を含めた5区間計約42キロ。県は庄原(庄原市)―三和(広島県神石高原町)間の断念も決めた。