2012年1月18日 15時0分 更新:1月18日 15時8分
急増している生活保護受給者の医療費の抑制を図るため、厚生労働省は、電子化された診療報酬明細書(レセプト)を使い、受診回数が極端に多い受給者や、向精神薬の重複処方などが容易に把握できる「電子レセプト活用マニュアル」を作成し、自治体に配布した。今月から本格運用され、12年度には年間18億円(国費)の抑制効果を見込んでいる。
生活保護の医療費に自己負担はなく全額が公費。12年度予算案では医療扶助は国・地方で計1兆7077億円に上る。厚労省は02年度から、同じ診療科で月15日かつ3カ月以上通院を続ける受給者への指導を強化。09年度には、こうした受給者が全国で1万8217人おり、福祉事務所が嘱託医と協議するなどし、3874人を過剰な診療を受けた頻回受診と判断した。
電子レセプトのマニュアルを活用することで、頻回受診者の抽出や、転売が問題になった向精神薬など同一薬の重複処方、受給者に関する診療報酬の請求が突出して多い医療機関の把握が容易になる。厚労省は16日に各自治体に利用を求める通知を出した。同省保護課は「受給者が過去最多を更新する中で、不必要な医療の提供や不正の横行は許されず、適正化につなげたい」としている。
一方で、一部自治体からはマニュアルの活用など運用改善だけでは抜本的な改革はできないとの指摘も上がっている。
【石川隆宣】