エンリケとジューンがウチに来る際、写真撮影のレクチャーを強く希望していました。しかし私も人様に教えるほど巧くも詳しくもありません。そんなわけで一緒にいろいろと試して勉強することにしました。
勉強会といっても、私がいつも撮影している方法を見せるだけです。私はどこかでカメラを学んだ経験はなく、ミゲルとルシアーノに習ったことが全てで、それを基礎に自己流でずっと写真を撮ってきました。そんなわけで自分の方法が正しいとか判らないので、こういう機会に良いアドバイスを得られればと思っていたのですが、写真撮影に関しては彼らは私以上にアマチュアでした。
エンリケは写真に関しては全くの素人、ジューンは高価なカメラを持ってはいますが、画像作りが良くわかっていないようでした。シャッターを切るのを急ぐのです。(模型)写真は偶然撮影されるものではなく、撮影者のイメージに基づいて光を作り、それをカメラに写し込むことで作られるのです。
それで私の知っている限りで、背景シートや照明セットの使い方や、カメラの設定を彼らに教えます。私の写真撮影についての基本的な考え方は、「カメラを使って自分が良い写真を撮る」のではなく、「(良い環境を作って)カメラに良い写真を撮ってもらう」ことです。カメラはシャッターを押せば、とりあえず誰でも写真が撮れます。良い写真とそうでない写真は、シャッターの押し方がどうのこうのという問題でないことは誰にも明白でしょう。良い写真を撮るためには、カメラが一番良い写真が撮れるよう、カメラにとっての良い光の環境を作ってやることが最も重要であり、カメラにとって良い環境を作る試行錯誤が、写真撮影そのものなのです。
前にも書きましたが、私の考える良い模型写真は、こういう写真です。
1. 作品の全ての部分に広くピントが合っている
2. 適度な陰影でモノとしての形状がよく判る
3. 影は弱めで、影の部分のディティールも完全に確認できる
4. 色彩が自然
5. 表面の状態が確認できる程度に、画像に十分な大きさがある
このような画像を目指して、撮影したら大きなパソコン画面で画像を確認し、それでまた設定を変更してまた撮影。勉強会はこれの繰り返しです。撮影してすぐ結果を確認できるのが、デジカメの最大のメリット。前は写真屋さんに出さねばなりませんでしたが、今では(プリントしない限り)全てを自宅で行えるのです。本当に良い時代になりました。
D300で撮影された画像は、年代モノの私の愛機キャノンG3よりも立体感を感じます。またレンズが大きいので暗い部分の光もより多く集めることができるようで、割と短いシャッタースピードでも暗い色がつぶれません。また撮影した画像は肉眼で見るよりもはっきり鮮明に写るので、なんだか目が良くなったような気がします。
さらに高級カメラと廉価カメラの最大の違いは、その動作スピード(連写速度)にあります。このデジカメは有効画素数1230万画素、JPEG圧縮画像サイズで一枚5MB程度もある大きな画像データを、瞬時にメモリカードに転送可能で、フィルムロール使用のカメラに遜色ない連写速度を持っています。
一方、G3だと小さな液晶を見ながら、コリコリとダイヤルを回してピンを動かすのですが、正直かなり不便です。この不便さは特に私の場合、特撮画像撮影の場合に顕著でして、暗いところで撮影していると、一体どこにピンが合っているのかパソコン画面で確認するまで判りません。殆ど手探りでやらねばならないのです。
しかし、こと模型撮影に関しては、正直なところ非常に扱いにくかったです。特に大問題だったのが、模型撮影で欠かせない接写撮影でした。このD300は元々付属している純正汎用レンズでの撮影だと、接写できる最短距離が(G3に比較して)かなり大きいのです(ピントを合わせるために被写体から離れなければならない)。この組み合わせでは、模型撮影に必須の接写には全く向きませんでした。
D300だと(というか大型一眼レフカメラだと)、レンズ先端からCCDまでの距離が長いため、それだけピントを合わせるのに必要な最短距離が長くなり、被写体からかなり離れないとピントが合わないようです。これで模型撮影するためには、接写用レンズの購入が必須となるでしょう。高価なカメラはレンズも高価なので、結構な出費が予想されます。
ずっと高級なデジタル一眼レフカメラに憧れを持っていましたが、今回は使ってみなければ判らない不便さを知る、たいへん貴重な機会になりました。