東京電力福島第一原発事故の警戒区域内で、「ダチョウ捕獲作戦」が展開されている。震災後、福島県大熊町のダチョウ園から10羽ほど逃げて野生化し、一時帰宅した人から「家の前に立っていて怖い」と苦情が出るなどしたためだ。
ダチョウ園に農林水産省などが協力して行っている。今月12、13両日に実施した作戦では4羽を捕獲。これで昨年末から合わせて6羽が「お縄」になった。
ダチョウ園社長の富沢俊明さん(73)によると、この間の作戦はこうだった。
浪江町の浪江中学校グラウンド前の道路に悠然とたたずむメスのダチョウに、捕獲チームが向き合った。「前に立つな。蹴られるぞ」「早く首を押さえろ」。メンバーに緊張が走る。ダチョウは体長が2メートルを超す。「蹴られると肋骨(ろっこつ)の2、3本は折れる」と富沢さんは言う。
後ろは蹴らないので、捕まえるには背後に回る。基本は3人ひと組。1人がダチョウの首をわしづかみして地面に押しつける。もう1人と手分けし、左右の羽を抱え込む。残り1人が布袋を頭にかぶせ、視界を遮る。ダチョウは夜になったと勘違いするのか、すぐにおとなしくなるという。