気象・地震

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東日本大震災:「ゆっくり滑り」本震前に2度

 東日本大震災を引き起こした3月11日の地震(マグニチュード=M=9.0)の発生前に、震源に向かって「ゆっくり滑り(スロースリップ)」と呼ばれる現象が広がっていたことを、東京大地震研究所のチームが突き止めた。ゆっくり滑りは、体に感じないほど弱いが微小な地震を引き起こし、これが積み重なって前震やM9.0の本震の引き金になった可能性があるという。成果は、20日付の米科学誌サイエンス(電子版)に発表された。

 巨大地震が起きる前には、前震などの前兆があることが知られているが、その前にゆっくり滑りが確認されたのは初めて。

 本震は、三陸沖の日本海溝で海側のプレート(岩板)が陸の下に沈み込み、蓄積したひずみが一気に解放されて起きた。東大地震研の加藤愛太郎助教(地震学)らは、2月中旬から本震までの間に震源近くで起きた地震を詳細に分析するため、気象庁のデータベースにある333個の地震に加えて、新たに1083個の微小な地震を確認。合計1416個の波形を細かく調べた。

 その結果、地震の震源が南の方へ移動していく現象が2月中旬~下旬と、3月9日の前震(M7.3)後の2度にわたって確認された。2月中旬~下旬には、震源が移動する速さが1日平均2~5キロだったが、前震の直後から11日までの間には、同10キロと加速していた。

 地震の特徴から、チームはゆっくり滑りが起きたと判断した。一連のゆっくり滑りを一つの地震と見なすと、M7.1の地震に相当するという。

 すべての巨大地震の前にゆっくり滑りが起こるとは言えないため、地震の予知には直接はつながらないが、加藤助教は「ゆっくり滑りが起き、その先にひずみがたまっていれば地震が引き起こされる可能性があることが確認できた」としている。【久野華代】

 ◇ゆっくり滑り

 プレート境界や地下の断層が地表に大きな揺れをもたらさないまま、ゆっくりずれ動く現象。「スロースリップ」「ぬるぬる地震」などとも呼ばれる。ずれた部分はひずみが減るが、周辺は逆にひずみがたまり、地震が起きやすくなると考えられている。数日間で起きる場合や数カ月から数年かかる例がある。房総半島沖や豊後水道周辺など各地で報告がある。01~05年に東海地震の想定震源域付近でも観測されたが、東海地震には至らず終息した。

毎日新聞 2012年1月20日 2時54分(最終更新 1月20日 3時29分)

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