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衆院選挙制度改革:小選挙区0増5減、比例80減 各党地元から反発 「声届かず」「増税の前哨戦」

 民主党は18日の政治改革推進本部で、衆院の「1票の格差」是正に向け、自民党の「0増5減」案を採用した衆院議員選挙区画定審議会(区割り審)設置法改正案と、衆院比例定数を80削減する公職選挙法改正案を正式に決めた。しかし、自民、公明両党は比例80の削減に反対する方針で、法案の行方は見通せない。与野党協議が不調に終われば、民主党は24日召集の次期通常国会に関連法案を単独で提出する構えだが、定数が減る県の関係者からは戸惑いの声も出ている。

 「税と社会保障の一体改革の法案を出す前に国会に提出したい」

 民主党の樽床伸二幹事長代行は18日の党政治改革推進本部総会で、定数削減と1票の格差是正に最優先で取り組む意向を表明した。「0増5減」案は小選挙区で定数3の山梨、福井、徳島、高知、佐賀の各県の定数をそれぞれ1減らす内容。総会では、福井3区で落選し比例で復活当選した松宮勲氏が削減対象の選定基準を批判したが、賛成論が大勢を占めた。消費増税を見据え、野田佳彦首相は「身を切る改革」として政治改革路線を進める。増税慎重派を抱える民主党内でも、表立った批判はしにくいのが現状だ。佐賀1区選出の原口一博元総務相は18日、毎日新聞の取材に「1票の格差是正は最優先」と理解を示した。

 徳島2区選出の高井美穂氏は18日、国会内で記者団に対し「誰がどの選挙区から出るのか、みんなで話し合って決め、党の方針に従いたい」と表明。徳島3区で落選し、比例で復活当選した仁木博文氏も「政治家が身を削るのは当然」と話した。

 民主党案通り、関連法案が成立すれば、衆院定数は小選挙区295、比例100の計395議席となる。1票の格差は1・789倍(10年国勢調査)となり、格差是正の目安となる2倍を割り込む。

 しかし、すでに選挙準備を進める地方組織の反応は複雑だ。民主党佐賀県連の内川修治幹事長は「地方の声が届かなくなる。1票の格差の問題だけでいいのか、検討の余地がある」と困惑。現行の3小選挙区を想定し候補選びを進める共産党県委員会の平林正勝委員長は「消費税増税のための前哨戦でしかない」と切り捨てた。

 削減対象となる5県は元々、自民党の地盤が強い。次期衆院選での政権奪還を目指す地元選出の自民党衆院議員は「党が強い地域をわざわざ減らす案で、憤りを感じる」と反発している。【高橋恵子、竹花周、阿部弘賢】

 ◇比例削減、連用制が浮上 中小政党有利、実現の「切り札」にも

 比例代表の定数削減を巡っては、民主党が掲げる「80削減」を実施した上で、公明党などが求める「小選挙区比例代表連用制」を導入する案が与野党間で浮上している。現行の小選挙区比例代表並立制のまま比例を80削減すると、民主、自民の2大政党が有利になるが、比例代表を重視する連用制を導入すれば、公明党など中小政党も議席を得やすくなるためだ。比例80削減実現の「切り札」として、与野党協議の軸となる可能性もある。

 連用制は、有権者が小選挙区と比例代表で2票を投じ、比例代表の議席を割り振る際に、小選挙区で獲得議席が少ない政党に優先的に配分する。「小選挙区の当選者プラス1、2、3……」の整数で得票数を割った商の大きな順に議席を割り振るため、小選挙区で当選者が少ない中小政党ほど有利になる。

 09年衆院選を基に毎日新聞が試算したところ、比例を80削減した場合、現行の並立制なら民主党は275議席となり、法案の再可決に必要な3分の2以上を確保するが、公明党は10議席、共産党は4議席に激減。連用制を導入すれば民主党は224議席にとどまり、公明党は34議席、共産党は18議席に急増する。自民党は並立制でも連用制でも、議席数はほぼ変わらない。

 民主、自民両党は連用制に反対してきたが、政局のキャスチングボートを握る公明党への配慮から、柔軟な意見も出てきた。連用制を導入しても、比例定数を80程度削減すれば、大政党が単独過半数を確保できる可能性が高いため「必ずしも2大政党に不利にはならない」(民主党幹部)との指摘もある。【大場伸也】

毎日新聞 2012年1月19日 東京朝刊

 

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