ネット百科事典「ウィキペディア」を運営しているウィキメディア財団は16日夜、インターネット上での著作権保護強化を狙って米議会に提案され審議中の法案に反対の姿勢を示すため、英語版のサービスを18日の24時間停止すると発表した。同法案にはネット関連業界が強く反対しており、一日何百万人もの人々がアクセスする極めて人気の高いウィキペディアがサイトの一時停止に踏み切ることで、反対運動に一層はずみがつきそうだ。
ウィキメディア財団は「この法案が成立すれば、自由で開放的なインターネットが被害を受け、米国において国際的なウェブサイトに対する検閲の新しい道具になってしまうだろう」と警告した。
米国の下院ではオンライン海賊行為防止法案(SOPA)、上院では知的財産保護法案(PIPA)が審議されている。いずれも著作権を侵害された米国のコンテンツが海外で販売されるのを取り締まるのが狙いだ。
両法案の支持者はコンテンツの著作権侵害を受けている映画・音楽業界などで、知的所有権と雇用の保護のため両法案が必要だと主張している。
これに対し反対派は、両法案は情報技術(IT)業界に打撃となり、言論の自由の侵害だと反論している。とりわけ、法案が成立すれば、企業のサイバーセキュリティーが弱体化され、ドメインアクセス権が損なわれると憂慮している。
最も大きな論議を呼んでいるのは下院案で、連邦当局に対し、著作権を侵害したコンテンツを流通させていると判断したサイトをブラックリストに載せることを容認している。この結果、あらゆる米国ユーザー向けのインターネットの一部が事実上遮断される恐れがある。ただし議会指導者はこの条項を撤回する姿勢に変化している節もある。
グーグル、フェイスブック、米ヤフー、ツイッター、イーベイ、AOLなどIT企業は、法案が成立すれば業界の活力が失われると反対している。幾つかのオンライン企業は抗議のため、ウィキペディアと同じようなブラックアウト(運用の一時停止)を計画していると発表した。
オバマ政権も先週末、両法案に懸念を表明し、著作権侵害に対抗しつつインターネットの革新やセキュリティー、プライバシー、表現の自由を擁護する法案で議会と折り合いたいと述べた。
(AP通信)