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高線量マンション:9世帯、転居を希望 住民落胆と不安

高い放射線量が検出されたマンション1階の廊下=福島県二本松市で2012年1月18日午後0時37分、宗岡敬介撮影
高い放射線量が検出されたマンション1階の廊下=福島県二本松市で2012年1月18日午後0時37分、宗岡敬介撮影

 福島県浪江町の砕石を使った同県二本松市の新築賃貸マンションで高放射線量が検出された問題で、このマンションに住む12世帯中少なくとも9世帯が転居を希望していることが18日、関係自治体などへの取材で分かった。避難先を転々とした末、入居まもなく転居を求められた人もおり、落胆と不安の声が上がっている。

 マンションは3階建てで昨年7月に完成。砕石を原料にしたコンクリートが1階床の基礎部分に使われた。12世帯中、浪江町と南相馬市からの避難者が各5世帯の計10世帯で、避難者世帯が住む部屋は県の借り上げで、2世帯は地元の住民。転居希望が判明しているのは南相馬市からの5世帯と浪江町からの2世帯、地元の2世帯。

 浪江町から避難し、2階に夫と長女、孫2人の5人で住む主婦(63)は、中学3年の孫(15)が2月に受験を控え「今は精神的な不安を与えたくない」と気遣うが、受験後は転居を希望する。「度重なる避難で疲労がたまり、食欲がない」と不安そうに話す。

 3階に4歳の長女と1歳の次女と暮らす無職男性(32)も同町からの避難者。「子供のことを思うとすぐにでも出て行きたいが、住居が見つからない。家具もこの部屋の大きさに合わせて買ったのに」と肩を落とす。

 屋外より高い線量が出た1階に住む二本松市出身の男性公務員(37)は、結婚直後の昨年8月に引っ越してきた。「将来は子供がほしいので転居したい。転居費用などが出れば助かる」と言う。

 管理会社の担当者によると、マンションの所有者は「除染したうえで引き続き賃貸活用したい」と話しているという。賠償や補償について二本松市からは管理会社に連絡はないといい、担当者は「住民の方には大変気の毒で残念。風評被害が一番こわい」と話す。

 避難者が借り上げ住宅に入居した場合の家賃は、災害救助法に基づき国費負担となる。転居費用については今回のようなケースは前例がなく、厚生労働省と県は「行政での負担は難しい」とみている。【宗岡敬介、深津誠、野倉恵】

毎日新聞 2012年1月18日 21時41分(最終更新 1月18日 22時52分)

 
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