把瑠都(右)が上手投げで豊ノ島を下す=両国国技館で
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◇初場所 10日目(17日・両国国技館)
横綱白鵬(26)=宮城野=が関脇鶴竜に寄り切られ、初黒星を喫する波乱があった。関脇豊ノ島を上手投げで退けた大関把瑠都(27)=尾上=がただ1人の全勝となった。鶴竜は7勝目。新大関稀勢の里(25)=鳴戸=は大関琴奨菊を突き落とし、9勝目を挙げた。琴奨菊は5敗目。ほかの大関陣は日馬富士が高安を、琴欧洲が北太樹をそれぞれ寄り切り、ともに勝ち越した。新小結の若荒雄は負け越した。全勝の把瑠都を1敗で白鵬と稀勢の里が追う。2敗は日馬富士、琴欧洲、平幕の栃煌山、新入幕で勝ち越した千代の国の4人。
取組を終えた把瑠都が支度部屋から駐車場へと向かう。その長い廊下を抜けると、そこにはエレナ夫人(29)が待っていた。
3年前の2月20日に結婚したロシア出身のエレナさんは運転席に。大関は「じゃあ、またあした!」と言って助手席に乗り込んだ。
大関になると車で場所入りできるが、運転手は知人や後援会関係者というのが通例。奥さんが運転して場所の送り迎えをするのは、恐らくこれまで例がないだろう。
それでも八角親方(元横綱北勝海)は「奥さんが1番のファンで理解者でもあるから」と理解を示す。愛妻がそばにいることで心の安定をもたらしてくれているのだろう。
家に帰ればエストニア風の味付けで、大関が大好きな豚肉のシニッツェル(カツレツ)、トマトとキュウリのサラダを用意する。「車の中や家に帰っても相撲の話はしないんですが、優勝はしてほしいです。料理を作ってあげることしかできないですけど」とエレナ夫人。大関もそんな愛妻に初優勝をささげたいという思いは強い。
右上手を一閃(いっせん)すると豊ノ島は見事なまでに裏返った。「豪快な投げで勝ってよかった」。パワーを見せつけ10連勝を飾った大関は199センチ、188キロの巨体に笑みを浮かべて花道を引き揚げていった。
支度部屋に戻ると結びで白鵬に土がつくシーンがテレビ画面に映し出された。その瞬間、自身初の単独トップ。「いいんじゃない。意識はしてない」と笑顔ではぐらかしたが、「今年のテーマは優勝」と宣言している大関。昨年のクリスマスはエレナ夫人に5カラットのダイヤのブレスレットをプレゼントした。結婚記念日には、ダイヤの輝きに負けない初優勝をプレゼントする。 (岸本隆)
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