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「ね、ママ。ソフトクリーム食べたい」

ファーザーは義姉らと三人で、近所のスーパーに来ていた。
夕食の買い出しである。

ここのスーパーは小さなフードコートがあり、たこ焼きやお好み焼き、ラーメンやたい焼き等、とても豊富なメニューを取り揃えており、ファーザーも小腹が空いた時によく利用する便利な場所だ。
「この後すぐにご飯でしょ?」
「食べたい……」
姪がアイスを食べたいと珍しく愚図っていた。姪は外面が良く、お店などで大声を出したりワガママを言ったりする事は決してない。そんな姪がここまで言うのだからよっぽどアイスが食べたかったのだろう。
「けーちゃん…」
姪がファーザーの手を握る。
甘やかすのはよくない。しかしファーザーも買い物に少し疲れたし、甘いものを摂取したい気分だった。
「義姉さん…、俺もちょっと食べたいな」
助け舟を出す。これで駄目と言われたら姪も諦めがつくだろう。
「うーん……じゃあ今日だけ、特別よ」
そう義姉が言うと姪は大喜びしていた。
少し意外だった。きっとピシャリと駄目!と言われるだろうと思っていた。
上機嫌でファーザーと義姉の間に入り、二人の手を両手で繋ぐ姪。そのままフードコートに入る。
怒ってるかな?と思い、チラッと義姉を見ると「私も実は食べたかったの」と笑顔で内情を吐露した。



「ママは何にする?」
「ママは……バニラかな。姪は?」
「チョコ!」

ふっ、こいつら情弱だな。(情報弱者の事)
ソフトクリームはミックスを頼めばバニラ、チョコと二つの味が楽しめるのだ。つまり二倍お得。よって選択肢はミックス以外無いのだ。
「けーくんは?」
「無論ミックスを所望する」
威張っているが、お金を出すのは義姉である。

店員にソフトクリームを渡され、三人でテーブルに座りペロペロ舐めて食べる。
「ママ、バニラ一口頂戴!」
「いいわよ。じゃあチョコ一口ね」
お互いのソフトクリームを交差し合ってぺろぺろ食べ合う二人……
(し、しまった!!)
ファーザーに衝撃が走った。
単色のソフトクリームを頼めば、二人で味を分けられるのだ!
しかしミックスでは一つで事足りてしまう!
ファーザーも義姉の舐めたソフトクリームを舐めたい!情弱は俺だくっそ!

姪に耳打ちして交渉する。
「め、姪。今からミックスとチョコ交換しないか…?」
「やだもん。チョコが好きなんだ」
ちくしょう!助け舟を出した恩を早くも忘れやがって!

しょうがない……ここは恥をしのんで義姉に正直に言おう。
「ね、義姉さん。バニラ一口食べたいな」
「ん? けーくんミックスだからバニラ入ってるじゃない」
不思議そうな顔をされて断られた。もうミックスなんて二度と頼まない。



「ほら……口についてるわよ」
姪の唇の端についているソフトクリームを、ハンカチで優しく拭う義姉。
姪は嬉しそうに顔を上にあげ、「ん~」とベタベタと甘えていた。
見せつけやがって、姪めぇ……
ファーザーはそんな仲睦まじい二人を眺めながら、一人寂しくミックスをぺろぺろする。
その時、またもやファーザーに衝撃が走った!
(そ、そうだ。これなら……)

ファーザーは突然持っていたミックスを、盛大に自分の顔に塗りたくった!
むりむりと顔中ソフトクリームだらけにする!
「きゃああああ! けっ、けーくん! 何してるの!?」
驚いた義姉が声をあげる。姪はポカーんと口開けていた。
「んー、んー(拭いて、拭いて)」
義姉に拭いてくれアピールをする。これなら義姉に甘えられるぜ!姪ざまぁw目いてぇww
しかしそんなファーザーを見て義姉は、
「トイレに行って洗って来なさい!」と一喝した。

すごすごとトイレに行き鏡を見ると、そこには
『ダークナイト』でジョーカーを演じた故ヒース・レジャーが居た。
チョコがいい感じに唇の端から端へに伸びていてカッコいい。記念に写メを撮ろうと思ったが、携帯はテーブルの上に置いたままだった。ポーズを取っていると子供が入って来て、泣いて出て行った。



三人で車に乗る。運転するのは義姉。
「本当にしょうがないんだから!」
義姉は怒っていて、姪は後部座席でキャッキャとはしゃいでいた。
結局、義姉のソフトクリームは舐められないし、ハンカチで拭いてもらえないし、怒られるしで散々だった。がっくりと肩を落とす。
「本当に…けーちゃんは、しょうがないんだから……」
そう言って義姉はクスクスと笑っていた。



ファーザーは義姉の事が好きだ━━━
勿論家族としてではなく、異性として。
ずっと好きだった。
それこそ兄が始めて義姉を家に連れて来たその日から……

ファーザーの気持ちを、義姉は知っている。

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今日の午後『数列』の発展問題に頭を悩ませていた頃、珍しく俺の携帯が鳴り響いた。
また魔法省から金の催促か?いい加減にしろ!払えないもんは払えない!と思い、無視していたら一度途切れた後、もう一回掛かってきた。これは尋常じゃないぞ!と、思い携帯を開くと魔法使いからだった。
驚き、慌てて電話にでる。
「もしもし…?魔法使い?」
「あ、でた。なんで一回ででないの?」  
金の催促と思ったとは言えず、トイレに行ってたという。
「ファーザさ、今書店に来れないかな…勉強の途中だよね?ごめんね、いい?」
「今? まぁ、大丈夫だけど」
「じゃあ来て。待ってるからね」
そう言って切れた。一体何事だろう。
書店までは歩いて五分もかからないので、急いで着替えて外にでる。


しかし、魔法使いの声を聞くのは本当に久しぶりだった。
実はあの気まずい別れ方 をした後、何度も通りすがりに外から店内をチラッと覗く行為をしたが、姿を見かけることが一回も無かった。(決してストーカーではない)
もしかしたら書店のバイトを辞めてしまったのかな、と心配していた所の電話だったので安心と同時に嬉しかった。
しかし、何故いきなり今日? 電話じゃ駄目なのだろうか?
疑問に思いつつ歩いていると書店に着いた。



書店に来い、って店内に入っていいのか?
駐車場から店内をそっと覗く。居ない。
「ねぇ、」
駐車場には何故か振袖姿の美少女がいるだけだ。怪しい人だと思われたくないので冷静を装って自販機でオレンジジュースを買う。
「ねぇってば」
何かさっきから振袖美少女に話しかけられている気がする。自意識過剰だろうか。それとも覗き行為が不審者と思われたのか? それとも逆ナン? まさかそんな…俺に限ってそんな事が…
「おい」
ドスっ!っと肘打ちをくらう。
「ゴボォwww」口から出たオレンジジュースが太陽に当たり、綺麗な七色のプリズムを作った。



振袖の美少女は魔法使いだった。
「あっ、えっ、えっ、魔法使い…!?」
「えへへ…あけましておめでとう。どうかな?可愛い?」
そう言って魔法使いは変なポーズを取る。
驚いた。目が丸くなった。
ピンクの花柄の、とても綺麗な振袖、
頭には豪華で華やかなかんざし…
いくら俺の目が節穴だといっても、これでは魔法使いだと気付くわけがない。
しかもいつもは地味な眼鏡を掛けているくせに、今日は掛けていなかった!


「な、何故振袖なのだ…」
ジロジロと本当に魔法使いなのか凝視しつつ質問する。
「何故って…今日成人式じゃん」
当然、と言ったように魔法使いは答える。

「え”っ…you!まだ成人して無かったの!?」
「うん。まぁ、正しくはまだしてないんだけど…」
なんと魔法使いは19歳だった…。


「成人式の帰りなんだけどさ、この後、同窓会で着替えちゃうから…ファーザに見てもらいたいな、って思って」
ああ、そういう事か。というか今日成人の日だったのか…
「ねぇ、可愛い?」
魔法使いは褒めて欲しそうに俯いていた。
なんだか恥ずかしい。馬子にも衣装とはこの事だ! なんて照れ隠しで言ったらまた肘打ちを喰らうので、茶化さずに褒める。
「うん。めちゃくちゃ可愛いよ」
そういうと魔法使いは「ティヒヒヒ」と笑っていた。



その後少し世間話した。

魔法使いが最近お店に居なかったのは、センター試験が近いのでちょっと休ませて貰っていたからだそうだ。うむ、殊勝な心がけである。


「あの話…聞いてさ、最初はショックだったけど、」
「うん」
「好きじゃなくなる理由にはならないから、」
「………」
「あたしもファーザ追いかける事にしたよ」


つくづく変なヤツだ。
こんな根暗ひきこもりおっさん糞ニートじゃなくても、明るく元気で可愛い魔法使いなら…、どんな男子だってきっと好きになるのに。
「あたし、銀河鉄道の夜は恋人説がいい」
「追いかける方は辛いぞ」
「いいよ。ファーザだってそうじゃん」
そういって胸を張っていた。


つくづく馬鹿なヤツだ。だけど嬉しかった。

魔法使いの頭をそっと撫でる。柔らかくてふわふわした綺麗な髪だった。
「これからはけーま君って呼んでいい?」
そう聞かれた。勿論答えはNO!
「駄目」
「けちくそ」
「まっ、口の汚い子」
魔法使いはファーザでいい。もうそれが定着してるし、名前で呼ばれても戸惑ってしまう。こっちが名前で呼んでも対して変わらないし……

「これからは開き直ってどんどんデートに誘うからね。とりあえず今週のセンターが終わったらまた映画いこ?メルアド教えて?」

「やめてくれ…」またコメント欄が荒れるだろうが…


センター試験は当初の通り、一緒に行こうとまた約束した。

それがいい。一人では不安だ。


「はぁ、それにしても…、悲しい、追いかけっこだね」
「そうだな…」


魔法使いがポツリと言った。

「お義姉さんは、だれか追ってるのかなぁ…」


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昨日、叔母の来襲に備えての準備は万端だった…

コンコンコン!
「桂馬~!お姉さんがきたわよ~♪」
きっ、来た!叔母だ!何がお姉さんだ、40台後半のくせして!
部屋の隅へ行き布団を頭から被る。
今年は大丈夫だ。去年はまんまとコインで鍵を開けられてしまったが、今回は開けられないように細工をさせてもらった。
コンコンコンコンコン!
「開けなさい桂馬~。綺麗なお姉さんよ~♪」
徐々に勢いを増していくノック音。
無視を続けるとふいに音は止み、代わりにチャリチャリと小銭を漁る音がした。
「チッ」
どうやらコインで開錠する事に失敗したようだった。計画通りだ。
そして部屋を離れていく足音が聞こえた。
しかしこれはフェイク。叔母は上手に部屋の前で足踏みしただけだ。
「チッ」
そんな子供だましの手にはひっかからない。
「アンタ…結局食事の時に、顔合わせるんだからね……」
恨めしげな低い声が聞こえる…
遂に叔母は入室を諦め、去っていった。


しかしそれでもまだ油断は禁物だ…
"夜が明けるまで、決してドアを開けてはいけない!!"
布団を被り朝を待つ。



ちゅんちゅんちゅん━━━
なんだもう朝か。
あれからさして時間が経っていないような気がするが、もう窓からは朝日が射していた。
悪霊は去ったのだ。
そう安心し、雨戸を開け暖かい太陽の光を、祝福の光を全身に受けようとした。
ガラッ!
勢いよく雨戸を開ける。
しかしそこには、デカイ照明を肩に抱え、口を鳥のように尖らせてさえずる叔母が居た!

「ハッピ~ニュ~イヤ~。桂馬~」
しまった!罠だ!まだ外は真っ暗で、あれから10分も経っていない!
慌てて窓を閉めようとするが、時既に遅し。
掌底を喰らいノックダウン。



「今まで何してたんだ?」
ファーザーは床に正座させられ、叔母はベッドに座る。つーかまたこれかよ!
叔母の顔をチラリと覗いた。はっと息を飲む。
一年ぶりに会う叔母は、染みったれの糞ババァ……ではなく、そこには勝手の若かりし頃の叔母が居た。
「あ、あんた誰…?」
「叔母に向かって"あんた"だなんて失礼ね」
そう言いつつも叔母は頬に手を当て嬉しそうにしていた。
話を聞くと、叔母は某有名整形美容外科で「リフトアップ」という手術をしたそうだ。その効果は強烈で、40後半の叔母が30前半くらいに若返っていた。
「サイボーグや…」
「ま、失礼しちゃう」
プリプリ!とぶりっこぶっていた…。キツイわ…。


きょろきょろと部屋を見渡す叔母。
入室を許してしまった時ために、念を入れて参考書はベッドの下の奥に隠した。手前にはフェイクのエロ本が置いてある。
「あんた、まだ小説家目指してるの?」
そう聞かれた。

叔母はまだ俺が本気で小説家を目指していると思っているのだろうか。
前回の雑記で、携帯小説のコピペの様な小説を見せた描写があったが、本当はもっとしっかりと書いた小説を叔母には見せていた。
しかし小説家なんて到底無理な事、小説オタクのファーザーが一番分かっている。夢は夢だ。現実じゃない。戯れに言ってみただけだあんなもん。
「もう諦めたよ…」
そう言うと叔母のいつもの説教が始まった。


~割愛~


しばらくして、ドアが静かに開いた。



「けーちゃん…」
姪が部屋の外から3DS片手にこちらを覗いている。
でかした姪!叔母も姪には甘いので、ここはお茶を濁してもらおう。
「あら~、姪ちゃんおいで♪アニメとか漫画とかこっちへおいで」
姪は叔母の邪悪な笑顔に怯えつつも部屋に入ってきた。
頭を撫でてもらうとすぐに笑顔になり、
「お姉ちゃん!」と言って叔母の胸に抱きついていた。
なぁ~にがお姉ちゃんだ。どうせ義姉にそう言えと命令されたに決まっている。

しかし、叔母は「キャ~!可愛い!桂馬の子供の頃みたい!」と言ってまんまと子供の罠にひっかかっていた。
「姪ちゃんにはお年玉あげようねぇ」
そう言ってポチ袋を姪に渡す。姪はわーいわーいと無邪気に喜んでいた。


ふむ。ファーザーもお年玉が欲しい。
姪と同じように叔母に抱きついてみる。
「お姉ちゃ~ん!」
ばふっ、と叔母の胸に無邪気に飛びつく。
「ん、おお、なんだ?」
「……」
「離れろ」
「はい」
すごすごと離れる。作戦は失敗だ。



「姪ちゃんは何持ってるのかな?」
「スリーディーエスだよ!」
自慢げに姪は3DSを掲げる。
「わ!これ最新のヤツじゃない!?誰に買ってもらったの?」
「けーちゃんサンタ!」
そう言って姪はファーザーに飛びついてきた。
「え…、け、桂馬が?…あんたまさか盗んだんじゃないでしょうね?」
まっこと失礼なババァだった。3DSの為に働いた事を姪の前で言うわけにはいかないので、貯金で買ったと言う。
「ねーけーちゃん、『顔シューティング』やろ~」

ファーザーの胸に顔を擦りつけながら姪は言った。
「えっ、『顔シューティング』…?」 
ま、まずい…。冷や汗が背中を伝う。


(『顔シューティング』とは3DSの内臓ソフトで、自分の顔を3DSのカメラで撮ると、その顔がゲームの敵となって襲ってくるのだ。とても面白いゲーム)


しかし、あれにはとんでもない写真が取り込んである……

「ねーやろー、やろー?」腕の中でジタバタする姪。
「姪よ、今はババ…じゃなくてお姉ちゃんと話してるから後でな」
そう言って姪をたしなめる。
しかし叔母は「いいじゃない別に。姪ちゃん?お姉ちゃんとやろうか!」と言って一緒にプレイしようとする。慌てて阻止。
「あ、やめて」
「煩い」
「ギャア!」目潰しだ。叔母の得意技目潰しだ!
眼がぁああ眼がぁああ、と某ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタの様に床を這いずり回る。そんな俺の事をお構いなしに叔母は姪と二人で『顔シューティング』のスタートボタンを押していた。



「あはははは!あはははは!」
叔母は迫り来るファーザーのアヘ顔に大爆笑していた。
そう、以前姪と二人で3DS『顔シューティング』をプレイした時に、お互いの変顔を撮って遊んだり、ファーザーの可愛いお尻を撮ったりして盛大に楽しんだのだ。
3Dで迫り来るアヘ顔やお尻はとてつもない威力があり、文字通りファーザーと姪の腹筋はその日のうちに崩壊した。
そして今、データを消さなかったツケが回ってきた。
「桂馬っ…桂馬っ…あんた本当は、こんなに面白い子だったのね…っ…あははははははは!」
「えー、けーちゃんいつも面白いよー?」
もう死ぬしかない。


その後は一階に皆で集まり、親族新年会を行った。

それが終わると叔母はずっとファーザーの部屋に入り浸り、

「茶持って来い」「肩揉め」「あのアヘ顔してみせろ」等と奴隷の様にファーザーを扱った。

悔しい…だけど小さい頃から植え付けられた主従関係は拭えない…っ…ビクンビクン!


次の日の昼、叔母はとても良い顔で「See you next year」と言って家を発った。

できればもう…叔母記事はこれで最後にしたい。

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