テーマ:雑記
ファーザーは義姉らと三人で、近所のスーパーに来ていた。
夕食の買い出しである。
ここのスーパーは小さなフードコートがあり、たこ焼きやお好み焼き、ラーメンやたい焼き等、とても豊富なメニューを取り揃えており、ファーザーも小腹が空いた時によく利用する便利な場所だ。
「この後すぐにご飯でしょ?」
「食べたい……」
姪がアイスを食べたいと珍しく愚図っていた。姪は外面が良く、お店などで大声を出したりワガママを言ったりする事は決してない。そんな姪がここまで言うのだからよっぽどアイスが食べたかったのだろう。
「けーちゃん…」
姪がファーザーの手を握る。
甘やかすのはよくない。しかしファーザーも買い物に少し疲れたし、甘いものを摂取したい気分だった。
「義姉さん…、俺もちょっと食べたいな」
助け舟を出す。これで駄目と言われたら姪も諦めがつくだろう。
「うーん……じゃあ今日だけ、特別よ」
そう義姉が言うと姪は大喜びしていた。
少し意外だった。きっとピシャリと駄目!と言われるだろうと思っていた。
上機嫌でファーザーと義姉の間に入り、二人の手を両手で繋ぐ姪。そのままフードコートに入る。
怒ってるかな?と思い、チラッと義姉を見ると「私も実は食べたかったの」と笑顔で内情を吐露した。
*
「ママは何にする?」
「ママは……バニラかな。姪は?」
「チョコ!」
ふっ、こいつら情弱だな。(情報弱者の事)
ソフトクリームはミックスを頼めばバニラ、チョコと二つの味が楽しめるのだ。つまり二倍お得。よって選択肢はミックス以外無いのだ。
「けーくんは?」
「無論ミックスを所望する」
威張っているが、お金を出すのは義姉である。
店員にソフトクリームを渡され、三人でテーブルに座りペロペロ舐めて食べる。
「ママ、バニラ一口頂戴!」
「いいわよ。じゃあチョコ一口ね」
お互いのソフトクリームを交差し合ってぺろぺろ食べ合う二人……
(し、しまった!!)
ファーザーに衝撃が走った。
単色のソフトクリームを頼めば、二人で味を分けられるのだ!
しかしミックスでは一つで事足りてしまう!
ファーザーも義姉の舐めたソフトクリームを舐めたい!情弱は俺だくっそ!
姪に耳打ちして交渉する。
「め、姪。今からミックスとチョコ交換しないか…?」
「やだもん。チョコが好きなんだ」
ちくしょう!助け舟を出した恩を早くも忘れやがって!
しょうがない……ここは恥をしのんで義姉に正直に言おう。
「ね、義姉さん。バニラ一口食べたいな」
「ん? けーくんミックスだからバニラ入ってるじゃない」
不思議そうな顔をされて断られた。もうミックスなんて二度と頼まない。
*
「ほら……口についてるわよ」
姪の唇の端についているソフトクリームを、ハンカチで優しく拭う義姉。
姪は嬉しそうに顔を上にあげ、「ん~」とベタベタと甘えていた。
見せつけやがって、姪めぇ……
ファーザーはそんな仲睦まじい二人を眺めながら、一人寂しくミックスをぺろぺろする。
その時、またもやファーザーに衝撃が走った!
(そ、そうだ。これなら……)
ファーザーは突然持っていたミックスを、盛大に自分の顔に塗りたくった!
むりむりと顔中ソフトクリームだらけにする!
「きゃああああ! けっ、けーくん! 何してるの!?」
驚いた義姉が声をあげる。姪はポカーんと口開けていた。
「んー、んー(拭いて、拭いて)」
義姉に拭いてくれアピールをする。これなら義姉に甘えられるぜ!姪ざまぁw目いてぇww
しかしそんなファーザーを見て義姉は、
「トイレに行って洗って来なさい!」と一喝した。
すごすごとトイレに行き鏡を見ると、そこには
『ダークナイト』でジョーカーを演じた故ヒース・レジャーが居た。
チョコがいい感じに唇の端から端へに伸びていてカッコいい。記念に写メを撮ろうと思ったが、携帯はテーブルの上に置いたままだった。ポーズを取っていると子供が入って来て、泣いて出て行った。
*
三人で車に乗る。運転するのは義姉。
「本当にしょうがないんだから!」
義姉は怒っていて、姪は後部座席でキャッキャとはしゃいでいた。
結局、義姉のソフトクリームは舐められないし、ハンカチで拭いてもらえないし、怒られるしで散々だった。がっくりと肩を落とす。
「本当に…けーちゃんは、しょうがないんだから……」
そう言って義姉はクスクスと笑っていた。
*
ファーザーは義姉の事が好きだ━━━
勿論家族としてではなく、異性として。
ずっと好きだった。
それこそ兄が始めて義姉を家に連れて来たその日から……
ファーザーの気持ちを、義姉は知っている。