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東電の巻き返しの政治 - 原発運転延長と料金値上げ
今日(1/18)の朝日の1面記事は、原発の運転期間を60年に延ばす政府方針と、東電が企業向けの電気料金を17%値上げする決定の二つが並んでいる。原発官僚側の巻き返しが凄まじい。最初に「20年延長」の件だが、1/6に「原則40年」と会見した細野豪志は海外出張中で、記者会見は官僚(原子力安全規制組織等改革準備室)がやっている。細野豪志の年頭の発表が完全に否定された恰好だが、原発官僚側に立つ読売の記事では、この原子炉等規制法の「改正案は今月中に閣議決定される見通し」とある。官僚側がここまで強気なのは、何らかの根拠があるからであり、官邸を押さえたという自信を示威している。飯田哲也は「原子力ムラ一斉反撃」と反応しているが、新聞が書かない解説を披露すれば、おそらく、この反動には先週の内閣改造が影響している。私は、副総理の岡田克也の関与を推測する。岡田克也は強硬な原発推進派だ。先週の政治報道の中で、岡田克也の閣内の実権の大きさを伝える情報があり、通常は閣僚の発言に対して政府方針を示して適正化する官房長官の藤村修が、岡田克也に限っては例外扱いで、全ての(不規則)発言を追認する立場と関係になっている事実が紹介されていた。政府の司令塔が二本立てになっている。この権力移動の機を捉えて、東電を含む原発官僚側が一気に攻勢に出たのだろう。


朝日の記事はこれに少し批判的で、福井県知事や美浜町長の反発を紹介、「立地自治体からは疑問や不信の声が上がった」と書いている(3面)。また、「20年延長」に否定的な民主党議員の意見も取り上げ、細野豪志が帰国した1/23以降に党と政府で協議するという声も載せている。官僚側は今月中の閣議決定で動いているため、来週がこの政治戦の攻防の日程となる。この稼働年数の延長は、「原発は60年運転でも十分な余裕がある」としてきた経産省の従来見解に合致するもので、これが法制化されると、福島の事故以降に政権が掲げてきた「脱原発依存」が白紙撤回され、事故前の原発政策の原状に戻ることを意味する。この問題は、昨夜のNHKやテレ朝でもニュースで出たが、映像は「原子力安全規制組織等改革準備室」の部屋を撮しただけで、枝野幸男や藤村修のコメントは入れなかった。細野豪志の1/6の見解との齟齬を指摘しただけだ。朝日の紙面を隈なく読んでも、ネット上の報道記事を検索で探しても、藤村修がこの件で発言した情報がない。マスコミは、なぜ経産相と官房長官に質問して回答させないのだろう。また、細野豪志の外遊にはマスコミの記者が同行しているはずである。例の中川昭一のローマと同様、密着した旅先でオフレコ談義の懇親会を楽しんでいるはずだが、なぜ本社は細野豪志のコメント取りを指示しないのか。

もう一つの電気料金の引き上げの方だが、これはまさしく枝野幸男のマターである。年末、この問題をめぐって攻防があり、テレビ報道でも取り上げられていた。枝野幸男は12/27に、「値上げは電気事業者の権利という考えは改めてほしい」と西沢俊夫に向かって直接に言っている。昨夜(1/17)のテレビのニュースを見ながら、当然、枝野幸男の反論が出るだろうと思ったが、その映像がなく拍子抜けさせられた。ネットで調べると、産経の記事に事実があり、「(法人向け電気料金の価格決定は)自由化されており、東電が自分の責任の上で誠実に交渉するもの」などと言い、「容認する考えを示した」とある。とんでもない破廉恥な後退と変節の弁を垂れていた。産経の記事も書いているが、3週間前には、値上げを権利だとは思うなと東電に指導しているのである。所管大臣として。一転して、値上げは東電の自由となり、政府介入のない民事問題となった。この口の軽さはどうだ。この矛盾を衝かれれば、法律家の詭弁で生きている枝野幸男にとっては、まさしく屈辱と赤面の失態だっただろう。昨年、原口一博が不信任案投票の前後で見せ、生々しい記憶を衆生に刻んだと同じほど、惨めな醜態が演じられたと言える。テレビはこの場面を録っているはずだから、12/27と1/17の豹変の寸劇を報道で流し、枝野幸男を笑い者にして欲しいものだ。枝野幸男が見苦しく言い訳する姿も一興だ。

この電力料金の値上げ問題は、東電の国有化の問題とセットになった一つの政治で、政治が攻防する戦局状況が、ときどきの報道で映し出されている。原発の運転年数の法改正の攻防とも一つである。今回、官僚が「20年延長」を堂々と言い、同日に東電が料金値上げを発表して、新聞の1面を埋めたことは、官僚の側の優勢を示威する軍略であり、この政治戦で官僚・東電の勢力が押しまくっている戦況を物語っている。国有化を阻止する政治工作に成功しつつあるのだ。岡田克也の援軍が大きかったのだろう。国から1兆円の公的資金が入り、国有化が実現すれば、東電の現経営陣は失脚を余儀なくされ、新しい経営体制となり、東電の原発事業もそのままの継続ができなくなる。1兆円は少なからず国民負担に転嫁されるだろうが、国民に納得を請う代償として、東電の保有資産の売却だけでなく、原発関連の独行法人・公益法人の解体や予算縮減が措置されるだろう。官僚・東電の抵抗はそこに関わるのであり、公的資金を拒否し、現経営陣のまま、そして原発法人と特別会計を温存したまま、電力料金の価格転嫁で資金を得ようとしているのである。今回の値上げで、東電は来年度4000億円の増収となり、火力へのシフトで燃料費が膨らむ8000億円の半分をカバーできると説明する。残りの半分は、一般家庭の値上げで吸収する計画が報道されていて、こちらの方は経産大臣の認可となる。

今回、経団連はこの値上げに賛成している。おそらく官僚・東電の側は、この国有化と電力料金の政治攻防を、原発の再稼働へ方向づける思惑なのだ。原発を再稼働させれば、一般家庭の料金増は小幅で済むが、原発を全基停止させると火力のコストが嵩む。そういう言説をマスコミで広め、原発再稼働か、料金値上げか、どちらを選ぶかの二者択一を迫り、その選択と判断の議論環境に持ち込むのである。原発の再稼働と国有化の阻止を一石二鳥で得ようという魂胆が見える。私は、電力料金の値上げについては、こういう展開に進むとは全く予想していなかった。おそらく、東電が8000億円と言っているところの、料金値上げで回収しようとしている金額分について、全国の(沖縄を除く)残り7電力会社とその利用者に負担を広げて平準化させる方式を採り、関東の企業や住民だけが東電の経営再建に協力させられる事態は避けるだろうと思っていた。そうでないと、関東だけが17%(法人)とか20%(家庭)も値上げされ、他と較べて異常に料金が高くなってしまう。ところが、マスコミ報道は、電力料金に著しい地域価格差が生じる問題について何も言及しない。不思議に思っていたが、どうやら裏がある。今回の値上げについて、東電とマスコミは、その原因と理由を火力シフトの燃料費の問題に特定していて、事故賠償費のコストは視界から消しているのだ。料金値上げは、福島の被害者への補償のためではないのである。

つまり、値上げは東電だけではないのだ。理由が火力のコスト増であるなら、それは東電だけでなく、他の電力会社も事情は同じである。原発の比重の高い西日本の電力会社の方が経営圧迫の度は大きいという論理になる。17%(法人)の大幅値上げになるかどうかは不明だが、おそらく、他の電力会社にも料金増に追随させる腹づもりなのだ。他の電力会社も値上げすれば、価格差や不均衡の問題は生じない。それを知りながら、マスコミは何も言わず、東電だけが値上げして、東電管内の利用者だけが負担増をかぶるような説明をしている。今日(1/18)の朝日の社説にはこう書いてある。「資金繰りがおかしくなれば、首都圏の電力供給にも影響しかねない。このため、政府は賠償の支援だけでなく、東電に資本も注入し、一時国有化する方針だ。値上げしなければ、そのぶん税金の投入額が増えることになりかねない。であれば、その前に東電の電気を使ってきた利用者がまず負担するのはやむを得ない」。企業が料金増を受け入れるのは当然だと言っている。3.11の後、首都圏では忌まわしい計画停電が何日も続いた。戦時中のような生活になった。計画停電によって起きた交通事故で死者が出た。町工場や小売店や飲食業者は途端の苦しみを味わされ、売上が減って利益が落ちた。本来、これは業務上過失営業妨害であり、東電は被害者に損害賠償を払う責任を負う事件だ。天災ではなく人災による被害だ。それなのに、逆に電気代値上げに応じさせられる。

東電を存続させるため、東電の役員に報酬を与え、社員に給料を与えるため、被害者の方がカネを取られ、事件の尻拭いをさせられる。私は、朝日の社説はバカげた主張だと思う。話にならない愚論だと思う。まず、東電の資産の棚卸しと売却が先であり、年金と給与の削減が先であり、会社の解体が先だろう。その前に、刑事責任の追及が先だろう。あの一等地の本社ビルは、何で売却処分されないまま10か月が過ぎるのか。帝国ホテルの東隣だ。全国にある東電の自社ビルの情報が、不動産価格と共にリストになって公開されたのを見たことがない。売り払ったらどうだ。そして、4000億円が必要であるなら、来年度に計上された4200億円の原子力関連予算を200億円に削り、4000億円を回せばよいのだ。この会計は毎年積まれているものであり、来年も4000億円が計上されるわけで、その分を引き当てして国債で先に財源を捻出すれば、東電が火力コストで必要だと言っている8000億円がポンと出る。この原子力予算の4年分で脱原発事業の財源を生み出せば、天然ガスを効率利用するGTCC設備も増やせ、さらなる技術革新と新規供給事業者の育成で、「火力のコスト増」の問題解決を図れるだろう。自然エネへの転換と移行も容易だろう。電力料金値上げについて、マスコミは経済への影響を過小評価しているが、これは消費税増税と同じほどの巨大なインパクトがある。17%の法人向け料金の値上げが、何も波風を立ち起こさず、テレビ報道で軽く扱われるのが不思議だ。中小企業は、どうやって吸収するのだろう。

電気料金が大幅に上がる。石油価格も上がる。消費税も上がる。円高は続く。中国の景気は冷える


by thessalonike5 | 2012-01-18 23:30 | Trackback | Comments(0)
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