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2009-07-29

大きな会社と小さな会社のどっちで働くべきか迷っている人へ

いきなりポイントから入ります。大企業で働くことと中小企業で働くことの違いは、大企業はルールで動き中小は経営者の恣意で動くということです。ココがすごい重要です。

僕は6年近く大企業にいました。その時に考えたことは大企業で働くということ - GoTheDistanceで書きましたが、大企業の根本的な原理原則はルールで仕事が動くということです。異なる立場・異なるレイヤーの人たちを束ねて1つのサイクルを作るには、ルールを作ってその中でサイクルを回すより他ありません。それの累積によって企業文化なるものが形成されます。

大企業にいてよかったことは「普通に仕事をさせてもらえる」ことでした。もちろん仕事を選ぶことは基本的に出来ないんですが、明確に自分の役割が与えられ、そのロールに従いすべきことをして、あるべき成果を出してその仕事を終える。あっちいったりこっちいったりということはない。いきなり全く次元の違う仕事を求められたりはしない。そして次へ行く。そういう環境があったのはキャリア形成という意味でとても有益だったと思いますし、そこで成果が出せれば居心地も悪くないです。腰をすえて働けるのは大きなメリットです。もちろん自己PRは常に必要です。最近はキャリアパスなんてもんは幻想のレールでしかないと思っているけど、会社で普通に変なインタラプトがなく仕事が出来るってのは、恵まれていると思います。

ルールで動くことの悪い面は組織の硬直化・官僚化に伴い「個」が透明になっていくことです。ルールが入るということは、何をするにもどうしても意思決定が遅くなります。ルールがあるってことは、個人としての名前、理念、価値観で仕事することは「掟破り」になりますので、基本的にご法度になります。個人が透明化すると求められるのは何かといえば、「How」に注力できるかどうかになります。Howに注力できるってことは裏返すと、替わりはいくらでもいるってコトです。それが大企業の強さです。

一方の中小企業、特に僕のような数名しか社員がおらず社長とマンツーでやっているような会社にいる場合は、ルールもクソもありません。経営者が右といえば右ですし、左といえば左です。その濃度が大企業と違います。大企業にいたら今までは仕事が与えられていましたが、今は仕事そのものを作り出さなければならないためお客様に価値を提供できるか否かだけが厳しく求められ、僕はしばしば「なんでこんなことまでやらなきゃならないんだろ」という葛藤がやってきました。

僕が一番最初に直面したのはこのマインドチェンジの必要性でした。

特に僕はコンセプトを練ってモノ作りをしていく側の人間ですから、その時重要なのは出し惜しみをしないってことです。出し惜しんだらやってくるチャンスもやってこなくなるし、新しい何かを提供していくのであれば常に前を走っていなければならないからです。

「右といえば右、左といえば左」のくだりで「YESマン」を思い浮かべるのはいささか浅薄です。求められるのは「Disagree and Commit」の精神です。議論はするし間違ったことがあるなら伝えるのですが、意思決定者が右と言った中で十分な議論を重ねたら、下にいる人間は賛成ではなくてもコミットして前に進める努力を絶対にしなくてはならない。そうしないと、単純にやっていけないんです。前に進まないんです。大企業は別です。コミットしなくても代わりはいるし、誰かがやってくれます。80点〜90で上等です。100点とっても100点の評価を得られないのが大企業でもあります。特筆した成果を上げても90点が91点になるような世界ですし、基本的には最低限を下回らなければOKという世界です。中小ではそんな余裕はどこにもありませんし90点未満じゃ0点と一緒ですが、100にも200にも化ける可能性があります。フリーダムな世界です。

小さな会社に飛び込んでいこうとされる場合に心に留めておいて頂きたいのは、id:hase0831さんのお言葉を借りると「この社長のために(自分に非がなくても)土下座できるか?」という質問にどう答えるかです。それぐらいの気持ちがなければ、経営者の距離が近い中小では朝令暮改は当たり前ですからルールで考えていたら不条理なことが多くなるので疲れてしまって、やっていけなくなるんじゃないかなと思います。中小で疲れて大きな会社で仕事をしたいという方の気持ちがよくわかるようになりました。

大企業→ベンチャーへの移動が少ない理由

基本的に「大企業→ベンチャー」と「ベンチャー→大企業」なら前者のほうがやりやすいです。

「90点以上を出せるような人たち」が、なぜ、

1点、2点の差を争わざるを得ない大企業にとどまり、

90点以上を出せること自体が評価される中小企業・ベンチャーに来ないのか。

「90点以上を出せるような人たち」をいかに大企業からベンチャーに移すか|日本人1000万人が英語を話す、そんな日をつくる日記

中小に飛び込まない理由は、Whatを突き進むインセンティブのない世界に慣れすぎてしまったからだと思います。「90点以上を出す」ことがどーゆーことか、体で知る機会がほとんどない。

でも僕が転職を最初に考えたきっかけは「1点、2点の差を争わざるを得ない」という大企業の大きな負の側面が耐えられなかったからです。

大企業はどうしても順番待ちがありますし、こんな不透明で何が次にやってくるかわからない、企業自体も短命化しているような時代に自分の腕を磨く機会が常に限定的だったら終わっちまうだろという危機感を感じていたからです。もっと面白いことが出来るはずだと思って飛び出しましたが、マインドチェンジを根本的にしていかないと前に進まないことばかりで色んなトコにアタマをぶつけながら、3歩進んで2.5歩下がる日々です。

keisuke_yamanekeisuke_yamane 2009/07/30 01:39 アザーチョイスとして、『フリーランスとして、大企業で働く』、というのもありかと。評価軸(主に信頼と金銭)としては、まさに「90点未満じゃ0点と一緒ですが、100にも200にも化ける可能性がある」という感じになります。代替社員としてのポジションをするだけでは、90点が関の山なので、Whatを突き進むインセンティブはやまもりです。そしてそれを求められます。

 その上で、大企業でしかできない仕事をすることが出来ます。
まぁそういう仕事をしたいか、ということにつきますが。。

『フリーランスとして大企業で働く』というのは、大企業就職→フリーランス化→元の企業に雇われる、というのがまぁ楽と言えば楽です。何しろ、人間関係情報、政治、ルール、信頼をそのままひきつげるのでイチからの営業が必要ないということもあります。
こんなこというと、『営業をさぼるな!』とか某氏達より怒られそうですが、多分、『フリーランスとして大企業で働く』というのは、起業と言うより、大企業での働き方のバリエーションを広げるHackといったものなのでしょう。

kyompikyompi 2009/07/30 10:09 今までで5〜10人規模や50人規模、300人規模の会社で働きましたが(現在9社目)、小さければ小さいほど専門外の仕事をせざるを得ませんでした。
それを楽しめるか楽しめないか?自分にとっては普通に働いていれば経験できない仕事をできたということで、とてもついていたと思っています。
といってもやはりキツかったですがw

規模が大きくなってくると、やはりルールにそったルーチンワークが主になってしまうので、自分の性には合わないのかな…。仕事の予定が立てやすく、残業もほとんど無しで帰れるのはありがたかったのですが、ルール破って効率化を図りたい自分としてはじれったく、なかなかそこに面白さを見出すことができずに退職しました。

今のところの感覚としては、50人規模くらいが「自発的に動きやすい&コミュニケーションをとりやすい」のかなぁと思っています。

sanjaposanjapo 2009/07/30 10:09 ただ、ベンチャーに行ったからといってインセンティブが出るかといえばそうでない場合が多いです。

失敗する経営リストにある
還元の心が無い経営者が多いことが原因です。

そのため、この人の為に土下座できるかどうかという判断基準は的を得ていると思いました。

なまえなまえ 2009/07/30 11:38 素晴らしい考察です。就職活動を控えている学生の人全てに読んで頂きたい記事です。

数人〜数十人程度の中小企業の雰囲気は独特です。経営者は神であり、社員は皆タタリをおそれています。しかし、表面上は経営者と社員は普通に雑談をしていたりするのです。一見仲良く話しているようで、経営者は社員が自分の命令通りに従う人間なのか、社員はこの経営者について行って本当に大丈夫なのか(ちゃんと見返りがあるか)お互い腹のさぐり合いをしているというドラマのようなことが毎日行われています。

特に学生の人に知って頂きたいのですが、中小企業ほど権謀術数が必要な世界です。
自分自身のビジネス力以外の能力(たとえばゴマすり能力など)で給料も待遇もあげられる世界です。
中小企業の経営者は自信の専門分野には詳しくても、それ以外のことにはてんで素人(会計のことは何も知らないとか)だったりするので、世間的に見ればつまらないことで経営者の信頼を勝ち得ることも可能です。プログラマーでありながら会計の本を真面目に読んでその知識をひけらかすなど。

逆に大企業では専門性が重宝されます。先ほどの例のように、プログラマーでありながら会計もかじっている、とかは大企業ではゴミほどの価値もありません。だって内部にはバリバリのプロの会計の人がたくさんいるんですから。会計関係のプログラムにかかわるなら別ですが。

自分が学生自体に誤解していたように、中小企業は専門性を生かして働けるが、大企業はルーチンに従うだけ、というのはむしろ逆です。中小企業は個人の政治力が重要ですが、大企業ではむしろ職人的に働けます。まあ、大企業で一流の技術力があれば、規模の小さい中小企業では神になれる(その人がいないと仕事が回らない状態になる)こともあり、そうなれば経営者以上の権力を手にすることすら可能ですので、どちらが得なのかは一概には言えません。

shallowthoughtshallowthought 2009/07/30 18:14 > 逆に大企業では専門性が重宝されます。先ほどの例のように、プログラマーでありながら会計もかじっている、とかは大企業ではゴミほどの価値もありません。だって内部にはバリバリのプロの会計の人がたくさんいるんですから。会計関係のプログラムにかかわるなら別ですが。

一応、大企業というもので働いているのですが。

大企業で専門性が重宝されるかどうかは、部署によります。部署によってはゴミ程の価値もありません。
研究部門や技術開発部門の数少ない部門がそれで、大企業の中でもそれはごく一部の部分です。

大多数の人間は、業界・業種別のシステム開発部門に配置されるのですが、そこでは専門性はゴミ程の価値もありません。
なまえさんの言葉を借りると、権謀術数が必要な世界で、自分自身のビジネス力以外の能力(たとえばゴマすり能力など)で給料も待遇もあげられる世界です。

ただ、中小の場合は、組織階層の縦の長さや、横幅がせまいため、自分に都合のよい(専門性を生かしやすい)環境を、大企業より作りやすいので、権謀術数は必要にしても、その辺がやりがいがあると思います。

というか、この業界の日本の大手のSIerは、専門性に重きを置いていないのが大半じゃないんですかねー。

hogehogehogehoge 2009/07/31 01:41 大企業いけるのならば、先ずは大企業に行けと言いたい。

中小なんて、大抵は大企業の下請けみたいなもんだよ。
一部の超優良なベンチャーとかを除いて。
でもそういうところで活躍できるのなんて、一握り。業界で名が知られるぐらいじゃないと、お話にならないよ。
やりたいことやれる。チャンス、自由があるのは、間違いなく大企業の方。
メーカ系なら社内公募とかで、希望する職場に転職のリスク無しで移ることも可能だし。

tyokoyatyokoya 2009/07/31 08:58 日本国内で働く、あるいは、海外でも日本企業に勤める場合は、可能ならば大企業を選択してください。
 仕事で挑戦している課題、それに取り組む人達の知識、その数の多さは大企業が有利です。同時に競争や論争もありますが、多いに楽しみましょう。もまれる事で自分も成長することもありますし、もまれる時に担がれることもあります。チャンスがあるということです。
 中小企業では、活動のスピードや経営層付近の情報に触れる事ができます。多いに楽しみましょう。ただし、これらは方言や誤解に塗れていますので将来への礎にするには注意が必要です。
 若い人への意見です。

beepcapbeepcap 2009/07/31 22:29 現在中小にいますけど、ルールで働いています。
稀有な例と言われてしまえばそれまでかもしれませんが、大企業にも当然、納品とかでお世話になります。

給料の額ぐらいしか差を感じません(涙

丘村丘村 2009/08/14 19:35 私は100人規模、1000人規模、10000規模の企業で働いたことがありますが、大企業の弊害は決断までに人と時間がかかりすぎること、中小の弊害は企業が及ぶ範囲以上の仕事が個人では難しいこと、でした。

おっしゃるようにそれぞれのメリットもあると思います。大企業のようにルールができている仕事は効率がとてもいいです。

中小企業でも、良心的な経営をしているところもありますよ。小粒でもぴりりとした仕事をしているところは、リクナビなどに頼らずに探せばたくさんあると思います。実際に自分が勤めたところは「良心的」だったのだと、辞めてみてから感じました。

maknakunmaknakun 2010/09/09 10:21 「大企業はルールで動き中小は経営者の恣意で動く」
目から鱗です。
最近では「恣意」を「ルール化」している中小もみうけられますね

たけたけ 2011/08/11 02:24 Web系の中小・零細企業に勤めて6年になります。
中小企業の朝令暮改を前向きに捉えてみると、「暗中模索しながら進化し続けてるんだから昨日言ったことと今日言うことが違うのは当たり前でしょ?」ってことかと。

日本の大企業はとりわけ意思決定プロセスが遅いようで、うちの大手クライアントに小さな改善策を提案して、1年後にようやく取り掛かれる…みたいなことはしょっちゅうあるのですが、その1年の間にクライアントが進化し続けているかというと全然そんなことはなくて、実は中小企業が1日で意思決定したことに1年かかってたりします。

たけたけ 2011/08/11 02:37 IT系・Web系で就活中の人にアドバイス。
20代はスキルアップ重視。中小でも零細でも良いから、スキルを伸ばせる会社を探しましょう。ただし、光通信系の会社には入っちゃダメよ。
30代はブランド重視。夢が無いなら大手企業に入りましょう。もうこれは絶対です。
40代の転職は超危険です。役職も給料も下がることを覚悟しましょう。
50代は消化試合です(経営者じゃないならね)。大手でしかるべき役職を持っていれば、何もしなくても食えます。
さぁ定年になりましたね。退職金をキッチリと受け取って、長い老後に備えましょう。

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