「成長エンジン失速」世界経済に新たな危機 欧州危機で中国減速本格化
産経新聞 1月17日(火)21時7分配信
世界経済を引っ張ってきた中国の高度経済成長の持続に「黄信号」がともった。温家宝首相は1月初めの地方視察で、経済の「下振れ圧力」を率直に認めている。欧州債務危機で世界経済の先行き不安が広がるなか、「成長エンジン」が失速すれば、回復シナリオは描けない。“中国頼み”の世界経済は、牽引(けんいん)役を失うという「新たな危機」に直面している。
「欧州債務危機は膨らみ続け、拡散している」。17日に記者会見した中国国家統計局の馬建堂局長は、成長鈍化の理由として真っ先に欧州危機を挙げた。
欧州は中国にとって最大の貿易相手先だ。欧州向け輸出の伸びは昨年9月以降、10%以下に急減速し、今年は前年割れを予想する声も出ている。金融引き締め策で、中国企業のマネーの動きが鈍っているところを欧州危機が直撃した。
さらに2008年のリーマン・ショック後に打ち出された自動車や家電の消費促進策が昨年、相次いで終了し、内需拡大のカンフル剤も切れた。高速鉄道追突事故の影響で路線建設など国内投資にもブレーキがかかった。
欧州危機の影響が本格化する今年は成長がさらに鈍化。市場では「1〜3月期の成長率は7%台に落ち込む」との見方が大勢だ。政府系シンクタンクの中国社会科学院も、今年の成長率を8・9%と予測し、今後5年間では平均7〜8%の“巡航速度”になるとみている。
国際社会は、欧州危機の解決策として、「世界第2位の経済大国」にのし上がった中国に対し、成長持続に加え、欧州の国債購入など資金供給でも“救世主”の役割を期待している。
だが、中国には積極的にその役割を果たす意思は薄い。国内では消費者物価上昇率が高止まりし、格差拡大への不満も高まっている。昨年、中東・北アフリカで巻き起こった民主化運動も物価上昇が引き金だっただけに、中国としてはインフレへの目配せを怠ることはできない。
「日本を超えた巨大経済が今後も2桁の成長を続けるのは現実的にも不可能」(エコノミスト)との指摘も出ている。
一党支配体制の中国には、トップダウンで実効性の高い経済政策を発動できるという強みがある。
「今年秋の共産党大会までに景気を回復させないと、指導部交代をめぐる権力闘争が起きかねない」(関係筋)との“政治的判断”もあり、市場では昨年暮れに続く追加の金融緩和策に加え、新たな消費刺激策の発動を予測する声が多い。
世界経済は、困難な政策運営を迫られる中国に命運を握られており、その動向から目を離せない事態が続くことになる。(上海 河崎真澄)
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さらに2008年のリーマン・ショック後に打ち出された自動車や家電の消費促進策が昨年、相次いで終了し、内需拡大のカンフル剤も切れた。高速鉄道追突事故の影響で路線建設など国内投資にもブレーキがかかった。
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最終更新:1月18日(水)5時10分
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