東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて見直しを進めている国の原子力の安全規制で、原発の運転を原則として40年に制限する方針について、政府は、例外的に認める延長期間を最長で20年とする考えを明らかにしました。専門家は、原発の運転期間については、科学的根拠を明確にしたうえで制限すべきだと指摘しています。
福島第一原発の事故を受けて見直しを進めていた安全規制について、今月6日に細野原発事故担当大臣が会見して、原発の運転を原則として運転開始から40年に制限し、例外として延長する場合は施設の老朽化の評価や安全確保ができる技術的能力があるかを審査する制度を新たに法律に盛り込む方針を明らかにしていました。この方針について、内閣官房の原子力安全規制組織等改革準備室は、例外として延長するのは1回かぎりで、期間は最長でも20年とするという考えを明らかにしました。原発の運転期間を法律で制限するのは初めてで、細野大臣は「40年が経過したら基本的には廃炉にする。それ以上の運転は極めて厳しい状況になる」と述べていましたが、延長規定の運用次第では40年制限の抜け道になるという指摘も出ています。これについて、原子力の安全に詳しい九州大学の工藤和彦特任教授は「原発の運転制限を40年と決めた根拠がそもそもよく分からないなかで、最長20年延長できるという考え方には疑問を感じる。どのような議論を経て決めたのか、その科学的根拠を明確にすべきで、老朽化した原発の運転のどこに問題があり、どう改善すべきなのかを詳しく検証したうえで制限を決めるべきだ」と話しています。一方、準備室は「世界的に見ても運転の延長を認めるのは最長で20年が妥当で、厳しい基準を設けてハードルを高くするうえ、安全の観点からのみ厳格に判断する」としています。政府は、法律の改正案を今月中にも国会に提出し、ことし4月の原子力安全庁の発足に向けて法律を改正することにしています。