悲劇から一夜明けた16日、船橋オートレース場では午前8時30分から坂井さんの事故現場である1コーナー付近で神事の追悼式が行われた。選手や関係者ら約150人が喪章をつけ、坂井さんの冥福を祈り、黙祷を捧げた。選手は左肩に喪章をつけてレースに臨んだ。
師匠の永井大介選手は、坂井さんのロッカーの前で目を真っ赤にしていた。「つらい…」。言葉を詰まらせながら第一声を発した後は涙が止まらない。
「ご両親にも申し訳が立たない。一生こいつ(坂井)を背負って走っていきます。あの時、俺のレースを見なければこんなことにはならなかったのに…」
永井が08年大みそかのスーパースター王座決定戦(埼玉・川口オートレース場)を制した時の雄姿に憧れて、OLからオートレーサーへの道を選んだ坂井さん。44年ぶりの女子レーサーとして注目を浴び、永井も熱心に指導してきた。それだけに、“詫び”ともとれる言葉が続いた。
永井はオートレース界の第一人者で、本人にも自覚はある。先輩たちの励ましもあり、この日最終12レースに出走し、力強い勝ちっぷりで今節の初勝利を挙げた。ロッカーに引き揚げてくる時も目は赤いままだった。
報道陣には「今日は勝たなければいけないと思った。周りのみんなもそんな思いで走っていたからね」と気丈にコメントしたが、いったん腰を下ろした途端に再び涙があふれ出し、「坂井にも見せたかったけどね」と声を震わせた。
きょう17日の優勝戦は、坂井さんと同期(31期)の平成23年度の最優秀新人・青山周平(27)と初対決。「坂井も見てると思うから勝ちたいな」。姿はなくても坂井さんからのエールは心に響いている。永井は、真っ先にゴールを駆け抜けることだけを胸に挑む。
(紙面から)