浮気症(浮気性)は治らない。
これは、よく言われることです。
しかし、本人が自覚していて、治療の意志があれば、私は改善できると考えています。
浮気症の治療で、空回りしがちな行動
まず、空回りするパターンを始めに書いておきます。
・浮気しないように誓約書を書く
・浮気しないように我慢をする
・今の相手と一緒にいることを大前提にする
誓約書を書いたり、意志の力で何とかしようと、我慢したりという方針は、1~2か月。意志の力が特に強い人であっても半年が限界でしょう。ご飯を食べないように意志の力で我慢していても、飢餓感が襲ってきたら手当たり次第食べてしまう。生命を維持するために必要な衝動です。
浮気の衝動も、今は間違った形で現れてしまっていますが、元々生命を維持し、命をつなぐために備わった欲求ですから、意志の力で永久に抑えられるものではありません。
もうひとつ、とても大事な要素があります。あなたが浮気をしたくなるとき、実はあなたのパートナーにも問題があるのです(だからといって浮気をしていいという意味ではありません)。その理由は後述しますが、まず知っておいてほしいことは、もしあなたが浮気をしたくなるとしたら、今の相手はあなたのベストパートナーではないかもしれないということです(ベストパートナーであっても、心の成長の段階によっては浮気したくなりがちなときもあります)。
だから、今の相手と未来永劫一緒にいることを大前提にしてしまうと、そのこと自体が浮気性の治療に悪影響を与えることがあるのです。もし二人が成長してみて、合わない相手だったと分かったら、別れる。最後は、そういう覚悟が必要です。
浮気症という症状には目的がある
私は、症状には目的があると考えます。症状を擬人化した言い方なので、分かりにくいと思う場合は「心の叫び、心の内にある満たされない想いが、浮気という症状として表面化している」と捉えても構いません。上記の空回りしがちな行動は、浮気という症状だけに目を向けて、その下にある「心の叫び」に何も目を向けていないことが問題なのです。
浮気症はある種の依存症です。回避依存症という症状名がついています。正式な病名ではなく、便宜的につけられているものではありますが。アルコール依存症に「dry drunk」(呑まないアル中)という表現があるのをご存知でしょうか。アルコールは断ったけれど、心の問題は解決しておらず、別のものに依存しやすい状態になっている人のことです。
浮気症も、浮気をやめただけでは「dry drunk」と同じで、本当の解決に至っていないのです。
では、浮気という症状を通じて、心の叫びは何を表現しようとしているのでしょうか。浮気という症状の目的は何でしょうか。
男性の場合、母親から見捨てられるかもしれないという不安が、大人になった今でも解決していないことが根本原因の場合が多いようです。母親に包まれて、何の心配もなく、安心して過ごした幼少期の経験が足りないまま大人になった場合、恋愛関係に「お母さんからもらえなかったもの」を求めてしまいます。
心の最も内側の部分に、永久に癒されない寂しさのようなものがあり、どんなにフタをしても、我慢しても、生活や仕事でストレスを感じて来ると、フタしきれなくなってしまうわけです。
女性の場合、それに加えて「復讐」の目的を持っている場合があります。復讐というと怖い言葉ですが、心理学的には「反発心」「対抗心」「怒り」「心の中の闘い」と同義だと思って構いません。たとえば、父親が浮気症で、母親が苦しんでいた。結果として男性全般に対する「怒り」「不信」を持ってしまっていて「男なんて大切に扱う価値はない」と心のどこかで思っていたり実際に行動に出ている、というようなケースが「復讐」にあたります。
男性で女性に「復讐」をしている人は、母親に対する怒りや恨みが動機の場合が多いようです。「暴力」「暴言」「避妊しない」「わざと別の女性の存在を明かして傷つける」など、行動が攻撃的で分かりやすいので、あえて解説しません。
浮気症の治療方針
症状の目的が「心の内に抑圧された寂しさを癒すこと」「父親(母親)に対する怒りを癒すこと」ですので、その目的を(浮気という害のある形ではなく)安全な形で果たすように導くことがセラピストの務めです。
大人の自分がどんなに寂しさを感じないような経験をしても(たとえば浮気症の男性が大勢の女性に囲まれて生きていても)、癒されたいのは子ども時代に感じた寂しさ、不安なので、つかの間安心したとしても、根本的には解決しないのです。
子どもの頃の精神状態に戻って、その状態で寂しさを感じ、その寂しさを癒します。催眠系のワークが有効な場合が多いです。私の場合、家族彫刻を描いてもらい、ゆるしのワークで当時の感情を解放するという方針をとる場合が多いです。私は、潜在意識を変化させる専門知識なしで浮気症を解決するのは極めて困難であると考えています(これが、一般の人が「浮気症は治らない」と考える理由です)。
復讐の動機が強い場合は、ずっとフタしてきた怒りを癒す必要がありますが、その抑圧された怒りが、子ども時代から長年癒されなかった原因は大抵、罪悪感です。ですので、結局は同様にゆるしのワークを行います。罪悪感のフタが取れれば、怒りも寂しさも癒されていくことが多いです。
(子ども時代に、日常的に虐待を受けていた、などの、極めて深刻な経験をしている場合は、怒り・罪悪感に加えて恐怖も癒す必要がありますし、この世界は「まあまあ安全な場所だ」ということを潜在意識に教えていく必要があります。それは、さらに専門的な関わりが必要になります)
浮気男のパートナーに求められること
ふつうどんな人でも、親からもらえなかった、満たされなかったものを持っているものです。
それが、恋愛の中で癒されていくのです。色々問題を抱えていても、何度か出会いと別れを繰り返していくうちに、本当に心を開けるパートナーに出会って、それまで抱えていた問題があまり表面化しなくなった。そういう道をたどることが出来れば、「浮気症」という問題に至ることはないわけです。
浮気症になるのは、本当に満たされる恋愛をしていないからです。
母親に包まれて、存在を認められて、安心して過ごすことが出来なかった子は、自分の心を本当に開いて他人と関わることが苦手です。男性の場合元々、ダメな自分や、自分の恥ずかしい部分、失敗したことなどを話すことが苦手です。
ところが、こうした「自分の負の部分」を開示して、それでも相手が去っていかないという安心感を得たときに、本当の絆が出来るものなのです。浮気症の人は大抵それが苦手です。自分から自己開示をしない上に、「どうせ自分のことは分かってもらえない」と思っているのです。
浮気症の人は、パートナーに、自分の心の内を全て話し、それを受け入れてもらう経験をすることが、癒しにつながります。逆に、自分のパートナーが浮気症だという人は、相手の自己開示を本当に心から受け止めているかどうか、自省してみてください。どこかで相手の負の部分を嫌っていないか、自問してみてください。
男性が結婚を決意するときは、病気になったり、弱気になったり、失敗したりしたときに、彼女がそれでも去って行かなくて、変わらない態度で接してくれたことで安心できたとき。これは昔からよく知られています。結局、浮気症の人のパートナーに求められるのも、これと同じことなのです。
但し、より高いレベルで受け入れる必要がありますし、より粘り強く関わる必要がありますが。
こうした「母親的な包む愛情」を示し続けることが、浮気症の人のパートナーに求められることの、ひとつ目です。
あなたが「浮気症の本人」である場合、あなたのネガティブな面を言葉にしてパートナーに自己開示し、それを受け止めてもらってください。それが安心感につながります。
あなたが「浮気症の人のパートナー」である場合、相手の自己開示をしっかり受け止めてください。だらしない部分を責めないでください。安心感を得ない限り、浮気は止まないのです。
そして、相手があなたに対して「この人には素の自分を出しても大丈夫。安心できる。」と思ってくれる状態を目指してください。言い換えると「心を要求する」ということです。
浮気症の本人が自覚して、治そうとしている場合、パートナーに求められることは以上ですが、浮気症の本人が「俺はこれでいいんだ」などと思っている場合、事はそう簡単ではありません。
浮気男のパートナーに求められること その2 (浮気症の本人が反省していない場合)
浮気症の本人が、自分を変えようとしていなくて、パートナーの側から働きかけようとする場合、話は一気に10倍ぐらい難しくなります。
というのも、「浮気をする自分でいいじゃん。変わらないし。」→「相手の負の部分も受け入れる」→「浮気は続く」という結果になることは火を見るよりも明らかだからです。
このような、「改善しようとしていない浮気男」の場合、浮気症のパートナーに求められることは、上述した母親的な関わりに加えて、父親的な「よいものはよい、悪いものは悪い」と伝える厳しさです。
相手の負の部分も受け入れながら、行動面では悪いものは悪いと伝えてゆくのは、簡単なことではありません。浮気症の人に対して父親的な愛情と、母親的な愛情と、両方を注いでゆくわけです。その間、自分はあまり愛情を受け取れないでしょう。苦しい道になると思います。
しかも、感情的になってしまうと、相手に伝わらないんですね。感情的にどっしりと安定していて、しっかりとした構えが出来ている、その状態で伝えないといけない。
・相手の浮気でショックを受けたとしても、相手にその感情をぶつけない。
・自分の力で、自分の感情の整理をつける。
・相手(浮気症の人)の人格は全て受け入れ、否定しない。
・相手の行動は「その行動はやめなければいけない」と繰り返し冷静に伝える。
いわば、相手に父親的な愛情と母親的な愛情の両方を注ぐということです。
相手の浮気症の程度にもよりますが、並の人間には出来ないと思います。
「遊びの恋と本気の恋の見分け方」の「遊ばれないためのコツ」のパートも参考になります。
それでも、この道を進みたいという場合、あなたとセラピストともう一人ぐらい、一緒に闘ってくれる仲間を作って進んでいくことが大事です。一人で立ち向かったら、絶対に途中で心が折れてしまいますし、その相手にとっても、中途半端に関わられて途中で投げ出される経験は「ほら、やっぱり。どうせ俺は最後は捨てられるんだ。」という思いこみを強化する結果に終わってしまい、逆効果になる懸念すらあります。
もしこの部分を浮気症のご本人が読まれていたら、どうか、あなたが自覚して改善しようとすることが、どれだけ周りの人の負担を減らすのか、そのことをよくよく考えていただき、勇気ある一歩を踏み出すことを心からお願いします。
あずまさん こんにちは
私は主人の事で悩んで、この記事を拝見しました
『書いて楽になるなら、ご活用下さい。』とありますので、書かせて頂きます
結婚して1年半くらいですが、主人はネットのチャットで女性と喋ったり
メールしたりするのを辞めてくれません
(仕事中や、私が寝ている間など、私に気づかれない様にやっています)
結婚する前にも、結婚してからも、ずっとしていたようです
『浮気』の定義は人それぞれかもしれませんが、こんな時代です
チャットでいやらしい会話をし、相手の女性は自分の下着姿の写メを送ってくる…
これは、不貞行為に近いと思います(私は)
主人の様子が気になる→主人のPCをチェックする(これは私が悪いのでしょうか…)
→メールやチャットのやり取りがある(見つかる)
私が見つけると、主人は『もうしない』『誓う』などと泣いて謝ります(40歳間近なのに…)
でも、2〜3ヶ月もすれば、またやっています
(メールの日付などで解ります)
あずまさんの記事を読んで、子どもの頃のことが関係しているとか、
相手を受け入れるとかありましたが、とてもそんな気になれません。。。
時間が経てば、そういう寛大な気持ちになれるのかもしれませんが。。。
今は、ただ『どうせまたやるんだ』『もう信じない』という気持ちしかありません。。。
自分の親や友達に話す事もできず、一人で悶々としています。。。
投稿者 うさこっこ : 2010年06月23日 14:44