2011年11月21日 11時9分 更新:11月21日 13時36分
地下鉄、松本両サリンなど4事件で殺人罪などに問われたオウム真理教元幹部、遠藤誠一被告(51)に対し、最高裁第1小法廷(金築誠志裁判長)は21日、被告の上告を棄却する判決を言い渡した。1、2審の死刑が確定する。教団を巡る一連の刑事裁判は、教団元代表の松本智津夫(麻原彰晃)死刑囚(56)ら幹部が逮捕された95年から16年余を経て、全公判が終結した。死刑を言い渡された被告は13人にのぼり、法務省は全員の刑確定後、死刑執行について検討に入るとみられる。
小法廷は「残虐、非人道的で結果の重大性は比類ない。実行犯ではないが、教団幹部の立場で科学的知識を利用し重要な役割を果たした」と述べた。
刑事訴訟法の規定で最高裁判決に対しては10日以内に訂正の申し立てができ、遠藤被告と18日に死刑維持の上告審判決のあった中川智正被告(49)には申立期間が残されているが、棄却されれば判決が確定する。
坂本堤弁護士一家殺害(89年11月)、松本サリン(94年6月)、地下鉄サリン(95年3月)の「3大事件」をはじめとする一連のオウム事件では計27人が犠牲(08年施行のオウム真理教犯罪被害者救済法の認定死者などを除く)になり、6500人以上が負傷した。計189人が起訴され、これまで地下鉄サリン事件の実行役を中心に11人の死刑が確定した。遠藤、中川両被告の死刑が確定すれば、確定判決は死刑13人▽無期懲役刑5人▽有期の実刑80人▽執行猶予付き判決87人▽罰金3人▽無罪1人。
松本死刑囚への1審・東京地裁判決(04年2月)は、松本死刑囚を計13事件の首謀格と認定した。事件の動機は「松本死刑囚が武装化で教団の勢力拡大を図ろうとし、ついには救済の名の下に日本国を支配して王になることを空想した」と指摘。「信者の資産を吸い上げて得た多額の資金を投下して武装化を進め、無差別大量殺りくを目的とする化学兵器サリンを散布して首都制圧を考えた」とした。
刑事訴訟法は、死刑執行は判決確定から6カ月以内に命令しなければならないと定めているが、共同被告人の判決が確定するまでの期間は算入しない。一連の事件では逃走中の指名手配容疑者が3人いるが、法務省は「執行停止の理由には当たらない」としている。
遠藤被告への1、2審判決によると、遠藤被告は94年5月~95年3月、松本、地下鉄両サリンのほか、教団の敵対者とみなした滝本太郎弁護士をサリンで、水野昇さんを猛毒のVXで、それぞれ襲撃した。【石川淳一】
◇ことば・オウム真理教
84年2月に松本智津夫(麻原彰晃)死刑囚が設立した「オウム神仙の会」が前身。87年6月に名称変更し89年に宗教法人格を取得。同年~95年まで坂本堤弁護士一家殺害や松本、地下鉄両サリンなど一連の事件を起こし計27人が犠牲になった(刑事裁判上の認定。08年施行のオウム真理教犯罪被害者救済法で新たに1人が地下鉄サリン事件の死者と判断され、松本サリン事件の被害者、河野義行さんの妻澄子さんが08年に亡くなり死者は計29人)。95年10月に東京地裁が宗教法人の解散を命令。その後、主流派の「アレフ」と、上祐史浩元幹部が設立した「ひかりの輪」に分裂し、布教活動を続けている。