環境省は13日、県内と県境の湖沼・河川計69地点で昨年11~12月に実施した放射性物質モニタリング結果を発表した。水底と湖岸・河岸の土壌の放射性物質濃度と、空間放射線量などを測定した結果、奥四万湖(中之条町)の湖岸の土壌から最高で1キロ当たり7100ベクレルの放射性セシウムが検出されるなど一部で汚染が顕著な実態が明らかになった。全調査地点で水そのものからセシウムは検出されず、県は「安全性に問題はない」としているが、長期的には魚など水中や水辺の生物への影響が懸念される。【喜屋武真之介】
調査したのは、同省が水質の定点調査を行っている環境基準点など河川50地点・湖沼19地点。
湖底では藤原湖(みなかみ町)で同4600ベクレル、川底は早川(伊勢崎市)と鶴生田川(板倉町)で同370ベクレルのセシウムが検出された。河岸では桜川(川場村)で同3700ベクレルのセシウムが検出された。県は「魚などに今後、どのような影響を与えるかは分からない。今回はあくまで状況把握であり、測定結果をどう生かすかは今後考えたい」としている。
一方、各地点の地上1メートルで測定した空間放射線量の最高値は、湖岸で榛名湖(高崎市)の東吾妻町の地点で毎時0・37マイクロシーベルト、河岸は桜川(川場村)が同0・43マイクロシーベルトだった。国が除染費用を負担する「汚染状況重点調査地域」の指定対象は毎時0・23マイクロシーベルト以上だが、この値を湖沼5カ所・河川4カ所で上回った。県は「測定場所は人が常時立ち入るような場所ではない」として、現時点で除染などは行わない方針を示した。
環境省は今後も湖沼と河川のモニタリングを月1回程度の頻度で継続する。また、2~3月には県内40地点で地下水の放射性物質濃度を調査する予定。
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◆湖沼◆
(市町村) 底 岸 空間線量
奥利根湖 (みなかみ) 750 2900 0.26
ならまた湖(同) 不検出 390 0.32
洞元湖 (同) 1490 330 0.26
藤原湖 (同) 4600 760 0.15
赤谷湖 (同) 1690 1250 0.17
丸沼 (片品) 不検出 134 0.14
薗原湖 (沼田) 420 550 0.13
赤城大沼 (前橋) 1260 560 0.15
田代湖 (嬬恋) 650 620 0.14
奥四万湖 (中之条) 660 7100 0.35
榛名湖 (高崎) 不検出 2500 0.37
霧積湖 (安中) 49 900 0.18
碓氷湖 (同) 2600 660 0.15
荒船湖 (下仁田) 37 720 0.09
大塩湖 (富岡) 740 560 0.08
蛇神湖 (神流) 1670 95 0.11
神流湖 (藤岡) 75 510 0.06
草木湖 (みどり) 147 1450 0.20
梅田湖 (桐生) 179 400 0.11
◆河川◆
利根川 (みなかみ) 77 1480 0.33
同 (同) 71 1190 0.16
赤谷川 (同) 24 640 0.12
桜川 (川場) 173 3700 0.43
片品川 (片品) 38 1100 0.19
同 (沼田) 18 110 0.13
同 (沼田など) 30 1330 0.13
厳洞沢川 (草津) 不検出 950 0.13
吾妻川 (長野原) 不検出 1340 0.15
白砂川 (中之条) 12 1030 0.11
吾妻川 (東吾妻) 不検出 1970 0.20
名久田川 (高山) 215 420 0.11
吾妻川 (渋川) 153 1790 0.15
利根川 (渋川) 39 590 0.11
滝沢川 (吉岡) 206 1690 0.09
利根川 (前橋) 55 280 0.08
同 (玉村) 112 145 0.08
長井川 (高崎) 126 950 0.19
烏川 (高崎) 77 460 0.20
碓氷川 (安中) 106 2000 0.23
同 (高崎) 38 470 0.11
鏑川 (富岡など) 17 330 0.12
同 (高崎など) 不検出 58 0.07
井野川 (高崎) 59 610 0.09
染谷川 (榛東) 142 560 0.08
牛池川 (前橋) 115 320 0.07
井野川 (高崎) 68 225 0.08
烏川 (高崎) 67 340 0.07
神流川 (神流) 不検出 240 0.09
同 (藤岡など) 不検出 300 0.09
同 (埼玉上里) 不検出 250 0.08
利根川 (埼玉本庄) 22 460 0.09
赤城白川 (前橋) 108 320 0.10
桃の木川 (同) 27 310 0.10
荒砥川 (同) 不検出 204 0.07
粕川 (伊勢崎) 46 161 0.07
広瀬川 (同) 24 350 0.07
早川 (伊勢崎) 370 470 0.10
同 (太田) 99 205 0.10
石田川 (同) 不検出 270 0.08
同 (同) 85 180 0.09
休泊川 (大泉) 215 - 0.10
利根川 (千代田) 235 460 0.11
小黒川 (桐生) 340 3100 0.31
渡良瀬川 (みどり) 86 330 0.11
同 (桐生) 98 1000 0.11
桐生川 (同) 110 420 0.10
同 (同) 198 580 0.08
鶴生田川 (板倉) 370 310 0.11
谷田川 (板倉など) 300 610 0.07
注)底と岸の土壌から検出された放射性セシウムの値の単位はベクレル(1キロ当たり)。不検出は検出限界値以下。放射線量の単位はマイクロシーベルト(毎時)。川は左岸、右岸での計測値のうち高い数値を掲載
毎日新聞 2012年1月14日 地方版