白鵬の慎重な土俵が続いている。一番一番の相撲を見てみると、少しずつ冒険はまじるものの、一時の成り行き任せと思わせるところは全く影を潜めてしまった。
どう言ったら一番正確なのか、言葉に迷うが、抑制の効いた側面を存分に見せるようになってきた。それでは追いかける方が始末に困るではないかと言いたくなるところなのだが、実のところ、始末に困る横綱になってきた。
そこへもってきて、いつからそうなったのか、最近、横にかわす攻めや、攻めの方角を転換する攻撃が多くなったことに気づかれないだろうか。真正面からの攻めや防御でさえ防ぎきれないところに、縦の方角をまじえられたとすれば、その効果のほどは、革命的なものになるに違いない。
その攻撃が現実になったのは、8日目だと思えばいい。相手に相撲を取らせないのだから、白鵬にこの利点を器用に用いられるとなると、かなり面倒なことになる。それをどうして防ぐかだが、白鵬には背中に回る十八番の攻撃があるから注意しろという以外にない。いずれにせよ攻撃側には面倒なことである。
把瑠都の好調が続いている。調子の良さだけでは片付けられないことは、9戦無敗勝ちっ放しということに表れているが、その内容にも明確に表れていることがある。それは、星取表に表れていることと少し違うことなのだが、今場所の把瑠都は、ほとんど相撲を取っていないということだろうか。
この事実はどう見たら良いのか。この力士の潜在能力が、力士が通常持っているものより桁違いに大きいので、相撲を取るまでもない。そんなことを筆にするのは申し訳ないが、潜在能力だけで半ば勝負はついてしまっている。その把瑠都が、相撲の能力だけでどこまで戦えるか。今場所の命題として大きなものだといえよう。 (作家)
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