岡山大病院を拠点に育児休業後の女性医師が医療技術を磨く場を提供、4年間で約70人を復職させた。女性の割合が高い産婦人科や小児科の医師不足解消につながる先駆的な取り組みで、全国の大学や自治体の視察も相次ぐ。センター長の片岡仁美・岡山大大学院教授(39)は「医師として成長を目指す女性を支えたい」と話す。
片岡教授は、女性医師が結婚や出産で医師を辞めてしまうことを防ぐ手立てを研究してきた。「全国の研修医で女性が占める割合は約3割。でも、岡大病院でみると、常勤医のうち女性は1割。女性医師が壁にぶつかっている」と強調する。
同世代の友人と話すと、悩みを打ち明けられた。「1~2年も休むと、医療技術が落ち、ミスを招かないか不安」「当直や急な呼び出しが多く、育児休業後も子どもの病気や保育園の送り迎えに対応できない」--。
そこで岡大病院に働きかけ、08年に週4日、日中だけ勤務できる制度を導入した。子どもが手を離れたら本格的な復帰につなげる狙いだ。気管への挿管や不整脈対処法、超音波検査など臨床で必要な技術を練習するコースもそろえた。さらに同じような制限勤務を認める県内の病院も募った。
その後、週1日からの勤務を可能にするなど改善を進め、当初は5人だった利用者は20人まで膨らんだ。“イクメン”の男性医師1人も制度を利用している。実際に本格復帰を果たした女性医師が相談役になって、復職に向けたプラン作りなどにも乗り出している。片岡教授は「育児経験は人間的な温かさを医療現場にもたらす。理想的な復職支援の仕組みを作りたい」と強調する。【井上元宏】
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名称は岡山名産のマスカットにちなみ、岡山らしさと一粒一粒が集まれば大きな力になるという意味を込めた。岡山大大学院医歯薬学総合研究科内にあり、スタッフ4人(〓086・235・6963)。
毎日新聞 2012年1月17日 地方版