男性の遺体が見つかったアパート(奥左)。局部は切り取られていた=16日午後1時ごろ、東京都昭島市【フォト】
平成版「阿部定事件」か−。16日午前10時10分ごろ、東京都昭島市福島町にあるアパートの1室で「血まみれの男性が死亡している」と110番通報があった。警視庁昭島署員が駆け付けると、全身を刃物で刺され、局部が切り取られた男性がベッドの上で倒れており、すでに死亡していた。同庁捜査1課と同署は殺人事件として捜査を始めた。
痴情のもつれか、それともすさまじい怨恨(えんこん)が原因か。東京都昭島市で猟奇的殺人事件が発生した。
昭島署などによると、死亡していた男性は、この部屋に住むタクシー運転手の矢口行(こう)さん(49)。
矢口さんはアパートの1階に住んでおり、玄関口から右手方向の6畳洋間でベッドにあおむけに倒れていた。左胸や首、腹など体の前面4カ所に刺し傷や切り傷があり、全裸だった。
異様だったのは、局部が切り取られ、べッド近くの床に転がっていたことだ。
室内でベッド以外に大きな血痕などはなく、刺されたのはベッド上とみられる。凶器とみられる文化包丁は隣の4畳半で見つかった。捜査関係者によると「死後2日以上は経過しているようだ」という。
矢口さんが約1週間前から無断欠勤していたため、不審に思った会社の上司がアパートを訪問。事件が発覚した。
矢口さんは独身で1人暮らし。金品が奪われたかどうかは不明で玄関は施錠されていなかったという。
矢口さんのアパートには女性が出入りしていたとの情報もあり、警視庁は交友関係なども含め慎重に調べを進めている。
今回の事件で思い起こされるのは1936年、東京都荒川区で起きた「阿部定事件」。仲居の阿部定が性交中に愛人男性を絞殺し、局部を切り取って持ち歩いた。
杏林大学医学部教授(法医学)の佐藤喜宣氏(62)は「恨みや嫉妬など、殺意を持った第三者が矢口さんの胸や腹を刺し、抵抗力を失わせて局部を切り取ったとみるのが普通では」と推察。「局部を切り取っただけでは致命傷にはなりづらいため、他の傷が致命傷になった可能性が高い」と指摘した。
現場はJR青梅線「東中神駅」の約1キロ南。民家や工場が立ち並ぶ地域だ。
(紙面から)