'12/1/17
福島事故の拡散予測、国内公表前に米軍伝達 文科省
東京電力福島第1原発事故で発生3日後の昨年3月14日、放射性物質の拡散状況を予測する緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)による試算結果を、文部科学省が外務省を通じて米軍に提供していたことが16日、分かった。
SPEEDIを運用する原子力安全委員会が拡散の試算結果を公表したのは3月23日。公表の遅れによって住民避難に生かせず、無用な被ばくを招いたと批判されているが、事故後の早い段階で米軍や米政府には試算内容が伝わっていた。
国会が設置した事故調査委員会(委員長・
渡辺氏は「(事故対応を)米軍に支援してもらうためだった。(国内での公表は)原子力災害対策本部で検討していたので遅くなった」と釈明した。
SPEEDIは放射性物質の放出量や気象データから拡散状況を予測するが、今回は放出量が把握できず、本来の使い方ができなかった。だが文科省や原子力安全委員会、経済産業省原子力安全・保安院は、放出量を仮定するなどしてそれぞれ試算。原発の北西方向に放射線量が高い地域が広がるなど、実際と同様の傾向が出ていた。
昨年末に公表された政府の事故調査・検証委員会の中間報告によると、3月12日に保安院は「信頼性が低い」と記載した上で試算結果を官邸に送ったが、官邸職員は参考情報にすぎないと考え、当時の菅直人首相に伝えず、避難に役立てられなかった。中間報告は「放出量を仮定した計算結果が提供されていれば、より適切な避難経路を選ぶことができた」と指摘した。