東日本大震災の被災地の小中学校に、オルガンやティンパニ、木琴など多数の楽器が夕張市など北海道内から贈られた。被災地を支援している夕張出身のボランティアらが市教委などにかけ合い、学校統廃合で不必要になった楽器を提供してもらった。夕張にない楽器は音楽教室などが協力し、東北までの運搬は運送業者たちのネットワークが無償で引き受けた。2学期が始まった被災地の学校で、子どもたちが新たな音色を奏でている。
札幌市のマッサージ師、高木明美さん(47)らは震災発生直後に災害ボランティア・グループ「チーム高木」を結成。支援物資の収集や配送、炊き出しなどに取り組んできた。
そうした中、被災地では津波で楽器が流されたり、泥をかぶったりして音楽の授業やクラブ活動に支障を来している学校があり、一方で愛用の楽器を置いたまま放射能汚染地域から避難した子どもたちがいるのを知った。
児童数が減っている夕張市では5年前の財政破綻(はたん)発覚後、7校あった小学校を今春までに市内1校に統廃合し、余った備品は廃校舎に保存していた。
チーム高木のメンバーで夕張市出身の佐藤さつきさん(50)は「要らなくなった楽器もたくさんあるはず」と6月から市教委にかけ合い、「被災地支援に協力する」と市教委も無償提供を快諾した。
高木さんらは福島、宮城、岩手各県の自治体などに状況を聴き、必要な楽器のリストを作った。夕張市教委も今年3月に廃校になったばかりの旧夕張小や旧若菜中央小の音楽室などに「廃棄処分」扱いで眠っていた、まだ新しいオルガンや木琴、鉄琴、アコーディオン、ティンパニ、大小太鼓、リコーダー、ギター、マリンバ、トライアングル、タンバリンなどを夏休み中に整理し、計83台を用意した。
被災地からの要望はあったものの、夕張市側で準備できなかった電子ピアノと電子オルガン2台ずつ、ピアノ1台、シンセサイザー、アンプなどは、道内の音楽教室や楽器販売会社が提供してくれた。現地までの運送費は楽器輸送の老舗・北海小型運輸(高野徹社長、本社・旭川市)など全国の中小トラック運送業者で組織する日本ローカルネットワークシステム協同組合連合会が負担してくれることになった。
こうして集まった楽器は夕張の83台と合わせて計91台。新学期に間に合うようにと8月中に、福島県いわき市、宮城県石巻市、山元町、岩手県大船渡市の31小中学校に届けられた。
木琴2台とオルガン1台を受け取ったいわき市立平第四小の田中勝哲校長は「浪江町や大熊町など双葉郡から避難してきた子どもたちも加わって児童数が増えたため、楽器の支援はありがたい。子どもたちはいただいた楽器を使い、今月末の地区音楽祭に向けて一生懸命に練習しています」と喜ぶ。
佐藤さんは「夕張では私の父も含め、炭鉱事故のたびに全国からたくさんの励ましや支援をいただいてきました。困ったときに助け合うのは当たり前。じっとしていられなかった」と話している。(本田雅和)