野田改造内閣の目玉として入閣した岡田克也副総理兼一体改革・行政改革担当相が積極的に発信している。国会議員の歳費や政党交付金の削減を打ち上げ、野田佳彦首相が「政治生命をかける」消費増税を推進するための「身を切る覚悟」を示した。ただ、野党側は政府に入った岡田氏とは協議に応じない姿勢で、現時点では改革推進の「象徴的な存在」にとどまっている。【野口武則、念佛明奈】
「公務員、政治家に対する厳しい声は叱咤(しった)激励だ。結果を出さなければいけない」。岡田氏は16日、内閣府職員へのあいさつで、行革への意欲を強調した。
だが、この日の野党へのあいさつ回りで早速壁に当たった。「政党間協議の話を副総理の立場で発言するなら、あなたが全部(政府・与党の方針を)決めるのかとなる」。自民党の大島理森副総裁は16日午前、国会内の自民党役員室を訪れた岡田氏にクギを刺した。
前日のNHKの番組で、国会議員の歳費削減に意欲を示した岡田氏は「個人的な考えだ」と弁明したが、石原伸晃・自民党幹事長は「世間は『岡田内閣』だと見ているから慎重にした方がいい」と大島氏に同調。会談は重苦しい雰囲気のまま約5分で終わった。
公明党の山口那津男代表も16日、岡田氏が消費増税の前提として国会議員歳費を8%以上削減する考えを示したことについて、記者団に「立法府の課題であり、行政府の方から数字まで言及するのは行き過ぎではないか」と不快感を表明した。
岡田氏は菅直人政権での幹事長時代、「菅氏抜き大連立」を模索する大島、石原両氏とひそかに会談を重ね、菅氏の退陣と引き換えに特例公債法の成立や子ども手当見直しなどで合意した経緯がある。首相は岡田氏に野党とのパイプ役を期待するが、石原氏は「幹事長同士なら話がしやすいが、政府だからなかなかお会いすることもできない」と発言。岡田氏を協議の相方とはみなさない考えを示した。
藤村修官房長官との役割分担もはっきりしない。岡田氏は国政全般について首相に助言するが、重要政策を取り仕切るのは官房長官の仕事。藤村氏は同日の記者会見で「調整が必要だ」と語った。
岡田氏はまた党行政改革調査会長として、特別会計見直しや国有財産売却を盛り込んだ行政構造改革実行法案を議員立法で国会に提出する準備を進めてきた。調査会長退任で、党側の取り組みが減速する恐れもある。
毎日新聞 2012年1月17日 東京朝刊