16、17日付の朝日新聞などで、西日本新聞社が環境活動家・田中優氏に執筆を依頼した出版企画(2009年)に絡み「原発批判などの記述の削除を要請し、出版自体も見送られた」との報道がありました。報道では「地元電力会社との関係に配慮した自主規制ではないか」との指摘がなされています。弊社の見解は以下の通りで、指摘のような事実は一切なく、極めて遺憾です。
西日本新聞社は「報道の公正、真実を貫く」ことを社是とし、特定の株主や地元企業などに配慮して報道を自主規制したり、出版を差し止めたりすることは一切ありません。九州電力の「やらせメール」など一連の原発問題でも、政府や電力会社のあり方を問うキャンペーン報道を続けています。こうした姿勢は今後も堅持します。
今回報道された出版企画で、記述の一部削除を要請したこと、結果的に出版に至らなかったことは事実です。社内審査の過程で、玄海原発のプルサーマル発電や郵便貯金に関する記述などについて説明不足や論理の飛躍があると考え、最終的に「責任ある報道機関として出版するのは難しい」と判断したためです。
社内審査では、九州電力との関係に配慮する議論などは一切なく、田中氏には削除をいったん受諾していただきました。しかし、昨年12月に企画自体が中止となったことで田中氏にご迷惑をおかけしたことはあらためて、おわびいたします。
朝日新聞の取材に対し当初「お答えしない」としたのは、取材の意図が判然とせず、「電力会社と地元紙の間には不透明な関係がある」というような先入観で記事にしようとしている印象を受けたからです。問い合わせなどには応じており、取材を拒否したわけではありません。
また報道では、出版企画とは関係のない弊社と九電の株所有関係などの記述がありました。西日本新聞は九州・福岡を本拠地とする地方紙であると同時に、地域の暮らしを守り、社会、経済、文化などの発展のお手伝いをする役割も担っていると考えます。地元企業との協力関係は長年の歩みの中で育んできたものです。今回の報道がこうした私たちの歴史や活動を批判するものであれば看過できません。
今後も公正な報道に努めてまいります。
西日本新聞社
=2011/12/18付 西日本新聞朝刊=