君が代の起立斉唱命令を巡っては最高裁が昨年5月に「合憲」の判断を示しており、今回は命令違反を理由とする具体的処分の妥当性が争点となった。戒告を超える懲戒処分の違法性を認めたのは、不起立を「やむにやまれぬ思想・良心の発露だ」とする教職員側の主張を一定程度酌んだといえる。
公務員の処分の在り方については、77年の最高裁判決が「社会観念上著しく妥当性を欠き、裁量権を乱用したと認められる場合に限り違法」と判断しており、基本的に処分権者に幅広い裁量を認めている。小法廷は77年判決を踏襲しつつ、不起立行為が入学式と卒業式で起きる度に、累積で処分が重くなる都側の運用を問題視。桜井龍子裁判官は補足意見で「多大な不利益をもたらす減給や停職を一律に機械的に科すことは行為と不利益の均衡を欠く」と指摘、行き過ぎた処分に警鐘を鳴らした。
戒告処分を受けた多くの教職員は敗訴が確定したが、弁護団は「良い先生であっても不起立行為だけで処分を受け続ける点が断罪された」と評価した。判決は、積極的に妨害するなどの行為がみられない限り、東京都教委などの処分権者に慎重な運用を求めたといえる。【石川淳一】
毎日新聞 2012年1月16日 21時52分(最終更新 1月16日 23時38分)