卒業式などで日の丸に向かって起立せず、君が代を斉唱しなかった公立学校の教職員などを停職や減給、戒告とした東京都の懲戒処分をめぐる3件の訴訟の上告審判決で、最高裁第一小法廷(金築誠志裁判長)は16日、「戒告は基本的に裁量権の範囲内だが、それより重い減給・停職は過去の処分歴などを慎重に考慮する必要がある」との初めての判断を示した。
3件の訴訟を起こしていたのは計171人。うち、戒告処分を受けた168人については処分を取り消した二審判決を破棄して、全員の請求を棄却した。減給処分を受けた1人については、処分を取り消した二審判決を支持した。
停職処分を受けた残る2人のうち、1人の処分は取り消したが、もう1人は過去の処分歴を重視し、違法性はないとした一、二審判決の判断を支持した。
減給・戒告処分を受けた計169人をめぐる2件の訴訟では、昨年3月の東京高裁判決が「教員らの行動は職務怠慢ではなく、信念に基づいた真摯(しんし)な動機によるものだった」などと指摘。「懲戒処分まで科すのは社会観念上重すぎる。懲戒権の乱用だ」と判断していた。
最も重い停職処分を受けた2人の訴訟では、同月の別の東京高裁判決が「元教諭は過去に同様の処分を繰り返し受けており、社会観念上著しく妥当性を欠いているとはいえない」と判断していた。