最近の質問集

最近の質問にお答えします (Q&A)

 1.核内情報研究分野の研究概要を教えてください?
 2.核内情報研究分野の特色を教えてください?
 3.加藤教授はどんな先生ですか?
 4.研究費はどこから支援されていますか?
 5.卒業後の進路はどうするのでしょうか?
 6.スタッフのバックグラウンドは何をお持ちでしょうか?
 7.ERATOプロジェクトとは何ですか?
 8.大学院生の間に論文を出せますか?
 9.研究室の設備、機器、研究環境を教えてください?
10.ラボでは一日何時間働いていますか?休みはとれますか?イベントとかありますか?
11.大学院試験の競争倍率は高いでしょうか?入室前に必要な知識はありますか?
12.大学院生はアルバイトができますでしょうか?
13.研究テーマはどのように決められるのですか?
14.大学院生の所属はどこになりますか?
15.スポーツなどの行事は盛んですか?

1.核内情報研究分野の研究概要を教えてください?

 遺伝(ゲノム)情報の伝達は遺伝子配列に依存することは明らかですが、遺伝子を取り巻く環境、すなわちヒストンタンパクの特異的修飾を伴う染色体の構造変化も非常に重要であることが近年急速に明らかになってきました。このような染色体上での遺伝子発現調節の分子機構を解明する手段として、私たちは核内レセプターを用いて、生化学・分子遺伝学的アプローチにより研究を進めています。
 核内レセプターは低分子のリガンドと称される脂溶性生理活性物質(ステロイドホルモン・甲状腺ホルモン、ビタミンA・ビタミンD、コレステロール代謝体等)を受けとることで機能発揮するDNA結合性転写開始因子です。遺伝子発現調節の機構解明に核内レセプターを用いる意義は大きく2つあげられます。
 まず一つ目はリガンドの生理作用の作用点を分子レベルで明確にすることができます。つまり核内レセプター遺伝子を破壊(ノックアウトマウス作製)したり、核内レセプターと相互作用する転写共役因子複合体と呼ばれる構成因子群を同定することで、特異的な生理作用を示す組織、細胞、標的遺伝子が明確となるのです。またこれら分子の遺伝子に変異が生じると遺伝病が現れることは、これらのリガンドのバランスが崩れた際に生じる表現型の一部を反映することが明らかになりつつあります。最終的にホルモンや栄養素等のリガンドが体内でどの様に生命維持に働いているかがわかるわけです。
 二つ目は遺伝子発現機構の基礎となる転写反応に関して、どの様に染色体構造を調節しながら組織や時期特異的に働くかを明確にすることができます。核内レセプターの転写開始にはリガンドが必要となるため、転写反応を解析する上でリガンド存在の有無の比較によりON/OFFが可能になります。これは一般的な転写因子に比べると非常に実験しやすいからです。近年、この反応には染色体構造を調節する複合体やヒストン修飾酵素を含む複合体群が重要であることが判明しています。これらは核内で巨大複合体を形成していると推測されており、これらの機能は他の細胞内の情報伝達系と共有することが明らかとなっています。ゲノムの情報伝達機構において、私たちはこれらの巨大複合体群の同定やその機能解析は 極めて重要な課題と考えています。

2.核内情報研究分野の特色を教えてください?

 「実験する」。これが大前提ではありますが、研究を効率よく展開するためにコミュニケーションを最も大切にし、その上で社会性や人間性の教育を重視しています。すべての大学院生が研究者になることを望んではいますが、個人の意志を尊重し、その人に合わせて進めます。研究は単独では困難です。当研究室は様々な学部を卒業した大学院生・ポスドク・スタッフにより構成されていますので、研究内容はもとより、考え方や将来性などもディスカッションしています。また研究だけではなく、球技や登山、旅行、映画鑑賞など皆自分の趣味も充実させています。研究を楽しみ充実させるには、身近な生活環境を整えることも大事だと考えています。また研究を円滑に進めるため、試薬や抗体、プラスミドの他、培養細胞、マウス、ショウジョウバエ系統は集中管理し、誰でも使える仕組みになっています。

3.加藤教授はどんな先生ですか?

 まず人に熱いです。たとえると「日本古風的?昭和の親父的」な先生でしょうか。初対面では恐い印象をもつ方が多いようですが、話すと思いやりの優しさが伝わってきます。研究にも熱い情熱を注ぐ先生です。面白いことや刺激的なことは常に伝えてくれますし、幅広い知識からご自身の深い考えを話します。そこで「面白い」「つまらない」を瞬時に判断し、研究方向性を提案・指示します。また気遣いをもって個人の生活面も把握されています。飲み会の席では自ら席を立ち、できるだけ多くの学生と話をしています。これは研究室在籍者が多いことに現れていると思います。一方、スポーツでも?勝敗に拘り、ソフトボール試合はファーストを1軍で活躍しています。気力・体力・精神力全てを兼ね備えた「昭和の親父的」先生です。

4.研究費はどこから支援されていますか?

 現在、科学技術振興機構のERATOプロジェクト「加藤核内複合体」と共同で研究を進めています。一方で日本学術振興会や文部科学省の科学研究費をそれぞれのスタッフが獲得しています。また厚生労働省の科学研究課題、グローバルCOEプログラムにも参画しています。一部の大学院生やポスドクは日本学術振興会の研究費を獲得しています。

5.卒業後の進路はどうするのでしょうか?

 卒業後の進路は様々です。博士号取得後、研究室にポスドクやスタッフとして就職して研究を続ける人や、他大学の教授、講師や助教(筑波大学、九州大学、群馬大学、慶応大学、日本大学など)として勤めているOBが多いです。海外に留学(アメリカNIH、コロンビア大学など)した人もいます。研究の第一線にいるOBのネットワークも当研究室の特徴と言えます。
 また、博士課程後に企業(帝人ファーマ、中外製薬、武田薬品工業など)の研究職として就職するケースもあります。またベンチャーを起業するなど、個性的な人たちもいます。

6.スタッフのバックグラウンドは何をお持ちでしょうか?

 武山講師は分子生物学・生化学のバックグラウンドを持ち、ビタミンD合成酵素を世界に先駆けて発見するなど、脂溶性ビタミン・ホルモン分野の研究を続けています。さらに現在はショウジョウバエを用いた新たな実験系を構築し研究を進めています。北川特任講師は東大医学部出身で、内科医師としての経験の後、当研究室では疾患の観点からの生化学的解析を進めています。高田助教は京大理学部出身で、脂質代謝・骨代謝に関心を持って分子生物学的解析を進めています。大竹助教は、環境化学物質応答に関心を持っており、現在はユビキチン系や翻訳後修飾の観点からも研究を進めています。松本ERATOグループリーダーはノックアウトマウスのスペシャリストで、高次生命現象の解析を行っています。

7.ERATOプロジェクトとは何ですか?

 科学技術振興機構のプロジェクトとして、核内の生命現象を蛋白質複合体の観点から研究しています。分生研・核内情報研究分野とは、合同でセミナーおよび研究遂行を行っています。

8.大学院生の間に論文を出せますか?

 もちろん努力次第でチャンスは大いにあります。これまでに、大学院博士課程の在籍中に一流誌に主著者として論文発表した学生も多くいます (Nature, Science, Nature Genetics, EMBO Journal, EMBO Report, Mol Cell Biolなど)。ただし良い論文をまとめる上で、ある程度のハードワークは必要です。また大学院は将来研究者として成長していくための修行の場ですから、焦らずに基礎的な力をつけていくことが一番大切です。加藤教授からのメッセージの中にもあるように、大きな仕事は4〜5年じっくりと・・・でしょうか。

9.研究室の設備、機器、研究環境を教えてください?

 当研究室では通常の実験室の他、質量分析計専用の部屋、マウス飼育施設など、研究設備は充実しているといえます。また、最新の質量分析計(MALDI-TOF/MSやLC-MS/MS)や高性能のレーザー共焦点顕微鏡など、研究機器も充実しています。

10.ラボでは一日何時間働いていますか?休みはとれますか?イベントとかありますか?

 コアタイムの平日10:00~18:00は原則的にラボにいて実験をする時間となっています。それ以外の時間には、研究状況・個人の体力に応じて各自実験しています。また、教授の考えから、土日のいずれか週1日は休むよう奨励されています。ただ、「ハードワークなくして、いい論文は生まれない」というのも事実であり、修士・博士論文提出前、論文投稿時などはある程度根を詰めて仕事する必要があります。
 また、長期休暇(夏休み・冬休み)は1週間以上連続した休みを取ることが推奨されています。「やるときはやる、休むときは休む」というメリハリが教授の理念です。
 所内のソフトボール大会、研究室セミナーの演者の先生とのビアパーティーなどイベントもあります。研究室外との交流も非常に重要と考えています。

11.大学院試験の競争倍率は高いでしょうか?入室前に必要な知識はありますか?

 農学生命科学研究科大学院試験の競争倍率はその年の受験者数に依存します。しかし当研究室を第一志望で受験して、試験に合格した人で入室できなかった人はいません。
 また、入室後の知識については、バックグラウンドがさまざま(理学部生物科・化学科、農学部農芸化学系・水産系・林業系、薬学部、医学部など)な人が集まっているため、それほど必要とされません。生物・化学の一般知識程度で大丈夫です。やる気と体力があれば入室後に十分学んでいけると思います。

12.大学院生はアルバイトができますでしょうか?

 コアタイム外(平日10:00〜18:00)ではアルバイト可能です。実際に休日に家庭教師などアルバイトしている人がいます。日本育英会の奨学金や、博士課程では、グローバルCOEプログラムから若干のお金が支給され生活を工面しています。また、日本学術振興会に採用されている人もいます。

13.研究テーマはどのように決められるのですか?

 研究室の中は、テーマではなく、扱う技術や手法により3つのグループに分かれています。高次生命機能解析(遺伝子欠損マウス解析)グループ、ショウジョウバエ分子遺伝学的解析グループ、タンパク複合体精製グループです。研究室に入室する4月から約一ヶ月の間、新人はそれぞれのグループを見学し、誰がどのような研究をしているのか一人一人にじっくり話を聞きます。その後、希望をもとに教授およびスタッフとディスカッションを重ね、グループの配属、そして研究テーマが決定します。

14.大学院生の所属はどこになりますか?

 東京大学大学院、農学生命科学研究科、応用生命工学専攻です。基本的に修士課程は2年間、博士課程は3年間となります。

15.スポーツなどの行事は盛んですか?

 はい、ソフトボールを中心として色々なスポーツをしています。ソフトボールの他には、エアロビクスや、テニス、皇居の外周のランニングに行く人もいます。どれも好きな人が参加する自主性を尊重し、時間が空いたときに時々参加する事もできます。また、他の研究室とも交流する合同のバトミントン大会が開催される事もあります。
 また、一番のメインであるソフトボールは、応用生命工学・化学専攻(旧農芸化学)、分子細胞生物学研究所内の大会が年に3回開かれ、様々な研究室から毎年40チームほどが参加しています。核内情報はそれぞれの大会での優勝経験があり、試合では毎回研究室のメンバーが応援に駆けつけ、とても盛り上がります。研究に励む中での良いリフレッシュとなり、またメンバーの親睦、結束を深められる良い機会となっています。またこの農芸化学の大会は30年以上の伝統があり、活躍した大学院生の知名度は就職した後も学内で引き継がれたり、就職先でも再会等があり役立つことがあるようです。