JR松戸駅西口デッキに明るく軽快な音楽が流れる。歌うのは千葉県松戸市などがイラストレーターの協力を得て制作した「防犯萌(も)えキャラ・松宮アヤ」に扮(ふん)した同市在住の声優、萱沼千穂さんだ。「110番の日」の10日、アヤのテーマソングのCD発売を記念して開かれたこのミニライブには、首都圏各地からファンの若者が集まり、熱気に包まれた。
そもそも「萌え」とは、アニメなどのキャラクターに対する愛情や恋心に近い感情を表す若者の間で多用される俗語。「芽生える」という本来の意味も含まれていると言われ、05年に流行語大賞となったころから、次第に一般にも使われるようになっている。
これに注目した松戸市は、若い世代へのアピールを狙い、都内在住のイラストレーター、七六(ななろく)さんに「萌えキャラ」の創作を依頼。昨年6月「ミラクルピース」の掛け声と「誘導灯」から出る青い光を武器に防犯に取り組む15歳の萌えキャラが誕生した。
さっそく市は、市防犯協会連合会や松戸署と協力し、防犯ポスターに取り入れたところ人気は上々。市のホームページへ3日間で5000を超えるアクセスがあったほか、高齢化が問題になっていた防犯イベントには、若者などが詰めかけた。
萌えキャラ効果に驚いた市は同9月「交通安全萌えキャラ・神戸(かんべ)アミ」を誕生させたほか、同12月には「振り込め詐欺防止萌えキャラ・市城(いちじょう)アイ」も新たに創作した。アイは県警本部が製作した1万2000枚のポスターに登場し、県内の金融機関などに張り出されている。
同市生活安全課の金子公一専門監は「若者が防犯キャンペーンで熱心に活動してくれ、本当によかった。この調子でCDもヒットしたら、今年の紅白歌合戦に出場できるかも」と初春の夢を語っていた。【橋口正、写真も】
2012年1月11日