世界的な大都市となったソウルでは、一日平均650万人の市民が地下鉄を利用している。地下鉄は最も代表的な「市民の足」として必要不可欠な交通手段だが、先日は、駅で降りられなかったという乗客の抗議により逆走するといった事態まで発生した。本紙記者はこのほど、地下鉄の運転室に同乗し、地下鉄運行の現況について取材した。
先月20日午後6時38分、地下鉄2号線の市庁駅に入ってきた2352号車の運転室に乗り込んだ。ノ・ボンギュ運転士(47)は、運転室の前方に備え付けられた横60センチ、縦30センチのモニターを見ながら、プラットホームに設置されたスクリーンドア(プラットホームの線路に面する部分に設置された、可動式の開口部を持った仕切り。ホームからの転落や列車との接触事故を防止するために設置された自動ドア)がきちんと開いているかを確認する作業に余念がない。ノ運転士はホームにある40カ所のスクリーンドアが開閉する様子を毎回確認しながら「ドアが開きます」「乗下車確認」「引き続き進行」という言葉を復唱した。これは「指差し確認」と呼ばれるもので、乗客が乗り降りする際のトラブルを防ぐために義務付けられている。
「後続列車との間隔が開き過ぎているため徐行せよ」。午後6時45分、乙支路3街駅に到着すると、中央官制センターから緊急の無線連絡が入った。ノ運転士は電車の速度を時速70キロから40キロに落とした。同運転士は「後続列車は時速80キロで走行するよう命じられているはずだ。通勤・退勤時間は混雑するため、列車の運行に支障を来たす」と話した。10両編成の2352号車には、通常600人ほどが乗車するが、同日は蚕室駅から舍堂駅の区間で乗車人数が2500人を超えた。500人が乗り降りした宣陵駅では電車が左右に揺れるほどだった。
蚕室鉄橋を通過して蚕室駅に入ると、列の最後尾が見えないほど多くの乗客がホームで待っていた。ノ運転士は「年末である上、退勤時間なので、蚕室駅から舍堂駅までの運行はまさに戦争」と話した。混雑した車内では、足の置き場がないため、あちこちで不平を口にする声が聞こえた。
「おい、てめえ。ドアを開けろ!」午後7時27分、教大駅で中年女性が運転室に向かって罵声を浴びせた。案内放送をしてからドアを閉めたものの、乗客が多過ぎて乗車できず、これに腹を立てたのだ。ノ運転士は「中には電車に乗れなかったと言って運転室につばを吐き掛ける乗客もいる」と話した。同日は「駅への逆戻り」を促す非常電話は掛かってこなかった。だが、ノ運転士の脳裏には、以前酒に酔った乗客に「お前は一体どこにいるんだ?顔を見せろ」と、非常電話を通じて怒鳴られた記憶が鮮明に焼き付いていた。泥酔した客は運転室までやって来て、ドアをたたきながら大声を張り上げたという。