韓国古美術協会のキム・ジョンチュン会長(63)が、大量の盗掘品を取引したとして検察の捜査を受けたことにより、キム会長と協会内部の軋轢(あつれき)や、盗掘団と結びついた古美術業界特有の問題点などが改めて浮き彫りになっている。
古美術協会は1971年、古美術商たちが中心となって設立した団体で、現在約700人の会員を有し、専門の鑑定人約60人が活動している。キム会長は97年、第18代会長に就任した後、15年にわたって会長を務めている。古美術協会の事務所は、ソウル市鍾路区慶雲洞でキム会長が運営する「多宝星古美術展示館」の中に置かれている。
韓国の古美術品市場の取引規模は、年間数百億ウォン(100億ウォン=約6億6800万円)に上ると推定されているが、古美術品専門の鑑定機関は事実上、韓国古美術協会しかない。同協会による鑑定書が、時価を決める絶対的な基準となっている中、キム会長が中心となっている同協会の鑑定をめぐり、雑音が絶えない状況だ。キム会長はこれまで数回にわたり、違法な文化財取引疑惑をめぐって検察・警察の捜査線上に浮かんだが、決定的な証拠が見つかったことはない。
だが現在、捜査を行っているソウル北部地検刑事6部は、キム会長が盗掘団のメンバーとされるK容疑者(73)=逮捕済み=から、5000万ウォン(約334万円)相当の盗掘品を買い取り、客に販売したとされる容疑について一部確認したという。また、さらに大規模な盗掘品取引疑惑についても証拠をつかんだとのことだ。検察の関係者は「盗掘団メンバーのK容疑者の供述や、K容疑者の自宅で高麗時代から朝鮮王朝時代の陶磁器など5億ウォン(約3300万円)相当の盗掘品が見つかったことなどを総合すると、キム会長との盗掘品の取引額はかなり大きな額に上る可能性もある」と話した。
キム会長は以前にも、さまざまな盗掘品の取引や、虚偽の鑑定に関与した疑惑が浮上した。2010年には、中国吉林省集安市で盗掘された高句麗時代の古墳の壁画を、金を払って韓国に持ち込んだとして警察の捜査を受けたが、はっきりした証拠は見つからなかった。当時、中国政府の関係者が韓国文化財庁に書簡を送り「中国で逮捕され、すでに処刑された実行犯らが、韓国古美術協会の幹部から教唆(きょうさ)され、犯行に及んだ、と供述した。行方不明になった高句麗時代の壁画は韓国にあると思う」として、返還を求めた。