朝鮮王朝を底辺で支えた下級官僚の世界

 朝鮮王朝時代の宮中には、15歳以下の幼い年齢で任用され、16歳になると定年退職しなければならない職業があった。「中禁」という職業で、時代劇で「王様のおなり」と叫んでいる人々のことだ。君主が出掛ける際に道を整理し、科挙の試験の合格者名簿を届けるのが主な任務だ。よく通る声が命なので、変声期に入ると別のポストに移された。

 本書は、朝鮮王朝時代の宮殿や官衙(かんが=官庁)に置かれた微官末職(地位の低い官職)、さらに下級の職業の世界にスポットを当てている。外国語の通訳者に当たる「通事」。「○○のお出ましです」と言って官吏の先払いを担当した「丘史」。司憲府(官職者の違法行為を監督する官庁)に所属し、風俗や禁令の違反者を取り締まる「所由」。馬の健康管理を担当した「馬医」。各種の帳簿管理や測量を受け持つ「算員」。宮中で水時計を見て時間を知らせていた「禁漏官」。朝鮮王朝を通して937回出現し、3989人に害を与えたトラを捕まえるために起用された「捉虎甲士」。命を懸けて敵陣でスパイ活動を行った「間諜」。塩を作っていた「塩干」。物資を運ぶ漕運船の船頭を務めた「漕卒」などだ。

 これらの人々は朝鮮の官僚制の最末端、いわば毛細血管で、宮中の官吏を除けば、一般の人々が出会う「公権力の顔」だった。そのため、時には両班(朝鮮時代の貴族階級)と一般の人々の間に挟まれてののしられることもあり、困難も多かった。「丘史」の場合、主な役割の一つは、主人が過ちを犯したとき、身代わりとして自分が監獄に行ったり、むちで打たれたりすることだった。司訳院に所属していた通事たちは、1日24時間、自分が専攻する外国語だけを話さなければならず、5回以上朝鮮語を使った場合には摘発・解任された。

 しかし、小さくても権力は権力。不正も少なくはなかった。地方官の交代時、引き継ぎの帳簿整理を担当する算員が、早く赴任したいと願う後任官吏からわいろを受け取るケースや、使臣に随行する通事が私的取引で一財産を築くケースなどがそれだ。このほかにも、広大(民俗芸能を行っていた下層民)、チョムジェンイ(占い師)、マンナニ(首斬り役人)など、朝鮮王朝を底辺で支えた階層の物語が取り上げられている。320ページ、1万6500ウォン(約1100円)。

金翰秀(キム・ハンス)記者
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