西日本新聞

動物ニュース

2012年01月12日掲載 福岡 / 昆虫

チョウ「アサギマダラ」 香春→屋久島を飛行 400キロ 

 ●観察 田中さん夫妻「感激」
 
 長距離を移動することで知られるチョウ「アサギマダラ」を観察している香春町鏡山の田中操さん(70)、邦子さん(71)夫妻が、昨年10月に自宅で標識を付けて放った個体が、約400キロ離れた鹿児島県屋久島町で発見された。連絡を受けた夫妻は「海を越え、これほどの距離の移動が確認できてうれしいし、感動です」と話している。

 
 アサギマダラは本州から南西諸島、台湾など広範囲に分布。春から初夏にかけて北上し、秋には南下する。
 
 夫妻は3年前、図書館でたまたま目にした本でアサギマダラを知り、「小さな体で長距離を飛ぶことに感激した」と関心を持った。南下する際には内陸部を飛び、好んで蜜を吸うと聞いたことからフジバカマを自宅の庭に植えて観察。最初の2010年秋には数匹を確認しただけだったが、11年秋には多くの姿が見られた。
 
 渡りのルートなどを確認するため油性ペンで羽に観察地と日付、観察者などの標識を記入するマーキングを実施。11年には夫妻合わせて300匹近くに標識を書いた。
 
 このうち邦子さんが10月29日に「カワ 10/29 K・T」などと記したアサギマダラが、12月15日に屋久島で見つかった。花の蜜を吸っていたところを、現地で観察している久保田義則さん(71)が確認。マーキング情報などを集約する「アサギマダラを調べる会」(京都府宇治市)を通じて連絡があった。
 
 他の観察者がマーキングしたアサギマダラを発見したことは何度もあるが、自分たちが標識を付けたチョウが確認されたのは初めてという田中夫妻。しかも、久保田さんは福岡県広川町出身で添田町に兄弟や親類がおり、「アサギマダラが、思わぬ人のつながりをもたらした」と喜びもひとしおだった。
 
=2012/01/12付 西日本新聞朝刊=