水野解説:原発1号機で溶け落ちた燃料は
メルトダウンを起こした東京電力福島第一原子力発電所の1号機で、事故から8か月以上経って、新たに核燃料の深刻な事態が明らかになりました。
溶け落ちた燃料が格納容器の底にあるコンクリートを溶かし、最悪の場合、底まであと37センチの深さに迫っている恐れがあるというのです。
1号機で何が起きているのか?水野解説委員が解説します。
福島第一原発の1号機から3号機で、溶け落ちた核燃料がどんな状態になっているのか。きょう、東京電力や、研究機関が解析結果を明らかにしました。
このうち1号機についての東京電力の解析結果です。
最も厳しい評価をした場合、1号機については100%の燃料が溶け落ちて、原子炉の底を突き破って相当量が格納容器に落下したと推定しています。
高熱の核燃料は、格納容器の底のコンクリートを溶かします。コンクリートの厚さは、最大で2.6メートル。さらに鋼鉄の板で覆われています。
燃料は最悪の場合、このコンクリートの表面から65センチの深さまで到達。最もコンクリートの薄いところでは、鋼鉄の板まで37センチに迫っているということです。
また2号機と3号機も、それぞれ57%と63%の燃料が溶け落ちて、その一部が格納容器に落下したとしています。
格納容器の底は、今どうなっているのか。
東電は記者会見で、「格納容器の底部に(注水した)水があるので、全体として冷えているという結論に関しては、これまで通り」と説明しました。
東京電力は、原子炉と格納容器の温度は、今月21日現在でいずれも100度以下になっており、溶けた燃料は注水した水で冷やされコンクリートの浸食は止まっていると評価しています。
◆ではここから、水野倫之解説委員に聞いていきます。
1号機で格納容器の底のコンクリート65センチ浸食、これをどう受け止めればよいのでしょう?
水野)まず押さえておきたいのは、いま原発が急に危険な状態になってきたというわけではない、ということです。
これまでの解析でも、溶けた燃料が格納容器にまで落ちていることはわかっていましたが、東京電力は、それは一部にとどまっていると説明してきました。ところがあらためて解析した結果、1号機に関しては最も厳しい評価をすると大部分の燃料が格納容器に落ちて、コンクリートも溶かしていて、最も深いところで65センチにまで達していると言うことなんです。
格納容器の底の部分は最も厚いところで2.6mのコンクリートで覆われていますが、あと37センチで格納容器も突き破るところだったんです。
本当によくここで止まってくれたなという感じがします。あらためて過酷な事故だったということが言えます。
◆これからさらに浸食が進むということはないんですか?
水野)それはない、と東京電力ではみています。
その根拠としては、
1.原子炉に注いだ水が格納容器の底のコンクリートから3~40センチ程度はたまっていて、燃料はある程度冷えているとみられること。
2.コンクリートが溶けると二酸化炭素が発生しますが、格納容器内の二酸化炭素の濃度は現状安定していて増えてはいないということ、などです。
このまま冷却が進むのであれば、これ以上浸食が進むことはないと思われます。
◆政府は年内に「冷温停止状態」達成を目指していますが、達成出来るのでしょうか?
水野)そこが最大の焦点になってくると思います。
政府は冷温停止状態の条件として2点あげていて、
1つは原子炉の底の部分の温度が100度以下になること、
それから、
放射性物質の放出が大幅に抑えられていること、です。
しかし大部分の燃料が格納容器に落ちているのであれば、原子炉の底の温度にどれだけの意味があるかということになってきます。原子炉の底にはほとんど燃料がないわけですから。
今最も知りたいのは、落ちた燃料の温度はどうかということですが、これは現状ではわかりません。
東電は格納容器内の温度が40度なので冷えているだろうと見ています。
しかしはたしてこうした状況で冷温停止状態ですと言われて、福島県の人たちが納得するでしょうか。
そもそも冷温停止というのは、普通の、原子炉も格納容器も壊れていない原発が100度以下になったときのことを言うのであって、今回のように壊れてしまった原子炉に対してあてはまることばではないと思います。
やはり東電や政府は炉内の状況をもっと詳しく説明する必要があると思います。
今回のシミュレーション結果について専門家の中にはこんな意見もあります。
(原子力安全基盤機構技術参与 阿部清治さん)
「きょうの解析が間違っているとは思いませんが、それで十分だとも思っていません。こういうものは一つだけの解析でちゃんとした答えが出るのではなく、いろんな角度から解析を積み上げなくてはいけない。きょうはそのための第一歩であったということです」
◆解析方法は1つではないと言うことでしょうか?
水野)解析に使うソフトには何種類かあります。極めて放射線が強いために現状では、原子炉の中を見ることが出来ないので、炉内の状況をより詳しく推定していくためにも、多くの計算結果を付き合わせていく必要があります。
これは今後の廃炉作業にも影響してきます。専門家の分析では事故が収束した後、燃料を取り出して廃炉するのに少なくとも30年はかかると見ています。
ほとんどは遠隔操作で行うことになりますが、そのためにもどこに燃料があるのかという情報が重要になってきます。それを知るためにもシミュレーションが極めて有効で、東京電力は炉内の材料や構造の詳しいデータを出して、より詳しいシミュレーションが出来るようにしていく必要があると言えます。
投稿者:かぶん | 投稿時間:07:31
| カテゴリ:ニュース解説
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コメント(6)
今更…な正式発表ですね。
12/16の冷温停止、の発表に合わせての都合あわせの発表なんでしょうか。
福島県の人だけでなくて、
日本中の人が納得していないと思います。
本当に核燃料は、格納容器の中にとどまっているんでしょうか…
二号機・三号機も同じような状況ですよね…
原子炉の中に窒素の注入が始まったそうですが、
水素の濃度はなぜ高いのですか?
投稿日時:2011年12月02日 13:06 | mamakomama
こういう状態になっている核燃料を取り出すとか、どこかに搬出するとか、そういうことが出来るのかどうか、それを聞きたい。
取り出せたとして、この土地を後に何かに利用できる可能性があるんでしょうか。膨大な費用を掛けて、それをする必要があるのでしょうか。
投稿日時:2011年12月03日 23:49 | ヌワラエリア
質問で〜す。水野さんも出演されていた番組で、1号機は震災当日に既にメルトスルーしていたんだとのことでしたが、1,450度まで計測した炉内計装管かもの直径5cm位の穴から抜け落ちた際には格納容器の底はどうなっていたんでしょうか?
コメント子などは2,800度を超す温度など想像することも出来ませんが、水なんぞがあったら水蒸気爆発とかでドエリャ〜ことになるとどこかで伺ったような気がしますし、何もかんもを短時間で溶かしてしまうような気がするんですけれども、落ちてからしばらくは冷却できなかったんでしょ、でしょっ?
釜から水がダダ漏れだとか言っていたようですが、ここから温度計とか放射能計測器とかを突っ込んでみるとか出来ないんでしょうかね〜?? ダダ漏れしている水の状態とか、釜の底の状態とかからでも、何かしらは分かりそうな気がするんですが素人の赤坂見附なんでしょうかしら?
あとですね〜、地下には大量の汚染水があるそうですが、釜の底の辺の汚染量とか温度とかは調査できているんでしょうか?
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それにしても、格納容器の底にも分厚いコンクリートがあるような図になっていますが、もっとましなもので埋めておいてくれればよかったな〜と思っちゃいましたです。
今回の東電の発表をどなたかが検証するために、シミュレーションのパラメータを教えておいて頂けませんでしょうかね、役に立たないかも知れませんですが・・・
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投稿日時:2011年12月04日 00:30 | 熊:東電の放言=NHKの真実?
事故当時のプラントデータ、特に水位については、正常値を示していたのかあるいは、実際とはかけ離れた値を示していたのかは、専門家の間でも意見が対立するところである。4月に東電や原子力安全・保安院が実施した解析では、地震直後からIC(非常用冷却装置の一つ)が起動できなかったという前提で、その後の注水が成功したケースと失敗したケースについての条件で実施している。11月30日の保安院での審議会(東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故の技術的知見に関する意見聴取会)では、地震直後のICの動作を肯定しており、この時点での東電の解析では、1号機はMCCI(格納容器での溶融炉心ーコンクリート相互作用)が起きており、2,3号機は圧力容器内に炉心はとどまっているとの結果であった。それ以外に、最悪ケースとして、「MCCIを前提とした(4月時点での解析結果を入力値としたと推定される)」解析も実施され、その結果によると、1~3号機は程度の違いこそあれ、全ての号機でMCCIが起こっているとしている。(マスコミは、この最悪ケースだけを報道しており、悪意さえ感じられる)但し、これらの解析では、事故直後から保安院に通報していた情報に記載されている非常用冷却装置の動作と一時的な水位の回復、消火栓を用いた淡水の注水などについては、まったく考慮されていない。また、MCCIが発生したにしては、状況的につじつまの合わない事象がいくつかある。①東京電力の水位計の誤表示する原理の考え方に疑問が持たれること②1号機の上空からのサーモモニター(東電発表10月15日、10月13日撮影)では、炉心部分の温度が高く、明らかに圧力容器内に残存していると考えられる燃料集合体からの発熱が見られること(「東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故の技術的知見に関する意見聴取会」では3号
機のモニターのみを報告)③MCCI反応時に発生すると考えられる有意量のCO2が確認されていない④炉心溶融物があるにしては、格納容器の放射線強度があまりにも低すぎる(福島第1原発1号機の原子炉格納容器内の気体約25m3を取り出して測定したところ、1cm3当たり約37Bqの放射性セシウムが検出された。東電が当初最低ラインとして想定していた1000分の1程度(当初は4万Bqを想定して測定したが、検出値未満であったため、レンジを変えて測定を実施)の低い値であった(7月29日東京電力発表)。また、8月9日に採取した2号機の格納容器の気体のサンプリングの結果では、1Bq以下であるとの発表があった)こと⑤圧力容器温度が100℃近くあること(炉心燃料残っていなければ、この温度にはならない)
さらに、今回の解析を担当した日本原子力安全基盤機構は、実測パラメータが少ないことから、圧力・温度の比較に加え、モニタリング値等総合的な判断が必要であり、また、水位計の測定値(定量性はなくとも、変曲点には意味があるはずだ、と締めくくっている。つまり、解析結果の実証には、さらなる実測パラメータの検証が必要であるということである。また、東電も、解析の課題として、①減圧のタイミングが実測を模擬できていない②格納容器の圧力上昇も実測を模擬できていない、など、解析結果の根源にかかわるであろう部分(圧力変動)が、実際の事象を模擬できていないことを挙げている。従って、今後必要なことは、水の解説員のおっしゃるような「多くの計算結果を付き合わせていく」ことではなく、プラントパラメータの検証と、さまざまな実際におこっている現象や状況の科学的検証であり、そのことを踏まえたより現実に近い解析である、と思います。
マスコミ全体に言えることなのですが、聞きかじりの一部のみを報道するのではなく、事実をよく確認された上での公正な報道を望みます。
投稿日時:2011年12月06日 15:33 | とおりすがり
とおりすがりさん、詳しく解説していただき研究会での様子がそれなりにイメージできてきました。要するに、東電が現場を把握出来ていないので、正確なところは誰にも分析し得ないというところでしょうか?
現体制では状況を正確に掌握する見通しが立たないようですが、国会の事故調査委員会も立ち上がったようで国勢調査権も使えるとかですし、「福島の未来のために」世界中の知見と技術を集約できればと期待したいものです。
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ところで、文中に「②1号機の上空からのサーモモニター(東電発表10月15日、10月13日撮影)」とありますが、このサーモモニターって横方向からの撮影は出来ないんでしょうかね?
3次元ならば、熊でも魔物の位置を特定できるかと思っちゃったりするんですが・・・
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投稿日時:2011年12月09日 15:19 | 熊:とおりすがりさん、どうもです!
◆ これからさらに浸食が進むということはないんですか?
<それはない、と東京電力ではみています。その根拠としては、
1.原子炉に注いだ水が格納容器の底のコンクリートから3~40センチ程度はたまっていて、燃料はある程度冷えているとみられること。
2.コンクリートが溶けると二酸化炭素が発生しますが、格納容器内の二酸化炭素の濃度は現状安定していて増えてはいないということ、などです。
このまま冷却が進むのであれば、これ以上浸食が進むことはないと思われます。>
私は東電の説明には納得が全然出来ない。
“水が格納容器の底のコンクリートから3~40センチ程度はたまっていて” は余りにも受身的で、proactive, 積極的行動の結果ではない。むしろ“たったの3-40cmなの!” と驚くほど少ない。 格納容器内にはThermocouple温度計がついていない から、温度も圧力釜の温度計による間接的な推測だ。 Boron, ホウ素追加注入も指摘されていないし、人工的水撹乱も不可能で核燃料塊下部に水が届かないのでホウ素による中性子吸収も多分期待できなく、核反応は多分野放しだと思う。
“CO2濃度は現状安定” はどのように定義されているのか解からない。二酸化炭素CO2濃度は多分ある程度循環されたCO2水溶濃度だろうか(温度に随分影響される)、それとも格納容器内空気のCO2濃度だろうか? しかしこのデータは事故前からか事故直後か、何時からのデータとの比較かも解からない。安定化しているから大丈夫はあまりにも非技術的であまい、素人判断だ。CO2の絶対値の比較が重要だと思いますが。
私は高温と高度中性子放射によるコンクリート侵食は過去とほとんど同じスピードで進行すると思う。だと多分4-5月後格納容器の鉄板を打ち破るだろう。格納容器の底に穴が開くのも時間問題だ。
不幸にも、現状は私の半年前の想定とあまり違っていない。
http://messages.yahoo.co.jp/bbs?.mm=GN&action=m&board=200000099&tid=ja1eg86hafbbv8na1vbbfa4afa4acbfmbara1w&sid=200000099&mid=5841
私は東電は甘い、甘すぎると思う。それともbest face、楽観的な情報だけ出し、国民をだまし続けるのだろうか?
投稿日時:2011年12月10日 14:07 | lonetiger135