郡山市の県中浄化センターで処理した下水汚泥から高濃度の1キロ当たり2万6400ベクレル、汚泥を高温で処理してできた溶融スラグから33万4000ベクレルの放射性セシウムがそれぞれ検出された。県が1日、発表した。下水汚泥は県外のセメント会社で再利用されているため、県は追跡調査する方針。併せて2日から4日にかけ、県内22の下水処理施設で放射線量などを調査する。
福島第一原発の事故発生前に処理した溶融スラグからは1キロ当たり246ベクレルの放射性セシウムが検出されており、比較すると今回の数値は1300倍超になる。下水汚泥については事故前の測定値がないため比較できない。
県中浄化センター内に保管されている溶融スラグ周辺の放射線量は、3メートル離れた場所で21マイクロシーベルトだった。
同センターは汚水と雨水を一緒に処理する「合流式」の施設で、郡山、須賀川、本宮、鏡石、矢吹の5市町から下水が流れ込む。県は「地表の放射性物質が雨水とともにセンターに流入し、下水処理の過程で濃縮された結果、濃度が高くなった」とみている。
セメント会社への下水汚泥の搬出は1日からやめたが、原発事故発生後、約500トンが運び出されている。溶融スラグはコンクリートで囲った専用の保管場所に約520トンあり、表面をブルーシートで覆った。
センターでは下水汚泥が毎日80トン発生し、そのうちの10トンをセメント会社で再利用している。残りの70トンは高温で処理し、2トンの溶融スラグが生じる。
2日からの下水処理施設の調査は、福島市堀河町終末処理場など合流式5施設、汚水だけを処理する分流式10施設、農業集落排水処理施設7施設で行う。
下水汚泥などから濃度の高い放射性物質が検出されたことを受け、県は1日、国土交通省に対し、下水汚泥や溶融スラグを安全に処理する方法や再利用のために搬出した下水汚泥の安全な取り扱い法、作業員の安全確保のための方策などについて、方針を早急に示すよう要望した。
一方で、下水処理施設は県民が日常的に出入りする場所ではないため直接的な影響は少ないとみている。県放射線健康リスク管理アドバイザーの神谷研二広島大原爆放射線医科学研究所長は「周辺の空間放射線量をモニタリングし、正確なデータに基づいた対策を講じる必要がある」と指摘した。