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【山のニュース】[静岡]富士山軽視の遭難多発 1カ月半で34件、過去最悪ペース
富士山(標高三、七七六メートル)の遭難事故が多発している。県警の調べでは、今年の遭難件数、人数とも過去最多だった昨年を上回る勢いだ。登山ブームで不用意に登る人が増えたことが原因で、地元の関係者は対応に苦しんでいる。 (我那覇圭) 「今年の遭難者で登山経験があった人は一割。ほとんどが初心者だった」。富士宮署の山岳救助隊長、佐野勝已警部補は表情を曇らせる。「もう少し体力を養ってから登ってくれれば、遭難は確実に減らせるのだが…」 県警地域課によると、七月一日の開山から八月十八日までの約一カ月半で三十四件、三十四人の遭難があった。昨年一年間の四十八件、五十五人を上回るペース。状況は悪化の一途で、二〇〇五年の十七人から三倍以上に増加している。 富士山の遭難者の内訳を年齢別に見ると、四十歳未満の割合が高いのが特徴。〇九年は遭難者全体の48%を占め、全国平均23%に比べて突出している。遭難者の中には、荷物としてかさばる枕や毛布を持参していたり、わずかな休憩しか挟まずに登頂から下山まで一気に続けて、体力が尽きる例もあった。 各地の山岳遭難の事例を研究している関西大総合情報学部の青山千彰教授は「富士登山は危険性が高いという認識が足りない。若者を中心とする初心者がいきなり挑んで遭難するケースが多いのでは」と指摘。佐野警部補は「山頂で日の出を見ようとして、寝不足で登る人もいる。富士山には万全な体調で挑んで」と注意を促す。 富士山の山頂の気温はふもとに比べて二十度近く低く、酸素も薄い。さらに偏西風が吹き付け、天候も急変しやすい。佐野警部補は「強風が吹き荒れ、救助ヘリを出せない場合も多い。富士山の気候は日本一過酷」と、救助活動の難しさを訴える。 一方で、救助体制も十分とは言い難い。救助活動の中心を担う富士宮署では、市街地を巡回し、犯罪に目を光らせる地域課員七人が、山岳救助隊員を兼務している。 伏見豪副署長は「今のまま遭難が増えていくと、犯罪を抑える力が弱まりかねない」と懸念する。遭難防止に向け、事前の体力づくり▽登山計画を警察に提出▽適切な服装・装備▽仲間と無理のないペースで−などを呼び掛けている。 PR情報
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