大学入試センター試験

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センター試験:過去最悪トラブル 誤配布など4500人

大学入試センター試験を終え、会場を出る受験生ら=東京都国立市の一橋大で2012年1月15日午後4時、森田剛史撮影
大学入試センター試験を終え、会場を出る受験生ら=東京都国立市の一橋大で2012年1月15日午後4時、森田剛史撮影

 15日に終了した12年度の大学入試センター試験。同センターの15日午後6時時点のまとめでは、地理歴史と公民の問題の誤配布などは全国で多発し、前代未聞の約4500人もの受験生に影響が出た。宮城県立気仙沼高で英語のリスニング試験用機器の搬送漏れもあるなど、センター試験始まって以来の大トラブルとなった。受験生は「しっかりやって」と怒りをあらわにし、予備校関係者は「予想されてはいたが、受験生を動揺させるミスを起こしてはならない」と、再発防止の必要性を訴えた。【まとめ・福田隆】

 ◇科目選択が複雑化

 「初日はずっと動揺したままで力を十分発揮できなかった。二度とあってほしくない」

 大分県立看護科学大(大分市)の試験会場で、「地理歴史」と「公民」の問題冊子を誤配布された私立高3年の男子生徒(17)は、残念そうに話した。

 男子生徒は「公民」の倫理を第1解答科目にするため、試験開始直前まで勉強をしていた。だが、午前9時半の試験開始時に配られたのは「地理歴史」のみ。「『あれっ』とびっくりしてすぐに配布の間違いに気付いたが、緊張と試験官が出たり入ったりするので言い出せなかった」。同大がミスに気付いたのは開始30分後で、第1解答科目終了後に「公民」の問題冊子を配布した。結局、男子生徒は最初に本来第2解答科目とするはずだった日本史を解き、次に倫理を解答。希望と逆受験となった。

 2科目終了後、試験官が誤配布を告知し、本来と逆になった受験生は申し出るように指示、男子生徒を含む2人が手を挙げた。別室で倫理を第1解答科目の、日本史を第2解答科目の解答用紙に、約20分かけてそれぞれマークし直した。

 男子生徒は「試験は別教室だし、休み時間が友人とずれてリラックスできなかった」と不安そうな表情。同大は「申し訳ない」と陳謝している。

 また、科目選択の複雑化で、問題冊子の配布に時間を要した試験会場も相次いだ。

 兵庫県西宮市の関西学院大B号館では、冊子を間違いなく配布するため開始時間が10分繰り下げとなり、1会場では全国最多となる270人の受験生に影響が出た。県立高3年の女子生徒(17)は、「休み時間も削られた。その時間に次の科目のために何か覚えることができた。人数を確認しておけば遅れずにすんだはずだ」。

 トラブルの原因として大学側から聞こえるのが、今回の科目選択方式の複雑さだ。配布ミスで受験生4人が解答を書き直した鹿児島純心女子大(鹿児島県薩摩川内市)は、試験前に研修会を5回開きうち2回は冊子の配布方法を指導したがミスが起き、「確認が十分でなかったのかもしれない」と悔やむ。5会場で問題冊子の配布が遅れた信州大(長野県松本市)は「試験のやり方が複雑化したためではないか」と話した。

 ◇気仙沼会場 21日に再試験…リスニングトラブル

 大学入試センターは、14日に実施した英語のリスニング試験でICプレーヤーの届け忘れがあった宮城県立気仙沼高(気仙沼市)で、機器到着までの待機中に体調不良を訴えた受験生1人について、21日に再試験を実施するとした。

 このほか、再試験の対象になったのは6会場で計147人。長崎県立対馬高(対馬市)では、地理歴史と公民の2科目受験で、試験開始後に公民の問題冊子を配り、試験時間が2分間不足。32人に再試験の可能性がある。また、外国語(筆記)では計51人が再試験の対象になった。岩手大は同大試験場(盛岡市)で、暖房機の音が約30分間にわたって断続的に鳴ったため、受験生49人が試験に集中できなくなった。愛媛大の城北試験場(松山市)と九州大の箱崎地区試験場(福岡市東区)で、英語の解答を希望していた受験生各1人に対し、独仏中韓4カ国語の問題冊子しか配らなかった。いずれも対象者が希望すれば、再試験を実施する。【木村健二】

 ◇問題誤植6カ所 回答に影響なし

 12年度の大学入試センター試験では、誤植などによる問題の訂正が計6カ所あった。大学入試センターは、いずれも解答に影響がないとしている。センターは15日、14日に行われた外国語の英語(筆記)について出典文献の著者のつづりにミスがあったと発表。15日午後に大学教員からの指摘で判明した。このほか、理科総合B▽数学2・数学B▽地理B▽外国語の韓国語などで、地図の欠落や選択肢の表現ミスがあった。

 ◇47校で配布ミス

 大学入試センターは15日、12年度の大学入試センター試験で、14日に実施した地理歴史と公民の制度変更に伴って試験時間の繰り下げや問題冊子の配布ミスがあったのが計47校58会場に上り、受験生4565人に影響があったと発表した。【木村健二】

 ◇2日目は大きなトラブル起きず

 12年度の大学入試センター試験は2日目の15日、理科と数学の試験を実施し、全日程を終えた。平均点の中間発表は18日。地理歴史、公民、理科の一部の科目間で平均点に原則20点以上の差が生じた場合に得点調整をするかどうかは20日に発表する。体調不良などで受験できなかった志願者に対する追試験は21~22日に実施する。

 理科は、6科目から最大2科目を選ぶ方式に変更。問題冊子が1冊にまとめられたため、地理歴史と公民で起きたような大きなトラブルはなかった。

 同センターによると、理科の1科目受験(午前10時40分開始)で、白鴎大東キャンパス試験場(栃木県小山市)が4人について30分、東北福祉大国見キャンパス試験場(仙台市青葉区)が1人について50分、それぞれ試験時間を繰り下げて別室で受験した。ともに列車の遅れが原因だった。【木村健二】

 【ことば】第1解答科目

 地理歴史と公民(計10科目)や理科(計6科目)の各教科で2科目受験する場合、最初に解答する科目を「第1解答科目」、二つ目を「第2解答科目」とする。センター試験の点数を合否に使う大学では、2科目とも採用したり、2科目の中から高得点の方を採用するパターンがあるが、国立大の多くは第1解答科目の点数を採用するため、受験生にとってはこの科目の出来が勝負どころとなる。今回のトラブルでは、第1解答科目とするはずだった科目の問題冊子の配布が遅れ、やむを得ず第2解答科目から解いた受験生もおり、大学入試センターが救済策を実施している。

毎日新聞 2012年1月15日 21時10分(最終更新 1月16日 0時06分)

 

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