1/15 NHKスペシャル 知られざる放射能汚染〜海からの緊急報告〜を見て
今夜のNHKスペシャル、「知られざる放射能汚染〜海からの緊急報告〜」は非常にいいものでした。見逃した方は、ぜひ再放送か、NHKオンデマンドなどで見てください。
今回の話は、11月のETV特集(「11/28 文科省が発表した最新の海底土のデータ+ETV特集の解説」で紹介済み)の続きのような所もありましたが、海洋汚染、湖沼の汚染、東京湾と川の汚染について3つのパートで説明していました。
簡単に内容を紹介します。取り急ぎ画面ショットを貼り付けておきますが、問題があれば画像は消すかもしれませんのでそのつもりでお願いします。なお、数値などは番組を見ながらメモしたものを元に書いていますが、一部細かい所で間違っているかもしれません。スピード重視で書きましたので、そこはご了承下さい。
1.海洋汚染について
11月に東京海洋大学の神田教授、石丸教授と一緒に原発の20km以内の海域の調査を始めて行いました。調査願いを出して3ヶ月かかったそうです。主に海底土の汚染具合の調査を行いました。半径20kmの海域を、5kmごとに調査を行いました。
原発の港湾入口の海底土を調査した所、4520Bq/kgのセシウムが観測されました。ここの海水の15000倍もの汚染です。今はもう海水の汚染はそれほどではないのですが、海底土の汚染がどうなっているのかを調べました。
その結果、やはり原発近くが一番高く、南側に広がっていましたが、セシウムの量が高い地点はまだらに広がっていました。ここでいうセシウムはCs-137とCs-134の合計だと思うのですが、そこは確認できませんでした。
次に、福島第一原発の南東約20kmの漁場で調べた所、海底土のセシウムが304Bq/kg、海底にいるゴカイが130Bq/kg、それを食べるナメタガレイが316Bq/kgというデータが得られ、底魚では、海底土とほぼ同じ程度のセシウムで汚染されていることが今回初めてわかりました。
前回のETV特集でも出てきましたが、川から流れてきた水は、地球の自転とか密度差の問題から、南に流れていく性質があるそうです。従って、沿岸では海底土の汚染も南に向かっていくのではないか、と考えられました。
そう思って茨城県の沿岸を南にずっと調査しました。この調査には、いつもの岡野先生の開発した特殊な機械を用いています。この機械を用いると、その場で海底土の放射能濃度もだいたい測定できるのです。
その結果、高萩沖(原発から80km)の岩場の堅い地質の所では30Bq/kg前後で低かったのですが、もっと南のひたちなか市(原発から120km)では、海底に泥がたまっているため、高い(380Bq/kg)濃度の海底土のセシウムが検出されました。
また、11月のETV特集において38Bq/kgだった銚子沖では、2ヶ月後に測定した今回は112Bq//kgと3倍近くに増加していました。
2.湖沼の汚染について
群馬県赤城大沼のワカサギから、8月に640Bq/kgのセシウムが検出されました。その原因を調査していくと、この赤城大沼はまわりの山から川の流れで雨水が流れ込んでくるだけで、出て行く河川は沼尾川だけでした。そのため、赤城大沼の湖沼には、20cmの深さにまでセシウムがたまっており、950Bq/kgのセシウムが湖底の泥から検出されました。
群馬県水産試験場の鈴木さんと一緒に調べた所、プランクトンは296Bq/kgでした。このプランクトンの寿命は数週間しかありませんので、9ヶ月経ってもプランクトンに汚染が出るということは、セシウム汚染がすでに湖沼の中で循環していることを示しています。
つまり、下の図のように、まわりの山や川から流れ込んだセシウムが湖底の泥としてたまり、それをプランクトンが吸収し、プランクトンを食べるワカサギやイワナ、ウグイなどに汚染が進むということなのです。死んだ魚はまた湖底に沈み、分解されてまたセシウムの循環サイクルを続けていきます。
おそらく、赤城大沼のように水の循環があまり多くない所では、湖底の泥にセシウムの汚染がたまってしまった以上、この泥を取り除くことをしない限り、10年の単位で汚染は続くのではないかとこれを見て考えました。
番組では、チェルノブイリの時のデータを示してくれていました。ロシアの国立放射線監視センターのデータを示してくれています。ここでは、25年にわたって、毎週淡水魚を採取し、その放射能汚染のデータを蓄積し続けている世界で唯一の場所だそうです。
それによると、当初100000Bq/kg程度あった魚のセシウム(これはCs-137です)は、5年間で1/100程度にまではさがりましたが、その後はほとんど下がらず、20年以上経ってもあまり変わらない数値になっています。おそらくもうこのあとはCs-137の半減期の30年の単位でしか減少していかないでしょう。
このことから考えても、淡水魚の汚染は海のように循環が少ないこともあり、長く続く可能性があります。ただ、チェルノブイリのデータをみても、当初の5年間で1/100程度に低下しています。赤城大沼のワカサギも、現在が仮に1000Bq/kgであっても、数年経てばCs-137だけでも1/100として10Bq/kg程度になる可能性があります。また、Cs-134は、半減期が2年ですのでもっと早く減少するはずです。
3.東京湾の汚染と川の汚染
8月から2ヶ月かけて、近畿大学山崎教授と一緒に東京湾の海底土の調査を行いました。水深10m程度の泥を26ヶ所調査した所、多くの場所では100Bq/kg以下でしたが、驚くべきことに江戸川と荒川の河口付近が非常に高く、872Bq/kgものセシウムが検出されました。
これは、江戸川や荒川から流れてきたものと考えられました。
東大の鯉渕専任講師は、江戸川の川底の泥のセシウム汚染を調査しています。鯉渕さんによると、川の下流は潮汐によって海水と混じり合うため、塩分を含んでいます。ただし、海水の方が塩分を含んでいて密度が高いために重く、完全には混じり合いません。シミュレーションを見せてくれていましたが、川の淡水に含まれて流されてきた泥は、海水と混ざり合う際に塩分の影響で「凝集」という状態になります。つまり、泥がだんごのようにくっついて小さなかたまりになって下に落ちていくのだそうです。
鯉渕さんの調査によると、河口から8kmのポイントが一番汚染が高く、1623Bq/kgもの汚染がありました。河口が872Bq/kgですから、その2倍です。
このようなことは他の川でも起こっているはずです。
京大防災研究所の山敷研究室のシミュレーションによると、平地から川を通じて東京湾に流れてくるセシウムは、まず6ヶ月で川に移動するそうです。そして東京湾のセシウムが最大になるのは2年2ヶ月後だそうです。東京湾はかなり奥まっていて拡散しにくいので、この汚染は10年以上続くということでした。
そして東京湾のセシウムが最大になるのは2年2ヶ月後だそうです。東京湾はかなり奥まっていて拡散しにくいので、この汚染は10年以上続くということでした。
今回のまとめです。
1.海底土の汚染の調査の結果、泥の動きに従って海底の汚染は移動することがわかってきた。これが陸上の汚染との大きな違いである。
2.これまであまり調査されていない湖沼の汚染も進んでいる。特に水の循環のあまりない湖沼では、一度汚染されるとその汚染が長期間続く可能性が高い。
3.東京湾も、江戸川下流からくる泥によって江戸川河口付近が汚染されている。シミュレーションによると、2年後くらいが汚染のピークで、その後も10年近く汚染は続く。
いろいろと考えさせられる番組でしたが、これまで国が行ってこなかった調査を行ってくれていて、いい番組だと思いました。
11月に東京海洋大学の神田教授、石丸教授と一緒に原発の20km以内の海域の調査を始めて行いました。調査願いを出して3ヶ月かかったそうです。主に海底土の汚染具合の調査を行いました。半径20kmの海域を、5kmごとに調査を行いました。
原発の港湾入口の海底土を調査した所、4520Bq/kgのセシウムが観測されました。ここの海水の15000倍もの汚染です。今はもう海水の汚染はそれほどではないのですが、海底土の汚染がどうなっているのかを調べました。
その結果、やはり原発近くが一番高く、南側に広がっていましたが、セシウムの量が高い地点はまだらに広がっていました。ここでいうセシウムはCs-137とCs-134の合計だと思うのですが、そこは確認できませんでした。
次に、福島第一原発の南東約20kmの漁場で調べた所、海底土のセシウムが304Bq/kg、海底にいるゴカイが130Bq/kg、それを食べるナメタガレイが316Bq/kgというデータが得られ、底魚では、海底土とほぼ同じ程度のセシウムで汚染されていることが今回初めてわかりました。
前回のETV特集でも出てきましたが、川から流れてきた水は、地球の自転とか密度差の問題から、南に流れていく性質があるそうです。従って、沿岸では海底土の汚染も南に向かっていくのではないか、と考えられました。
そう思って茨城県の沿岸を南にずっと調査しました。この調査には、いつもの岡野先生の開発した特殊な機械を用いています。この機械を用いると、その場で海底土の放射能濃度もだいたい測定できるのです。
その結果、高萩沖(原発から80km)の岩場の堅い地質の所では30Bq/kg前後で低かったのですが、もっと南のひたちなか市(原発から120km)では、海底に泥がたまっているため、高い(380Bq/kg)濃度の海底土のセシウムが検出されました。
また、11月のETV特集において38Bq/kgだった銚子沖では、2ヶ月後に測定した今回は112Bq//kgと3倍近くに増加していました。
2.湖沼の汚染について
群馬県赤城大沼のワカサギから、8月に640Bq/kgのセシウムが検出されました。その原因を調査していくと、この赤城大沼はまわりの山から川の流れで雨水が流れ込んでくるだけで、出て行く河川は沼尾川だけでした。そのため、赤城大沼の湖沼には、20cmの深さにまでセシウムがたまっており、950Bq/kgのセシウムが湖底の泥から検出されました。
群馬県水産試験場の鈴木さんと一緒に調べた所、プランクトンは296Bq/kgでした。このプランクトンの寿命は数週間しかありませんので、9ヶ月経ってもプランクトンに汚染が出るということは、セシウム汚染がすでに湖沼の中で循環していることを示しています。
つまり、下の図のように、まわりの山や川から流れ込んだセシウムが湖底の泥としてたまり、それをプランクトンが吸収し、プランクトンを食べるワカサギやイワナ、ウグイなどに汚染が進むということなのです。死んだ魚はまた湖底に沈み、分解されてまたセシウムの循環サイクルを続けていきます。
おそらく、赤城大沼のように水の循環があまり多くない所では、湖底の泥にセシウムの汚染がたまってしまった以上、この泥を取り除くことをしない限り、10年の単位で汚染は続くのではないかとこれを見て考えました。
番組では、チェルノブイリの時のデータを示してくれていました。ロシアの国立放射線監視センターのデータを示してくれています。ここでは、25年にわたって、毎週淡水魚を採取し、その放射能汚染のデータを蓄積し続けている世界で唯一の場所だそうです。
それによると、当初100000Bq/kg程度あった魚のセシウム(これはCs-137です)は、5年間で1/100程度にまではさがりましたが、その後はほとんど下がらず、20年以上経ってもあまり変わらない数値になっています。おそらくもうこのあとはCs-137の半減期の30年の単位でしか減少していかないでしょう。
このことから考えても、淡水魚の汚染は海のように循環が少ないこともあり、長く続く可能性があります。ただ、チェルノブイリのデータをみても、当初の5年間で1/100程度に低下しています。赤城大沼のワカサギも、現在が仮に1000Bq/kgであっても、数年経てばCs-137だけでも1/100として10Bq/kg程度になる可能性があります。また、Cs-134は、半減期が2年ですのでもっと早く減少するはずです。
3.東京湾の汚染と川の汚染
8月から2ヶ月かけて、近畿大学山崎教授と一緒に東京湾の海底土の調査を行いました。水深10m程度の泥を26ヶ所調査した所、多くの場所では100Bq/kg以下でしたが、驚くべきことに江戸川と荒川の河口付近が非常に高く、872Bq/kgものセシウムが検出されました。
これは、江戸川や荒川から流れてきたものと考えられました。
東大の鯉渕専任講師は、江戸川の川底の泥のセシウム汚染を調査しています。鯉渕さんによると、川の下流は潮汐によって海水と混じり合うため、塩分を含んでいます。ただし、海水の方が塩分を含んでいて密度が高いために重く、完全には混じり合いません。シミュレーションを見せてくれていましたが、川の淡水に含まれて流されてきた泥は、海水と混ざり合う際に塩分の影響で「凝集」という状態になります。つまり、泥がだんごのようにくっついて小さなかたまりになって下に落ちていくのだそうです。
鯉渕さんの調査によると、河口から8kmのポイントが一番汚染が高く、1623Bq/kgもの汚染がありました。河口が872Bq/kgですから、その2倍です。
このようなことは他の川でも起こっているはずです。
京大防災研究所の山敷研究室のシミュレーションによると、平地から川を通じて東京湾に流れてくるセシウムは、まず6ヶ月で川に移動するそうです。そして東京湾のセシウムが最大になるのは2年2ヶ月後だそうです。東京湾はかなり奥まっていて拡散しにくいので、この汚染は10年以上続くということでした。
そして東京湾のセシウムが最大になるのは2年2ヶ月後だそうです。東京湾はかなり奥まっていて拡散しにくいので、この汚染は10年以上続くということでした。
今回のまとめです。
1.海底土の汚染の調査の結果、泥の動きに従って海底の汚染は移動することがわかってきた。これが陸上の汚染との大きな違いである。
2.これまであまり調査されていない湖沼の汚染も進んでいる。特に水の循環のあまりない湖沼では、一度汚染されるとその汚染が長期間続く可能性が高い。
3.東京湾も、江戸川下流からくる泥によって江戸川河口付近が汚染されている。シミュレーションによると、2年後くらいが汚染のピークで、その後も10年近く汚染は続く。
いろいろと考えさせられる番組でしたが、これまで国が行ってこなかった調査を行ってくれていて、いい番組だと思いました。
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