裁判 

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[『それしか言いようがありません』金君子(1998.7.21)]
[『3月30日判決に対して』住民(1998.3.30)]
[『2月23日判決に対して』住民・守る会(1998.2.23)]
[『私はウトロに生きて、死にます』 姜慶南(1998.1.30)]
[『声明文』ウトロ町内会・ウトロを守る会(1998.1.30)]
[『声明文』韓国:ウトロ地域同胞後援会(1998.1.30)]
◆ 『判決文(簡易版)』京都地裁(1998.1.30)
[『判決文(簡易版)』京都地裁(1998.7.17)]
[新聞報道(1998.1.30-)]
[1998.1.30報告(含画像)]

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[ウトロニュース No.34(1998.3.15)]
[ウトロニュース No.35(1998.4.15)]


 
『判決文(簡易版)』 京都地裁(1998.1.30)


平成2年(ワ)第96号建物収去土地明渡請求事件
判決要旨
原告  有限会社西日本殖産
被告  上本都雄こと金成根(以下「被告金」という。)
被告  姜幸子(以下「被告姜」という。)
被告  吉岡勇こと白鍾雄(以下被告白」という。)


主文
    1. 被告金は原告に対し別紙建物目録一記載の建物((1)建物)を収去して別紙土地目録一記載の土地((1)土地)のうち同建物の敷地部分(建物の最も外側にある屋根の各先端から地上へ下ろした垂線によって囲まれた範囲。以下本項(2)、2項(1)及び3項の(1)から(3)において同じ。)を明け渡せ。

    2. 被告金は原告に対し別紙建物目録二記載の建物((2)建物)を収去して別紙土地目録二記載の土地((2)土地)のうち同建物の敷地部分を明け渡せ。

  1. 原告の被告金に対するその余の各請求(土地明渡請求)にかかる訴えを却下する。

    1. 被告姜は原告に対し別紙建物目録二記載の建物から退去して別紙土地目録二記載の土地のうち同建物の敷地部分を明け渡せ。

    2. 原告の被告姜に対するその余の請求(土地明渡請求)にかかる訴えを却下する。

    1. 被告白は原告に対し別紙建物目録三記載の建物((3)建物)を収去して別紙土地目録三記載の土地((8)土地)のうち同建物の敷地部分を明け渡せ。
    2. 被告白は原告に対し別紙建物目録四記載の建物((4)建物)を収去して別紙土地目録四記載の土地((4)土地)のうち同建物の敷地部分を明け渡せ。

    3. 被告白は原告に対し別紙建物目録五及び六記載の各建物((5)建物、(6)建物)を収去して別紙土地目録五記載の土地((5)土地)のうち別紙建物目録五及び六記載の各建物の敷地部分を明け渡せ。

  2. 訴訟費用はこれを3分し、その1を原告の負担、その余を被告らの負担とする。


事案の概要

本件は、原告が土地の所有権に基づき被告金に対し(1)建物の収去及び(1)土地の明渡し並びに(2)建物の収去及び(2)土地の明渡しを、被告姜に対し(2)建物からの退去及び(2)土地の明渡しを、被告白に対し(3)建物の収去及び(3)土地の明渡し、(4)建物の収去及び(4)土地の明渡し並びに(5)及び(6)の各建物の収去及び(5)土地の明渡しをそれぞれ求めた事案であり、被告らは一次的に各訴えの却下を求め、二次的に各請求の棄却を求めた。


争点に対する判断
  1. 訴えの適法性(明渡請求対象土地の待定の有無)について

    原告が本件において請求対象の特定に用いている別紙図面は宇治市道路台帳の測定基図や水道管の敷設のために作成された図面と同じ基本平面図を原図として作成されたものである。そして、基本平面図における建物の表示は、軒先(屋根の先端)表示であるものの、その表示精度が高いものと認められる。また、基本平面図を基に作成された図面に基づいて水道管の敷設工事も滞りなく完成されていることや、作成経過等に照らすと、基本平面図における建物相互の位置関係、通路等の形状、亭物と通路等との位置関係の各表示も表示精度が高いと認められる。
    ところで、本件訴訟は(1)から(6)の建物の収去及びその各周辺の土地の明渡しを求めるものであるところ、各建物は別紙図面により判断できる周囲の状況とその各構造を合わせ現地で照含することによって強制執行の際に他の物件と混同するおそれがないものであり、本件における弁論終結時までの審理経過にかんがみても、不特定であるとはいえないから、本件訴訟の建物収去にかかる訴えの対象は特定されている。

    次に、(1)から(5)の各土地の明渡請求についてみると、(1)から(6)の各建物の敷地部分(正確には主文に記載したもの)を超える土地部分の範囲の表示は別紙図面上実線によって区画されているものの、これが同図面上の確定した起点からの距離・方位によって特定されておらず、対象土地が矩形からなるものかどうかも明らかでない。また現地においても(1)から(5)の各土地が何らかの工作物等によって画され他の土地部分との識別が可能な状態にあると認められない。したがって、右の敷地部分を超える土地部分は特定したものとはいえない。

    しかし、(1)から(6)の各建物の敷地部分は、各建物が特定している以上、その敷地部分として他の土地部分と識別は可能であるから、訴えの対象及びその範囲は特定されていることができる。したがって、主文の限度で土地明渡請求はご不適法である。

  2. 原告は本件土地の所有権を取得したか(信託法等違反の有無)について

    原告が平山から本件土地の所有権を取得したことが認められる。これに対してウトロ地区の土地の真の所有者は金沢土建であり、原告が被告らを立ち退かせることだけを目的として設立され、ウトロ地区の土地を譲り受けたことなどの被告らの主張事実は認めるに足りる証拠がない。


  3. 原告は本件土地の所有権を喪失したか(第三者のためにする契約の成否)について

    原告が日産車体から住民の希望があれば、各戸の敷地部分を住民に分譲し、その分譲価格は4億5000万円をクトロ地区の土地の総面積から道路敷及び水路敷の面積を差し引いた有効宅地面積で除した単価に各戸の敷地面積を乗じた額とするとの条件でウトロ地区の土地を買ったことを前提にして、右売買契約が受益者を住民とする第三者のためにする契約(民法537条)売である旨の被告らの主張は理由がなく採用できない。

  4. 被告らは本件土地の所有権を時効により取得し、これを原告に対抗できるか(権利濫用の有無)について

    甲9号証(要請書)等によれば金判用、白龍萬、吉田幸男は本件土地を所有する意思を持っていなかったことが認められるし、吉田幸男は昭和50年当時日産車体がウトロ地区の土地を所有していることを知っていたと推認できるから、金判用及び白龍萬の時効取得は認められない。

    したがって、被告らの本件土地を時効取得したとの主張は、理由がなく失当である。

  5. 被告らは本件土地を占有しているかについて

    被告金は(1)建物を所有して(1)土地のうち同建物の敷地部分を占有し、(2)建物を所有して(2)土地のうち同建物の敷地部分を占有し、被告姜は(2)建物に居住して(2)土地のうち同建物の敷地部分を占有し、被告白は(8)建物を所有して(8)±地のうち同建物の敷地部分を占有し、(4)建物を所有して(4)土地のうち同建物の敷地部分を占有し、(5)及び(6)の各建物を所有して(5)土地のうち(5)及び(6)の各建物の敷地部分を占有していることが認められる。

  6. 被告らが本件土地の占有権原を有し、これを原告に対抗できるか(権利の濫用の有無)について

    被告らは、日産車体とそれぞれ占有する土地について地上権設定契約を締結した旨主張し、その根拠として乙5号証を挙げるが、乙5号証は地上権を設定するとの効果意思を含むものと認めることはできない。

    したがって、被告らの主張は採用できない。

  7. 原告の本訴請求が信義則違反あるいは権利の濫用にならないかについて

    原告がウトロ地区の土地を買った後、平山や原告らがこれを住民に分譲するために種々の努力をしたのに、住民間で意見がまとまらず一括買受けも分譲のいずれの方法も実現しなかったものであって、平山が住民のための水道管を敷設するコースを決定したり、自治会長として住民に分譲するため土地を日産車体から買い受け、自治会の回覧で土地が原告の所有であることを明らかにしないまま、住民に分譲する旨公告して希望者を募り、その後も住民に分譲する旨述べたこと、また、日産車体が同地区の土地の売買等を行った際にとった行動等を総含しても、原告にしても、平山にしても、日産車体にしても、住民との折り合いを付けてウトロ地区の土地を被告ら住民に売却することを望んでいたことが明らかであり、その際待別な利益の獲得をもくろんでいたと認めるに足りる証拠はないし、本訴提起後においても原告と被告ら住民との間で訴訟代理人を通じて折衝が続けられたことが数度あって、売買代金等の調整がつけぱ売買が実現することもありえたことに照らしても、本訴請求が信義則違反あるいは権利の濫用にわたるとは認められない。

    したがって、被告らの主張は採用できない。

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※上記「簡易版」は、裁判所よりマスコミ報道向けに作られたものである。被告の主張は受け入れられず、被告の主張を一つ一つ反証し、全体的に原告の主張を取り入れるものとなった。また、仮執行宣言が付帯されない(実行力が無い)判決であり、京都地裁自身による判定を棚上げするものとなった(青ひょん)。

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