男たちは、しばしば猥談(わいだん)で、たがいの絆をたしかめあう。俺も助平、お前も助平、俺たちは仲間どうしだ。これからも、よろしくたのむぜ。そんなやりとりをとおして、チームワークをなりたたせることが、よくある。
そこに、女はなかなかはいっていきにくい。ゲイの男も、その輪からはしめだされやすくなる。男と男がつるみあうからといって、俺たちはゲイじゃあない。女に魂をうばわれるような腑(ふ)抜けとも、ちがう。ゲイをしりぞけ、女をエロの対象として見下せる。そんな連帯感が、男たちのチームワークをささえている。
こういう絆にも、しかし歴史的な起源はある。それは、20世紀のはじめごろになって、ようやくうかびあがってくる。
じっさい、かつての絆は「男色」をうけいれていた。それが、近代化のなかでしだいに遠ざけられていく筋道を、著者はたどっていく。そして、「男色」ぬきの「友情」にとってかわられるからくりを、えがきだす。
絆の根っ子には、「男色」があった。その起源をおそれ隠蔽したがるかのように、男の「友情」はゲイをいみきらう。男社会のイデオロギーを、歴史的にときほぐす一冊。
★★★★
(風俗史家 井上章一)
[日本経済新聞夕刊2011年7月6日付]
★★★★★ これを読まなくては損をする
★★★★☆ 読みごたえたっぷり、お薦め
★★★☆☆ 読みごたえあり
★★☆☆☆ 価格の価値はあり
★☆☆☆☆ 話題作だが、ピンとこなかった
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