日本経済新聞

1月15日(日曜日)

日本経済新聞 関連サイト

ようこそ ゲスト様

コンテンツ一覧

男の絆 前川直哉著 「友情」の起源と変遷ときほぐす

2011/7/8 7:00
小サイズに変更
中サイズに変更
大サイズに変更
印刷
この記事をはてなブックマークに追加
この記事をmixiチェックに追加
この記事をLinkedInに追加

(筑摩書房・1600円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)
画像の拡大

(筑摩書房・1600円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

 男たちは、しばしば猥談(わいだん)で、たがいの絆をたしかめあう。俺も助平、お前も助平、俺たちは仲間どうしだ。これからも、よろしくたのむぜ。そんなやりとりをとおして、チームワークをなりたたせることが、よくある。

 そこに、女はなかなかはいっていきにくい。ゲイの男も、その輪からはしめだされやすくなる。男と男がつるみあうからといって、俺たちはゲイじゃあない。女に魂をうばわれるような腑(ふ)抜けとも、ちがう。ゲイをしりぞけ、女をエロの対象として見下せる。そんな連帯感が、男たちのチームワークをささえている。

 こういう絆にも、しかし歴史的な起源はある。それは、20世紀のはじめごろになって、ようやくうかびあがってくる。

 じっさい、かつての絆は「男色」をうけいれていた。それが、近代化のなかでしだいに遠ざけられていく筋道を、著者はたどっていく。そして、「男色」ぬきの「友情」にとってかわられるからくりを、えがきだす。

 絆の根っ子には、「男色」があった。その起源をおそれ隠蔽したがるかのように、男の「友情」はゲイをいみきらう。男社会のイデオロギーを、歴史的にときほぐす一冊。

★★★★

(風俗史家 井上章一)

[日本経済新聞夕刊2011年7月6日付]

★★★★★ これを読まなくては損をする
★★★★☆ 読みごたえたっぷり、お薦め
★★★☆☆ 読みごたえあり
★★☆☆☆ 価格の価値はあり
★☆☆☆☆ 話題作だが、ピンとこなかった

小サイズに変更
中サイズに変更
大サイズに変更
印刷
この記事をはてなブックマークに追加
この記事をmixiチェックに追加
この記事をLinkedInに追加
関連キーワード

前川直哉、井上章一

【PR】

【PR】

本 一覧

(徳間書店・1600円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

大奥騒乱 伊賀者同心手控え 上田秀人著
懐妊巡る大奥の権力抗争

 作者の単行本第3弾は、10代将軍家治の側室おすわの方の懐妊、つまりは生む性としての女の存在が、江戸期の大奥ではいかなる凄絶な権力抗争を生むのか――これを時にスピーディに時に重厚に描いた力作である。
 …続き (2011/10/7)

(東京創元社・1600円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

あがり 松崎有理著
ブラックな発想が醸し出す哀愁

 生物が進化し続けるとしたら、その果てにあるのはなんだろう?
 生物進化の究極の姿をめぐって、とある学生が、一見素朴ながら、かなり論争的に仕掛けた実験が、やがてたいへんな事態を引き起こしてしまう。プチ・…続き (2011/10/6)

(筑摩書房・1600円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

笑う子規 正岡子規著・天野祐吉編
俳句とイラストの融合

 子規こそは「野球の父」である。直球、飛球、四球、打者、走者。これらは全て子規の訳語だ。〈生垣の外は枯野や球遊び〉など、野球に関する俳句もたくさんつくっている。
 大好きな句がある。〈正月や橙(だいだい…続き (2011/10/6)

【PR】

モバイルやメール等で電子版を、より快適に!

各種サービスの説明をご覧ください。

日本経済新聞の公式ページやアカウントをご利用ください。

[PR]

【PR】

ページの先頭へ

日本経済新聞 電子版について

日本経済新聞社について