今年ソウル大学機械航空工学部を卒業したイム・チェウォン(27)=キムズ・レーシング=は、誰もが憧れる「カーレーサー」だ。カーレーシング入門から1年足らずの一昨年7月、プロカーレーシング大会「CJティービング・ドットコム・スーパーレース」の1ラウンドで見事優勝を果たした。大会後のインタビューで、イム・チェウォンは「サーキットを丸ごと暗記した」とコメントし「秀才ぶり」を遺憾なく発揮した。
先月11日、イム・チェウォンは日本モータースポーツのメッカである「鈴鹿サーキット」のスタートラインに立っていた。スーパーFJ(フォーミュラカーレースでF4のすぐ下のカテゴリー)の日本一決定戦に出場したのだ。レース開始を待つキムズ・レーシングのキム・ソンチョル団長(46)の表情には、感慨深いものがあった。「日本で過ごしたこの10カ月間のことを思うと、今この瞬間が本当に夢のようです」。
イム・チェウォンは「晩学のドライバー」だ。幼少時代はサッカーに明け暮れ、一時はプロを目指したが、それ以上に学校の成績が優秀だった。2004年にソウル大学に入学したイム・チェウォンは、やがて自動車のとりこになっていった。「機械工学の結実体である“車”について知りたいという思いが、頭から離れなかったんです」。初めは自動車部門の研究員になることを考えたが、結局はカーレーサーの道を選んだ。長年抱いてきたプロ選手になる夢と、自動車を理解する人間になりたいという願望が一致した結果だった。
とにかく最初は「カーレーサーになりたい」と思い、国内の専門家たちに数十通のメールを送った。この中で、キム・ソンチョル団長がイム・チェウォンに手を差し伸べた。「初めてカートでテストした時、チェウォンの表情からは“これ以外には道がない”ともいうべき真剣さを感じました。どうせソウル大学の学生だから、少しやってあきらめるだろうと思っていましたが、それは完全に私の早合点でした」。こうして2009年7月、本格的にカーレーシングの世界に跳び込んだ。
同年10月のデビュー戦では10人中7位の成績だった。イム・チェウォンの父、イム・スグンさん(57)は「チェウォンは何か一つ夢中になると、周囲には目もくれなくなる性格だ。デビュー戦の成績がよほど悔しかったのか、その後は寝ても覚めてもレーシングのことしか頭になかったようだ」と話した。