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平田容疑者:入念に身辺整理 教団の関与、今後の焦点

 17年近く逃亡した元オウム真理教幹部、平田信容疑者(46)とかくまい続けた元信者、斎藤明美容疑者(49)。2人と接見した滝本太郎弁護士の話や警視庁の捜査から、暮らしぶりや出頭の経緯が少しずつ分かってきた。一方で、教団の関与の有無などは明らかでなく、警視庁は全容解明を急いでいる。

 ◇都会に潜伏

 「人が多い都会に隠れよう」。96年2月ごろ、平田容疑者の提案で2人は大阪を目指した。身辺に捜査が近付いたことを察知したとみられる。

 当初は、「北へ向かえ」という教団の占いに従い、東北に逃げた。95年11月ごろからは仙台市の日本料理店の寮に住んでいたが、捜査員が踏み込んだ時に姿はなかった。

 2人は大阪市に1年数カ月住んだ後、残りの約14年は東大阪市内で同居。自宅マンションは、斎藤容疑者の勤務先の整骨院の借り上げ寮だった。

 ◇質素な生活

 斎藤容疑者は整骨院で「吉川祥子(よしかわ・しょうこ)」という偽名を名乗り、周囲には「男はこりごり。1人で暮らしている」などと話した。アルバイトから社員となった00年には、吉川名義の健康保険証や厚生年金手帳を取得。銀行口座開設や携帯電話の契約に使われたという。

 生活は質素だった。月給は約20万円。出費を切り詰め、整骨院が支給する昼食代で2人分の弁当を買った。平田容疑者はほとんど外出せず、テレビやパソコンで時間をつぶし、時には自分で料理や掃除もしていた。教団から受け取った逃走資金1000万円は目減りしたものの、斎藤容疑者は出頭時に約800万円を持っていた。

 ◇最後の電話

 平田容疑者は昨年11月、出頭の意向を斎藤容疑者に打ち明けた。「見納めに」とレンタルビデオ店で借りたDVDは、米国のテレビドラマ「24」など28本に上った。出頭前には髪を茶色に染め、斎藤容疑者が眉を細く整えた。途中で見つかりたくなかったという。

 平田容疑者の出頭後、斎藤容疑者は身辺整理を始めた。今月4日には「親元に帰る」と整骨院に退職の意向を伝え、部屋を掃除。冷蔵庫を空にし、歯ブラシで水回りを磨いた。10日未明に自首する直前には、福島県の実家に電話し「長い間申し訳ありません。これから出頭します」と留守番電話に吹き込んだ。

 逃亡生活には謎も残る。800万円の原資のほか、教団の関与や支援者の有無は解明されていない。滝本弁護士は「2人はもう帰依していない」と教団との関係を否定するが、捜査幹部は「2人が全てを話しているとは思えない」と話している。

毎日新聞 2012年1月15日 8時38分(最終更新 1月15日 13時27分)

 

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