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2004年 07月 07日
「なるたる」の作者、鬼頭莫宏、新作出してたんだ? 知らなかった、こんど買わなきゃ! 「なるたる」とは月間アフタヌーンで連載されていたSF漫画。 「未来の子供達に捧げるメルヘン」みたいなキャッチフレーズがついていた。 俺もコミックス全巻揃えるほどはまってしまった漫画だ。 元気で前向きな小学生の女の子「しいな」と、不思議な星型の生き物「ホシマル」が地球的規模の大事件にまきこまれる、というストーリー。 と、いうふうに説明出来るんだけど、この漫画「なるたる」なんていうなんだかほのぼのとした語感のタイトル、絵柄の柔らかさ、そして「未来の子供たちに捧げるメルヘン」なんていうキャッチフレーズからイメージされる内容とは、かなりかけ離れた一筋縄ではいかない漫画だった。 俺もこの複雑な謎だらけの作品をレビューする自身が無い。 正直、俺の文章スキルでは、この作品を語りきることは不可能だと思う。 今まで、何度かこの作品をレビューしようとして失敗している。 今回もおそらく失敗してしまうであろうことを承知で、何度目かの「なるたる」レビューを試みてみよう。 簡単なストーリー概要。 子供達と不思議な力でリンクする(心が通じ合うといったらいいのか?)竜の子というのが現れて、子供達はその竜の子の持つ不思議な力を使うことが出来るようになる。 しいなは田舎の海で竜の子「ホシマル」と出会う。 空飛ぶホシマルの背中に乗って夜空を飛ぶしいな。 そして、田舎から帰るために乗った飛行機が、ナイフの形をした竜の子に襲われる。 しいなは「ホシマル」と協力して、このナイフ形の竜の子を撃退すようとする。 そしてホシマルから落下したしいなを、巨大な竜のような生物と、それに乗った全裸の少女が救う。 巨大な竜と全裸の少女はナイフ形竜の子を撃退。 どこかへと去っていく。 波乱の予感を含む、第1話。 ここまでは健全なSFファンタジー漫画のようによめてしまう。 が、連載が進むにつれ、この漫画は単なる健全なファンタジーとは違う様相を徐々に露呈していく。 健全な作品がけっして外には現さない、暗い闇を露悪的なほどに描いて行く。 主人公「しいな」は明らかに健全ファンタジーの主人公の典型とも言えるキャラクターだ。 しいなとコンビを組む可愛らしい姿の「ホシマル」も健全ファンタジーに似つかわしい。 しかし、そんな彼らを取り巻く世界は、しだいに暗く病んだ闇に包まれていく。 闇の中の健全ヒロイン。 この「なるたる」は数ある健全ファンタジーのアンチテーゼとして描かれていたように思う。 この「なるたる」という作品、子供達を主人公にしておきながら、決して子供が踏み込んではいけないような危険な領域までを容赦なく描写している。 主人公しいなは、やがて自分と同じ星の子を所有する、極度に内向的な少女あきらと知り合う。 あきらはコミュニケーション不全症で、唯一、あっけらかんとしたしいなとだけ友達になることが出来た。 黒の子供会という星の子とリンクした子供達は竜の子をつかって「人間を滅ぼす」計画をたてる。 先のナイフ形の竜の子でしいなを襲撃したのも、この「黒の子供会」の一員であった。 人間などこの地球にとって不要と考える彼ら。 そうした黒の子供会の面々と対決を余儀なくされるしいなとあきら しいな自身はそれこそ健全ファンタジー主人公らしく、地球を守るため、愛すべき人間達を守るために、「黒の子供会」とかかんに対決をいどむのであったが、しかししいなの主観とは大きくズレるほど作品世界は病的に病んでいた。 いくら「人類の滅亡」をもくろむ悪役とは言え、自分達とそれほど年齢の違わない「子供」と戦った上で相手を「殺害」してしまう、しいなとあきら。 正義のためと言う大義名分で、しいな達の行動を正当化することを許さない作者は、いたいけなしいなとあきらに「人間の命」についての大きな命題をつきつける。 悩むしいなとあきら。 さらに健全なしいなを取り巻く環境は見えないところで歪み、病んでいた。 しいなの友達のひとり、ひろこは、しいなの目の届かないところで、クラスメートに執拗にいじめられていた。 その「いじめ」の描写は、健全漫画ではありえないほどの残酷、冷酷なものだ。 無理矢理ミミズ入りのジュースを飲まされる、試験管を性器に挿入され処女膜をやぶられるなど・・・・・・・・耐えがたいほどのいじめをうけながら、誰にも相談することの出来ないひろこのこころは、「鬼」を生み出し、自分をいじめたクラスメートに復讐していく。 ひろこの殺戮を止めに入るしいな。 復讐心にかられたひろこを止めるには、友達であるひろこを殺さなくてはならない。 ひろこの首に手をかけ、そのまま動けない。 友達のひろこの首をしめて殺すのか? 自分がそれをするのか? どうしていいのかわからないしいな・・・・・・・。 そして、ちょうどその時、あきらは自分の父親を殺害していた・・・・・・・。 明らかに健全マンガの絵柄と筋立てでありながら、けっして健全なままでいることを許さない作者。 この世の歪み、人間の歪みを容赦なく描き表し、その上で「人間の命の価値」について考えさせることを読者に強要する。 正直、俺はこの作者、鬼頭莫宏が、読者になにを感じ、何を考えさせたいのかさっぱりわからなかった。 しかし、それでも、この「なるたる」を読んだ後では考えざるをならなかった。 病的に歪んだ人間の心や、命の価値について。 作者のやりすぎとも思える強烈な描写は、読者に力づくでも、こうした命題を考えさせるためだったのかも知れない。 「なるたる」から受ける感触は「エヴァンゲリオン」のそれに近い。 健全であることのアンチとしての病的な描写。 しかし、「エヴァンゲリオン」の露骨な描写は、ある種「かっこつけ」だったのに対し、 この「なるたる」は本気だ。 「健全」であることに慣れきってしまった人々。 「健全」な作品であふれかえる文化。 それにたいして、「健全な絵柄と健全な設定(ファンタジーというスタイル)」で、喧嘩を挑んだのがこの「なるたる」だった。 露悪的に不健全を撒き散らすという戦法ではなく、健全が次々と打ち負かされていく過程を描きつづけたのが「なるたる」である。 健全であるかぎり安全な人間達が、その健全に見放されることによって落ちていく闇を描く。 「なるたる」は見た目の柔らかな絵柄とは裏腹に、恐るべき作品であった。 現在、コミックス12巻をもって完結した「なるたる」だが、俺は今もって、この作品を総括することが出来ない。 最終回を迎えていながら、作品内にちりばめられた謎はまったく解明されておらず、なおかつ作者が読者に突きつけた問題の明快な解答は無い。 ただ、終わってしまっただけのように思う。 というより、終わらせられたのか? 正直、俺は「なるたる」は最後まで描ききれなかった未完成の作品であると思っている。 作者のモチベーションの低下か、出版側の事情かはわからない。 とにかく「なるたる」は終わっていないのに終わってしまった。 俺は終わらない作品として、この「なるたる」のコミックを繰り返し読むと思う。 俺自身に突きつけられた様様な命題はまったく解決していないのだ。 少なくとも「なるたる」が終わったからといって、「健全」に回帰していくことなど出来ない。 「なるたる」終了後、新作「ぼくらの」を連載している作者、鬼頭莫宏 彼は、自分自身が提示した命題を新作によって回答することが出来るのだろうか? なんとか、がんばって書いてみた「なるたる」レビューだが、今回も失敗っぽいなあ。 また今度、改めて、「なるたる」レビューに挑戦しよう。 なるたる・アニメ・オフィシャルサイト なるたるファンサイト・「むくたま」 by pulog | 2004-07-07 23:44 | マンガ・アニメ
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