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連続不審死:「練炭渡し別れた」大出さん事件、関与否定

 首都圏連続不審死事件で、3件の殺人罪など計10事件で起訴された木嶋佳苗被告(37)の裁判員裁判の初公判は10日午後、さいたま地裁(大熊一之裁判長)で続き、09年8月に死亡した東京都千代田区の会社員、大出嘉之さん(当時41歳)の事件を中心に本格的な審理が始まった。弁護側は「木嶋被告は大出さんに練炭を渡して別れた」と主張し、事件への関与を否定した。

 弁護側は冒頭陳述で、大出さん殺害事件の当日とされる09年8月5日に、木嶋被告のマンションを訪れた大出さんから「譲ってほしい」と言われてコンロと練炭を渡したと説明。「大出さんが自分でレンタカーに積み込んだ」と述べた。

 その後、遺体発見現場となった埼玉県富士見市の駐車場に被告が行ったことは認め、「大出さんから1万円を渡され、一人でタクシーで戻った」と述べた。別れた時刻は同日午後10時ごろとした。

 また、「現場の隣にはアパートがあり、殺害現場とするのは不自然」と起訴内容を疑問視。木嶋被告は事件の2日前、大出さんに別れ話をしていたとして「大出さんが自殺したと考えておかしくない」などと指摘した。

 一方、検察側は、大出さんの手に練炭の粉がついていないことや、施錠されているのに車内に鍵がなかったことなどを他殺の根拠として挙げた。遺体発見現場を調べた警察官も出廷し、「練炭に火をつけたとみられるマッチ棒があるのにマッチ箱がなかった。自殺の可能性は低いと考えた」と証言した。

 検察側は今後、通常は1回しか行わない冒頭陳述を3件の殺人事件ごとに分けるなど審理の状況に合わせて約30回行い、分かりやすい立証を目指す。

 木嶋被告は表情をあまり変えないまま午後4時半過ぎまで続いた公判に臨んだ。長かった髪は切りそろえられ、前髪を真ん中で分けていた。

 木嶋被告は、08年9月~09年7月に大出さんを含む男性3人から計約790万円を詐取するなどした詐欺罪にも問われている。【飼手勇介、田口雅士、平川昌範】

 ◇「本人に謝って」大出さんの母

 10日の初公判終了後、大出嘉之さん(当時41歳)の母昌子さん(77)は、さいたま地検を通して「息子のところに行って、直接本人に謝ってほしい。それが被告人に伝えたいことです」とのコメントを出した。

毎日新聞 2012年1月11日 0時44分(最終更新 1月11日 0時48分)

 

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