自分が死んだらGmailに溜まったメールはどうなるか

秘密と相続

2012年 1月12日 (木)

著者
村上 敬 むらかみ・けい

1971年、大阪府生まれ。東京外国語大学外国語学部(マレーシア語科)卒。ビジネス誌・エンタープライズIT誌を中心に、自己啓発から経営論まで、幅広い分野で活躍中。

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ジャーナリスト 村上敬=文 ライヴ・アート=図版作成
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では少し視点を変えてみよう。電子データを「デジタル資産」などと呼ぶことがあるが、メールのデータを資産だと解釈し、遺族が「相続」することはできないのだろうか。

「データに資産的価値がある芸術的な写真や文章が含まれていれば、相続財産だという解釈も可能かもしれません。でも、事務的なメールだと、そのような解釈は難しいでしょう。人格権のように本人にくっついて離れない権利を『一身専属権』といいますが、メールアカウントは一身専属性が強く、相続財産とみなすのは難しいでしょう」(落合弁護士)

Gmailの場合、故人の正式な代理人としてアカウントへアクセスしたい場合の手続きは、HPに掲載されている。まず、身分証明書、死亡診断書、故人のGmailアドレスから受信したメッセージのヘッダーと全文などの証明書類を提出。審査をパスすれば、米国の裁判所命令や追加書類の提出など、さらなる法的手続きへと進む。しかし、「開示へのハードルはかなり高いのではないか」(同)

じつはGmailのようにユーザー死亡時の手順を明示しているITサービスは少数派。ほとんどのサービスはユーザーの死を想定すらしていない。落合弁護士は、あるべき姿をこう語る。

「あらかじめ利用規約で手当てしておくことが理想的ですが、通信の秘密や相続といったデリケートな問題が絡むだけに、いまの段階ではルール化しづらいのでしょう。誰にどこまでデータを引き継ぐかユーザー自身に生前登録させるなど、柔軟な仕組みづくりが求められます」

プレジデント 2012年1月2日号

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