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首都圏連続不審死:木嶋被告と交際の男性「事実知りたい」

 首都圏連続不審死事件で殺人罪などに問われている無職、木嶋佳苗被告(37)の裁判員裁判が10日、さいたま地裁(大熊一之裁判長)で始まるのを前に、木嶋被告が09年に詐欺容疑で逮捕された際に同居していた千葉県の男性会社員(48)が毎日新聞の取材に応じた。男性は結婚相手紹介サイトで木嶋被告と知り合って交際を始め、貯金も預けていた。「何があったのか、裁判で事実をはっきりさせてほしい」と話している。

 男性は09年夏に登録したサイトで木嶋被告と知り合った。男性によると、初めて会った日、木嶋被告から「お菓子教室(の開業)に失敗した」「自宅マンションに住めなくなった」と言われ、男性はその場で「困っているならうちにおいでよ」と誘ったという。2人は3日後に同居を始めた。男性は「介護していた母が亡くなり一人でいるのがつらかった。話し相手がほしかった」と当時の気持ちを明かした。

 しかし、同居を始めた直後、男性は警察署に呼ばれた。「(木嶋被告は)睡眠薬を飲ませて強盗をしているかもしれない」。刑事の言葉が信じられなかった。結局、木嶋被告は同居から6日後に逮捕された。男性は木嶋被告に数百万円の貯金を預けたというが、だまされたとは思えず被害届は出さなかったという。

 男性は今も1人暮らしをしている。「自分が一番ばかだった」と振り返るとともに、「亡くなった人は浮かばれないだろう」と、被害者とされる他の男性たちを思いやった。初公判の日は一人自宅で迎えるつもりだ。

 木嶋被告は3件の殺人と3件の詐欺、3件の詐欺未遂、1件の窃盗の計10事件で起訴された。物証が乏しいとされる中、検察側は状況証拠を積み重ねて「木嶋被告以外の犯行はあり得ない」として有罪立証を目指し、極刑を求めることが予想される。一方、弁護側は直接的証拠はないなどとして、一部の詐欺罪を除き無罪を主張するとみられる。【平川昌範】

 ◇結婚相手紹介サイトに悪意の利用者も

 木嶋被告が詐欺や殺人の被害者とされる男性と出会うために利用していたとみられるのが、東京都港区に登記するIT会社が運営する結婚相手紹介サイトだ。民間信用調査会社や同社ホームページによると、同社は02年にインターネット上にサイトを開設。年齢や居住地を登録すると、希望の相手とメールのやりとりができるサービスを提供している。

 代表者の男性は取材に「事件が起きたことは非常に残念」と話し、「オープンな場所なので悪意の利用者が入り込むことは避けられない。『相手に好かれたい』という心理を利用する人もいる」と指摘する。

 事件後、同社は金銭を要求されるなどした場合は同社に通報できるようにしたり、トラブルを避けるため「人目の多い場所で会う」などの注意事項をホームページに書き加えたりしたという。【飼手勇介】

毎日新聞 2012年1月8日 12時03分

 

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