自然素材＋建築家でつくる200年住宅の家。横浜・町田・相模原の工務店　株式会社ガウディ

「図面が描けて、尺を出して、平面図を見なくても家のイメージを掴んでいること。定規が体にある感じかな。」与えられた木を「墨付け」し「刻ん」で一軒の家にする大工の基礎をみっちり体得している小川大工。しかし、大工の役割はこれだけじゃないという。「すべての職人さんにも気を使う。お施主さまにも気を使う。工事の安全にも気を使う。こうした気遣いも大工の仕事だね。」大工は「現場の要（かなめ）」なのだ。休日は３００坪の畑で野菜作り。「４～５人でやってるけど、皆職種が違う人ばっかりなので面白いよ。」ここでも小川大工の心配りが発揮されているに違いない。

「ケガは自分持ち」という言葉がある。つまり、ケガをするのは誰のせいでもなく自分の不注意からというわけ。大工の世界は厳しい自己責任の世界。笠巻大工は言う。「意外かも知れませんが、事故は朝が多いんです。」毎朝体調は違うし、前日遣り残したことがあった場合、時間を取り戻そうと焦ってリズムを狂わせてしまう。そんな時、事故が起きてしまうという。大工に肝心なのは時間を追うこと、決して時間に追われてはいけないと笠巻大工。匠歴３６年。造作にオールマイティの技を駆使して延建築棟数２６０余り。幸い大きな事故は一度も経験していない。

１５歳から大工の世界に飛び込み、早や４０年を超えた。そもそもの才能に加え、何でも任せてくれる棟梁（親方）の手ほどきがあって、５年後には一人前の大工に。その頃は、今のように工場でプレカットした木材を現場で組み立てるのではなく、下小屋と呼ばれる場所で一から手づくりした。「墨付け、刻みなど大工の基本から修行し、一枚の板からどんな造作でも創り出せます。」と二瓶大工。一棟の家の鴨居から戸袋まで何でもできるというが、なかでも階段づくりが得意とか。「ガウディの家は注文住宅ですし、出来合いのものではなく手づくりの部分が多い。私の出番ですね。」

高橋大工に「棟梁としての資格」を聞いてみた。「一通り何でもできること。たとえ時間がかかったとしてもやり遂げること。できるか？と聞かれて、できませんは大工として恥ずかしい。」棟梁としての自信がついたのは和室の造作ができるようになってからだ、という。 確かに和室は木の造作が命。ごまかしのきかない技量が試される。またお寺や神社の造作にも腕を揮う。「図面もない。写真もない。勘が頼りの現場ですが、何棟か経験するうちにこっちで絵を描いて仕事をすすめることも。」仕事に厳しい高橋大工だか「休日はベストセラー本のチェックや、まだ小さい子と公園で遊んで過ごしています。」と顔をほころばす。

大工として一番大事なのは「信頼性」と佐藤大工。「一回でも変なことをやってしまうと、あいつはもう使えない、と言われるのがこの世界。クレームの少ない仕事をすること、そしてスケジュールをきっちり守ることが信頼につながります。」さまざまな造作を得意とする佐藤大工だが、一番好きなのは「ドアの枠づけ」だという。意外な感じがしたが、玄関にはじまって、一部屋にドアがあり収納があれば、３ＬＤＫで枠は１０～１２はある勘定。確かにおろそかにできない造作だ。決して派手ではないが、こういうところにいい仕事をする佐藤大工だからこそ「信頼性」を勝ち得ているのだろう。

一人前の大工の条件を鈴木大工に聞いた。「どんな場合でも何とかする力。何か問題があっても考えて、解決を探り、結果を得ることですね。」さまざまな現場を体験してきた者だけが口にできる、責任感のある言葉だ。得意技は家具づくり。「何でも作ります。小さいものから大きいものまで何でも。テーブルでも、食器棚でも。難しい造作ほど完成したときの喜びは大きいですね。」趣味は海外旅行。それも、ひとりで知らない土地をバックパッキングで歩き回る旅だという。なるほど一人前の大工に欠かせない「どんな場合も何が起こっても何とかする力」は、こうした旅からも獲得した成果に違いない。