もうやめようと思う。
ブログも勉強も。
目標のセンター試験を受けなかった事でなんだか全身の力が入らない。
今まで何故あんなに勉強できたのか分からない。
そもそもファーザーは勉強していたのだろうか?
魔法使いって実在したの?
義姉は?
姪は?
父は?
母は?
緑川さんは?
叔母は?
どこまでが嘘でどこからが事実なの?
もしかしたら魔法使いなんて居なかったのかもしれない。
魔法使いと始めて会った日、
あれはただ『あさきゆめみし』を女店員に案内して貰った時に閃いた、ファーザーの妄想なんじゃないだろうか?
二人で楽しく映画に行った事も妄想?
あの日の昼、マックで英単語の抜き打ちテストをした日差しの暖かい、あの幸せな時間なんてなかった。本当にあったのは、一人で寂しくモソモソとハンバーガーを食べるファーザー、という事実だけ。
二人で星を見た事も妄想?
『銀河鉄道の夜』を楽しそうに語る魔法使いと、寄り添ってサウザンクロスを一緒に見た、あの綺麗な星空を見た出来事は?本当は一人で曇った空を見上げていたのじゃないだろうか?
カムパネルラなど居ない。いたのはジョバンニだけ。
クリスマス、魔法使いに"しおり"を通して告白された事も?
あのマフラーのぬくもりは嘘。赤本の重さは錯覚。
あったのは一人寂しく帰る凍える寒さと、買った参考書の重みだけ。
成人式の日、振袖姿の魔法使いに「それでも好き」と言われたのは?
毎晩電話してくれたのは?
参考書を取り寄せてくれたのは?
ドラクエ展のお土産をいつもポケットに入れているのを照れながら見せてくれたのは?
魔法使いの名前は?
緑川さんも嘘?
本当に居たのは生意気でDQNの年下糞野郎。
仕事が上手くできなくて怒鳴られて、情けなくて泣きながら途中で帰ったファーザーが事実を隠し、ブログに楽しかった嘘の思い出を書くことで真実に変えてしまった悲しい妄想。
机の上の参考書は?
知らない。親戚の誰かの忘れ物だろうか。
それにしても量が多い。邪魔だな、明日燃やそう。
俺はあの8月22日の、コンマ50の奇跡を生んだ安価スレなんて立てていない。
当然ブログなんて作っていない。
あの日俺はいつもの様に布団に潜り込み、ただただずっと寝ていただけだ。
ずっとあの日から今日まで、俺は布団の中で寝ていたのだ。
暗い部屋の中で一人で、ずっと。ずっと…
これからもそうしよう。それがいい。
わざわざ傷つく所へなんか行かなくたっていいんだ。
ああ、ただ、そう
布団に包まりながら、
東大を目指して、全国の人たちに応援されて、
毎日勉強をする、
という妄想は、
とても、
とても、たのしかったな あ