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大企業を飛び出して起業した元経営コンサルタントの独り言

米国クチコミ規制から「食べログ」問題を考えてみる(誰が問題か)

2012年01月10日 | 考察

「食べログ」に嘘のクチコミ投稿を行う事業者の問題、その中でも今回は誰が問題かについての考察しますが、考察を始めるにあたって、念のため初めに書いておきたいことがあります。

これからの分析はあくまでも米国の規制が適応された場合という話であって、現在の日本でどうかとは別だということです。私は米国の規制と同様の規制を日本でも導入すれば良いと思っています。それは(完璧であるとは言えないかもしれませんが)、米国の基準に沿った形で事業を展開していることからお分かり頂けると思います。

しかし、そうではない会社・方々を否定、非難するものではありません。当社が信じている方向、方法が絶対的善であると各所に押し付けるつもりもありませんし、その権利があるとも思いません。なぜならば、そうした会社・方々も日本の法律、つまりは日本の民意に反している訳ではないからです。

さて、上記の前提を理解して頂いたうえで、更に細かい話ですが正確に理解いただくために、もう一つ解説をしておきたいことがあります。それはネット上に散見される意見とは違って米国においても「ヤラセ」「ステルス」を明文として禁止する法律はないということです。

各所で言われている米国のクチコミ規制は、正確には法律ではなく「推奨広告と証言広告の利用に関する運用ガイドライン」です。FTC(Wiki:Federal Trade Commission・連邦取引委員会・アメリカ合衆国の独占禁止法および消費者保護法の運用を行う機関)が、ソーシャルメディア上の「ヤラセ」「ステルス」行為に関して、既存の消費者保護法をどう解釈するのかを公開したものです。(2009年10月5日更新)こういった点は正確であることが大事だと思いますので念のため。

さて、長い前置きでしたが、本論に入りたいと思います。

米国FTC「推奨広告と証言広告の利用に関する運用ガイドライン」は、以下の条件を満たすものを推奨・証言広告として規制しています。

  • 合理的な関係性の推測がオーディエンス側に期待できない
  • オーディエンスが表現者の主張がその表現者の意見や意思や発見や体験に基づくものであると思う可能性が高い
  • 口頭、文面、推奨マーク付与等、表現方法は問わない

そして、

  • 規制される主体は推奨者・証言者と広告主
  • 規制する行為は全ての商品、サービス、企業、産業を対象とする推奨、証言広告


となっています。

この視点をもって現状を整理・考察してみましょう。

【現状の整理】

今回テレビや新聞報道なので明らかになっているのは、

  1. やらせ事業者は複数いてカカクコム(食べログ運営会社)は関与していない
  2. やらせ業者、又はやらせ業者委託先がやらせ委託店舗に好意的なクチコミを執筆。その内容を同店舗が事前に確認
  3. 運営会社やユーザーにヤラセであることが分からない様に、やらせ業者は上記のクチコミを食べログに投稿して、食べログ内の店舗ランキングを上げる
  4. 食べログ内のランキングに応じて、ヤラセ業者は委託先から報酬を受け取る
  5. カカクコムはこうしたヤラセクチコミが投稿されていることを発見。現時点で39業者を特定。今後はサイトの監視を強化するとともに、提訴などの対応を取ることを表明

ということです。(事実誤認があったら申し訳りません。ご指摘頂けますと幸いです。)

【米国規制で考えると:誰が問題か?】

上記の認識が正しいとすると、ヤラセレビューに関与しているのは、委託した店舗、ヤラセを行った事業者で、カカクコムは当事者としても代理店としても関与していませんので、食べログユーザーともどもその被害者という構造です。

よって、上記米国ガイドラインの視点からは、カカクコムに非がある話には全くなりません。一部で発表や対策の遅れについてカカクコムを非難する声も見られましたが、(気持ち話わかるものの)カカクコムも被害者なので、(サービス品質の問題は別にして)、クチコミ規制の観点からは責めるのはどうかと思います。

一方で今回の行為は同規制でも「推奨・証言広告」に分類されますし、飲食サービスの「推奨・証言広告」も規制の対象ですから、ヤラセを提案、実施した事業者だけでなく、そうした提案を採用、委託した店舗も罰則の適応対象者として認められることになると思われます。

さて、次回は(何が問題とされるか・どうすれば良いのか)について書きたいと思います。

ジャンル:
各業界情報
キーワード
カカクコム ソーシャルメディア アメリカ合衆国
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