つなぐ 希望の木
災難を乗り越えてきた木々を、都内に訪ねた。
【社会】「最古」のジャズ喫茶復活 横浜・野毛 3月中旬に開店2012年1月14日 13時54分
日本最古のジャズ喫茶といわれ、五年前に横浜市中区野毛町での七十四年間の営業を終えた「ちぐさ」が三月、同じ野毛町で廃業した別の喫茶店の空き店舗で営業を再開する。かつての常連客らが、店から受け継いで保管している名盤のジャズレコード約三千枚や家具を持ち寄り、店内を忠実に再現。伝説の喫茶店が復活する。 (新開浩) 「昭和初期の横浜のジャズ文化を、かつての私のような若い世代に引き継ぎたい」。常連客約三十人でつくる「ちぐさ会」の会長で、地元の運送会社を経営する遊佐正孝さん(62)が、ちぐさの再開に向け活動してきた思いを語る。 高校時代から店に通い続け、ちぐさのマスターだった故吉田衛(まもる)さん(享年八十一歳)を今でも「オヤジ」と呼ぶ。「ジャズの発展だけを願っている人だった。コーヒー一杯で何時間粘っても、何も文句を言わなかった。常連になると、留守中の店番を任され、好きなレコードをかけさせてくれた」 ちぐさは、吉田さんが「日本にジャズを広めたい」という思いで、一九三三(昭和八)年に開いた。太平洋戦争中の横浜大空襲で全焼したが、復員した吉田さんが四七年に再開した。 当時、入手困難だったジャズの輸入盤を聞きに訪れた客の中には、若き日のサックス奏者渡辺貞夫さん(78)や、トランペット奏者日野皓正(てるまさ)さん(69)らがいた。 九四年に吉田さんが亡くなった後も親族が店を続けたが、マンション建設のため立ち退くことになり、二〇〇七年一月、惜しまれながら閉店した。 遊佐さんらはその後、店が元あった場所の近くに店内の様子を期間限定で再現するなど、完全復活を目指し準備を進めてきた。 「昔の常連客は五十代以上の年配ばかりになった。今、復活させないと、店の歴史が完全に途絶えてしまう」と遊佐さん。 後押ししたのは、昨年十一月に横浜市にできた新制度。地元の空き店舗を使った東日本大震災の被災地支援事業に、市が資金と家賃を補助する制度で、再開を目指すちぐさはメニューに被災地の食材を使った料理を盛り込むことで、対象に選ばれた。 新しい店(野毛町二)は元の場所(野毛町一)からJR桜木町駅寄りへ約二百メートル。開業予定は三月十七日で、二月に店内の改装が始まる。「野毛の財産、ちぐさを永久に残したい」。遊佐さんたちの熱意が形になる日はもうすぐだ。 (東京新聞) PR情報
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